第78回:シングル表題曲以外の人気曲TOP20
シングル表題曲以外の人気曲が増えている!?
 前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は約1年半ぶりに、シングルのカップリング曲やアルバムオリジナル曲限定で人気曲を分析してみた。前回の結果はこちら

 新年、明けましておめでとうございます。今年も、ここでしか見ないような切り口にて意外なヒット曲を探っていければと思います。どうぞSNS上のネタとして大いに活用して下さい♪
 さて本題。前回は1位に『アナ雪』主題歌のMay J.、2位にMACOのテイラー・スウィフトの日本語カバー曲、そして3位にニコ動で活躍するクリエイターのじん、さらにTOP20中に最もランクインしたのはSEKAI NO OWARIとなったが、今回はどんな人気曲が現れるだろうか。
第78回 シングル表題曲以外の人気曲TOP20(2016年01月:2015年12月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位 2 100 ぬくもり 平浩二 2015/5/13
2位 5 30.2 僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい back number 2015/12/9
3位 6 22.6 No.1 西野カナ 2015/11/18
4位 10 18.5 海の声 BEGIN 2015/10/28
5位 11 16.9 何度でも Crystal Kay 2015/12/16
6位 16 11.3 サイレン back number 2015/12/9
7位 19 10.2 A型のうた 西野カナ 2015/9/9
8位 21 9.5 助演女優症2 back number 2015/11/18
9位 29 7.9 180° 山猿 2015/10/12
10位 30 7.8 ミラーボールとシンデレラ back number 2015/12/9
11位 38 6.1 大切な君へ 井上苑子 2015/7/1
12位 39 5.6 時よ 星野源 2015/12/2
13位 41 5.5 Beautiful Superfly 2015/5/27
14位 43 5.3 Liar back number 2015/12/9
15位 50 4.5 366日 HY 2008/4/16
16位 54 4.3 Wherever you are ONE OK ROCK 2010/6/9
17位 55 4.3 泡と羊 back number 2015/5/27
18位 59 4.2 東京の夕焼け back number 2015/12/9
19位 60 4.1 聖なる夜の贈り物 秦基博 2015/12/16
20位 62 4 幸せ back number 2011/4/6
次点 68 3.8 小さな恋のうた MONGOL800 2001/9/16
次次点 71 3.7 バナナジュース 横山裕/錦戸亮(関ジャニ∞) 2015/11/11
※CDパッケージとして発売されたシングルの表題曲を除いて人気曲を抽出した。
14年調査時はセカオワが大半だったが、今回はback numberが大半。
バンド系は"政権交代"があるのに対し、女性は西野カナが再び君臨
 1位は、なんと12月中、ネット上やワイドショーにて盗作疑惑で話題となった平浩二の「ぬくもり」。ちなみに、元ネタと言われているMr.Children「抱きしめたい」も総合154位に再浮上している。
 そして、2位はback numberの最新アルバム『シャンデリア』から、「僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい」。ダウンロードでも、シングル表題曲を除くと最も人気の1作だが、彼らの歌詞の魅力をそのまま表したタイトルも人気の一因だろう。

 それにしても、今回調査ではTOP20中8作がback number。勿論、先月にアルバムが発売されたことも大きいが、20位の「幸せ」(片想いの相手の幸せを願うという、タイトルからは想像できないほど切ない名曲!)は2011年のシングル「はなびら」のカップリングだし、他にも、「Hey!Brother!」や「アップルパイ」といったシングルのカップリング曲もアルバム発売前から歌詞が支持されている。
 歌詞サイトでは、前回がSEKAI NO OWARI、その少し前がONE OK ROCK、さらに遡ると、RADWIMPS、UVERworldと、こうしたシングル表題曲以外でも人気がヒートアップするバンドが1〜2年に1組必ず現れている。実際、ゲスの極み乙女。や[Alexandros]、UNISON SQUARE GARDEN等の楽曲が現在ロングヒットしていることからも、彼らが次なるスターになる可能性も有り得るだろう。つまり、ノリや演奏重視と思われがちなバンドだが、歌詞の支持もバンドのスター化への必要条件ということだ。
 これに対し、女性ソロを見ると、3位と7位に西野カナ、5位にCrystal Kay、11位に井上苑子、13位にSuperflyがランクインしているが、5曲中3曲がドラマ主題歌で、やはりシングル表題曲以外でも大型タイアップ中心となっている。
 そう考えると、7位の西野カナ「A型のうた」と11位の井上苑子「大切な君へ」は大健闘だ。前者は、ちょっとコミカルで、だけど最後に純粋な気持ちを伝えるという14年の「Darling」以降の西野カナの新機軸。女性ソロの大ブレイクが少しご無沙汰になっていたJ-POPシーンに、09〜10年に大ブレイクした西野カナがそのスターの座に再び君臨することになったのが興味深い。対する井上苑子の方は、動画サイト発の女子高生として、ミニアルバムのリード曲となった「大切な君へ」が話題となり、半年にわたってロングヒット中。日常の出来事の歌詞への取り込み方が絶妙なので、今後、そのセンスを活かした人気曲が続くことにも期待したい。

 以上のように、蓋を開けてみれば「結局、back numberと西野カナかよw」と言われそうだが、総合TOP10に4作(前回は2作)、TOP20に7作(前回4作)、TOP30に10作(前回7作)と、明らかにシングル表題曲以外の人気曲は増えている。つまり、イベント参加券や付属DVDなど楽曲そのもの以外の魅力が重視されるCDシングルチャートでは勝負しないアーティストが増えてきたということだ。その意味でも、今後、CDシングルに依存せずにヒット作を見ていくことはますます重要だろう。(そう考えると、『ミュージックステーション』や『COUNT DOWN TV』もCDシングルをメインにしたランキング発表は卒業した方が良いような。。。) 個人的には、次次点の横山裕/錦戸亮による「バナナジュース」がオススメ。錦戸作詞による、まさかの(?)ダジャレと下ネタに満ちた隠れ迷曲。こうした楽曲に出逢えるのも、シングルに固執しないチャートの魅力なのです♪
第4位:BEGIN「海の声」
 2015年10月28日に発売された通算19作目となるオリジナル・アルバム『Sugar Cane Cable Network』収録の1曲。ご存知の方も多いだろうがあらためて説明すると、2015年7月からauの"三太郎シリーズ"のCMにて、桐谷健太扮する浦島太郎が三線を弾きながら寂しそうに熱唱する姿がオンエアされ、8月より無料配信したところ、数十万件に及ぶダウンロードとなり、12月2日より有料配信が決定。ここ「歌ネット」でも大きな話題となっていたが、先に登録されていたBEGINバージョンが大きな人気となっている。
 この「海の声」、作詞はCMクリエイターの篠原誠、歌唱も多くの楽曲のリードボーカルを務める比嘉栄昇ではなく、本作の作曲を手がけた島袋優となっているのも、大きなポイント。ゆえに、CMで使われている部分がBEGINバージョンでもとてもキャッチーで、それでいて、島袋の飾り気の無いボーカルが「会えない」「会いたい」という想いを自然に伝えてくれる。
 ちなみに、本アルバムのタイトルを意訳すると"さとうきび放送"となるだろうか。ハワイアンあり、シンプルなバラードあり、ブルースあり、沖縄テイストの楽曲有りと、どれも有機的なサウンドで満ちている。近年の電子処理された音楽に疲れた方に、気持ちをリラックスさせる意味でもアルバム全体を堪能することをオススメしたい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
ルーキー部門第7位:CHiCO with HoneyWorks
  
 今月は7位のCHiCO with HoneyWorksに注目。これは、女性ボーカルのCHiCO(チコ)とクリエイター集団のHoneyWorksのコラボレーション・ユニット。
 まず、HoneyWorksは、楽曲制作のGomとShito、イラストレーターのヤマコを中心としたユニットで、オリジナルのボーカロイド曲と動画で、10年よりニコニコ動画にて作品を発表していた。インディーズ活動や他歌手への楽曲提供を経て、14年1月にアルバム『ずっと前から好きでした。』でメジャーデビュー。青春や初恋をモチーフとした楽曲や、初回盤封入のコミックが話題となり、これまでの売り上げは3作合計約15万枚のヒットとなっていた。
 そこへ、ボカロとアニソンに特化した『ウタカツ!オーディション』にて13年にグランプリを獲得したCHiCOが参加し、14年8月にCHiCO with HoneyWorksとしてシングル『世界は恋に落ちている』でデビュー。胸キュン系アニメと爽やかな楽曲との相性の良さから、ダウンロードではいきなりTOP10入りを果たした。特に、ヤマコによるドラマ性の高いビデオも人気で、YouTubeでの再生回数は、2000万回を超えるほど。続く2ndシングル『アイのシナリオ』はアニメ『まじっく快斗1412』のタイアップ、友情をテーマとした3rdシングル『プライド革命』はアニメ『銀魂°』のオープニング曲に起用され、それぞれスマッシュヒット。
 そして、満を持して2015年11月18日に発売された1stアルバム『世界はiに満ちている』は、オリコン初登場5位、初動2.4万枚と女性ボーカルの初作品としてはトップ級のセールスとなり、しかも累計は5万枚突破確実。特に、最新月の人気曲TOP10がシングルの3曲ではなく、自分の心の叫びや葛藤と向き合った「ハートの主張」、失恋の記憶を思い起こす「11月の雨」などアルバムオリジナル曲がより支持を得ていることからも、単なるタイアップ依存ではなく、このユニット自体の人気があることが分かる。実際、可憐さと力強さを使い分ける歌声やキャッチーな曲調は、動画サイトのヘビーユーザーのみならず、幅広いJ-POPファンに支持されうる資質を有している。2016年1月10日と2月13日には、渋谷WWWにてワンマンLIVEがあるので、これを機にさらに活動が広がることを期待したい。

順位
アクセス
比率
タイトル
初収録作品
発売日
1 29.80% ハートの主張 1st AL 2015.11.18
2 11.80% 11月の雨 1st AL 2015.11.18
3 8.50% ホーリーフラッグ 1st AL 2015.11.18
4 7.90% プライド革命 3rd Sg 2015.8.5
5 6.80% アイのシナリオ 2nd Sg 2015.2.4
6 5.70% 恋のコード 1st AL 2015.11.18
7 5.30% 世界は恋に落ちている 1st Sg 2014.8.6
8 4.60% identity 1st AL 2015.11.18
9 3.70% Love Letter 1st AL 2015.11.18
10 3.50% 君ガ空コソカナシケレ 1st AL 2015.11.18
臼井孝の「キラ☆歌発掘隊」

プロフィール:臼井孝
うすい・たかし。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析を持ち味として、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 14年5月からダウンロードサイトLISMO Storeの「イチオシ」曲を選定しており、特集の一部、"特選"と名のついたものを監修中。最近、じわじわと人気なのが、オネェ系DJ&パーティMCで活躍のkeiZiroさんが選んだ「特選!オネェ系DJが選ぶセツナ歌謡曲」で、80年代〜90年代の隠れた名曲があって面白いです。よかったらチェックしてみて下さい♪