前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、シングル表題曲以外の人気曲、すなわちシングルのカップリング曲やアルバムのみの収録曲、さらには配信限定曲の中から人気の楽曲を調べてみた。
  CDシングルランキングを見ると、あまりに毎週めまぐるしく変わることや、もっと言ってしまえば必ずしも世間に楽曲が浸透せずとも(大量のイベント実施や複数種での発売で)上位入りできることから、一般の音楽ファンは勿論、業界内ですら知られていない楽曲が多数上位入りしている。そんな状況を見ては、「この業界は終わっとる」と上から目線で決めつけるオジさんは業界内外に散見されるが、はて、CDシングルランキングだけを見て、それを言うのは余りに早計ではないか??という疑問が生じたので、シングル表題曲以外の人気曲もしっかり見てみたいと思ったのが、今回のテーマ決定の経緯である。
第59回:シングル表題曲以外の人気曲TOP20 (2014年6月:2014年5月のデータより分析)
テーマ順位
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
初収録作
発売日
1位 1 100 Let It Go 〜ありのままで〜 (エンドソング) May J. A『アナと雪の女王』サントラ 2014.3.12
2位 6 26.3 私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together (Japanese Ver.) MACO (CD未発売)  
3位 17 12.6 夜咄ディセイブ じん A『メカクシティレコーズ』 2013.5.29
4位 19 12.3 #ヤッチャイタイ MINMI 「いていたいよ」c/w 2014.7.23
5位 22 10.5 ray BUMP OF CHICKEN A『RAY』 2014.3.12
6位 25 9.8 ピエロ SEKAI NO OWARI 「炎と森のカーニバル」c/w 2014.4.9
7位 30 9.4 ロスタイムメモリー じん A『メカクシティレコーズ』 2013.5.29
8位 33 8.8 アウターサイエンス じん A『メカクシティレコーズ』 2013.5.29
9位 36 8.4 Love the warz SEKAI NO OWARI A『ENTERTAINMENT』 2012.7.18
10位 40 8.1 虹色の戦争 SEKAI NO OWARI A『EARTH』 2010.4.7
11位 41 8.1 幻の命 SEKAI NO OWARI A『EARTH』 2010.4.7
12位 43 7.6 君が笑えるように 「GUTS!」c/w 2014.4.30
13位 46 7.4 小さな恋のうた MONGOL800 A『MESSAGE』 2001.9.16
14位 47 7.2 美少女 吉澤嘉代子 A『変身少女』 2014.5.14
15位 51 7.1 Love Wonderland 「GUTS!」c/w 2014.4.30
16位 54 6.8 101 シクラメン A『シクラメンの夏』 2014.5.21
17位 55 6.7 サマータイムレコード じん A『メカクシティレコーズ』 2013.5.29
18位 59 6.6 キラーボール ゲスの極み乙女。 A『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』 2013.12.4
19位 63 6.4 Death Disco SEKAI NO OWARI (CD未発売)  
20位 64 6.4 好きだよ。〜100回の後悔〜 ソナーポケット A『ソナポケイズム・』 2011.1.26
※初収録作のAはアルバム、c/wはシングルカップリングを示す。

 表を見ると、1位に『アナ雪』主題歌のMay J.、2位にはiTunesにてその『アナ雪』超えが大きく報道されたMACO、そして4位にはイケイケな女性を応援するアゲアゲソングを歌うMINMIと、女性ソロボーカルがこぞってランクイン。1位、2位は既に配信で大ヒットし話題になっているし、4位もその歌詞の内容やMINMIの女性人気から今後さらに盛り上がっていきそうだ。いずれも、ウタヂカラのある作品ながら、シングル表題曲(A面)としては発売されていない。これは、CDシングルのリリースだと発売から話題になるまで時間がかかってしまい、今の時代のスピード感と合致しないということに加え、シングルCDチャートで勝負しても真っ当な楽曲評価が得られないということも大きいのではないだろうか。例えば、昨年11月にデビューした女性シンガーソングライターのkahoは、ラジオやダウンロードなど軒並みTOP10入り、LIVEでも堂々たるパフォーマンスを披露し、今後も大いに期待される存在だと筆者は感じている。しかし、1種類で発売したシングル「Every Hero」がオリコン最高位34位だったことを引き合いにして、“ドラマ主題歌&親の七光りがありながら、失敗に終わった”と評する“マスゴミ”や“クチゴミ”も存在する。もし、彼女がCDシングルではなく配信限定でデビューしていたなら、ダウンロードやラジオでの上位ぶりだけが報道され、彼女の大物感が伝わったのかもしれない。それほどまでに、今のシングルチャート単体でヒットを分析するのは、あまりに短絡的で危険なのだ。本チャート14位の吉澤嘉代子もシングルなしでのアルバムCDデビューにて、殆どメディアに報道されていない中で初登場30位と健闘している。今後も、ヒット曲が見えないチャートが報道のメインとされている限り、こうした形での女性ソロ歌手のリリースが多くなりそうだ。
  そして、ボーカロイドを用いた音楽制作や小説の執筆などマルチな才能が注目されるクリエイターのじんと、10代に最も人気のあるバンドであろうSEKAI NO OWARIがTOP20内にそれぞれ4〜5曲をランクインさせている。この2組は、過去に発表したアルバムが、どれもロングヒットしているのが共通している。つまり、シングル曲以外の複数の楽曲が注目され続ければ、アルバムのロングヒット、ひいてはアーティストの人気上昇に大きく繋がるのだ。CDシングルチャート偏重の方には、こうしたヒット現象がきちんと見えるランキングも今一度認識していただきたい。
  以上のように、シングル以外の人気曲を見れば、女性ソロはきちんと伸びていることもわかるし、また複数の楽曲ランクインから更に大化けしそうなアーティストも見つかることが分かった。つまり、有望な若手アーティストは少なからずいるのだ。ちなみに、シングルでの歌詞検索1位はSPYAIRの「イマジネーション」、2位はSEKAI NO OWARI「RPG」、そして3位は嵐の「GUTS!」と、いずれもCDやダウンロードでロングヒットしているものばかりで、歌詞検索ならばシングル曲を見ても、真のヒット曲が見つけやすいということも申し添えておく。




Let It Go 〜ありのままで〜
May J.


私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together (Japanese Ver.) / MACO

夜咄ディセイブ
じん

 東京・蒲田出身の3人組ボーカルユニットの2ndフルアルバム『シクラメンの夏』のリード曲。ジャケットではオバカな感じを出したり、また情報番組でも軽妙にコメントしたり、コミカルな部分が目立ってきた彼らだが、本アルバムはもっと大人の、とりわけ女性ファンにも人気が出そうなヒット狙いの優良なポップスアルバムだ。今回ランクインしている「101」は、ソナーポケットが歌いそうな(笑)数字系の永遠を誓ったラブソングだが、DEppaのタフな歌声も相まって、ソナポケよりも不器用な感じが出ている。他にも、無骨なまでに夢を追う姿が印象的な「どんなに どんなに」や「ファイター」、彼女との爽快なドライブを想起させる「ナツノカゼ」、そしてそんな彼女に再び会いたいと願う「マーメイド」、更には別れの切なさを歌った「B.G.M」や「会いたくて でも会えなくて」など、これまで以上に感情の振り幅が大きい。それゆえ、ゆずの岩沢厚治が共作した「マナザシ」のように普遍的なエールソングも、この流れで彼らのオリジナルとして自然に聴ける。GReeeeNやケツメイシ、コブクロ、ゆず、FUNKY MONKEY BABYSなど大ヒットを経験した大物アーティスト達と並べてもさほど遜色のない作品。是非、1曲だけじゃなくアルバム全体で堪能することをオススメしたい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

  今月は、米津玄師、Rihwa、KANA-BOONなど強力作をヒットさせる3組に入り混じって女性シンガーのMACOがランクイン。彼女は、現在22歳、北海道・函館市出身のシンガーソングライターで、17歳から作詞・作曲を始めたらしい。転機となったのは、YouTubeにケイティ・ペリーやアリアナ・グランデなど洋楽アーティストの日本語カバーを公開し、たった4ヶ月で再生回数が500万回を突破したこと。その後、2014年に4月に配信限定でリリースしたアルバム『22』が、その洋楽カバー等での“宣伝費を1円もかけずに頑張る”という本人の姿勢に共感したSNS上でのファンが一致団結し、4月2日のiTunesアルバムチャートで1位を獲得。たった1日だけでも『アナと雪の女王』サウンドトラックを抜いたことが大きな話題となり、その後ユニバーサルミュージックからのメジャーデビューも正式発表され、まずは配信限定でテイラー・スウィフトの「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」の日本語カバーを5月7日にリリースし、こちらもダウンロードでヒット中だ。
  シンガーソングライターにも関わらず、洋楽ヒット曲を日本語でカバーするというプロデュース力の高さや、カバーにも洋楽にもヒット創出に長けているユニバーサルミュージックからデビューするということを考えると、戦略的なニオイを感じなくもないが、彼女の歌声が邦楽ファンにも洋楽ファンにも好かれそうなほど聴き心地が良いことは揺るぎない事実だ。現在は、「私たちは絶対に〜」に人気が集中しているが、エールソングのバラード「22」や、ハウス系のラブソング「Love Lie」を聴いてみると女性の共感を大いに得そうなものが多いので、今後、ポスト・西野カナとして更にブレイクするのか期待したい。

順位
アクセス
比率
タイトル
1 78.1% 私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together (Japanese Ver.)
2 4.7% 22
3 3.3% この世界中で
4 3.1% HERO
5 2.4% Love Lie
※全曲配信限定。2位以下は、インディーズ作品『22』に収録。


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 皆さんは、発売から1〜2年経過したCDはどのように入手されていますか?マニアックなものであれば、Amazonかヤフオクが断然便利ですが、有名アーティストのベストアルバムやカバーアルバムであれば、店頭でほぼ常時行われているキャンペーンやワゴンセールがお得です。1枚10%、2枚で15%、3枚以上だと20%OFFなんてのはザラで、これにショップやビル全体のポイント増量キャンペーンを組み合わせれば、最大30%OFFになることも!特に、ベテラン・アーティストの作品が気になった時は大抵置いてあるので要チェックです♪