前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今回は、歌詞中に「愛」が出てくる楽曲のTOP10を分析してみた。
  世の中には“ラブソング”が溢れていると言われるが、果たしてどんな言葉でその気持ちを伝えているのだろうか。・・・ふと、そんなことが気になって歌詞を調べてみた。(ちなみに、歌ネットの歌詞全文検索では「愛」が出てくる楽曲が44,859曲あった。歌詞分析とは、いつもくだらない好奇心と、チマチマした作業から始まるのです(笑)。)
 そうしてみると、歌詞検索の上位に圧倒的に多かったのが、なんと「好き」や「ラブ」ではなく、この「愛」だったのだ。えっ、世間的にそんなに多かったっけ??と、最新のオリコンチャート(2011/12/5付)のTOP10で同様に調べてみたら、「愛」という文字があったのはポルノグラフィティ「ゆきのいろ」のみ。どうやら、「愛」が歌われていると、実際のCDセールス以上により多くの人が歌詞に注目するようだ。確かに、倖田來未のバラード「愛のうた」は、40代・50代のオバちゃんでも十八番にしているのを何度か耳にしたことがある。現在のランキングでは、どんな“愛”が見えてくるのだろうか。
第29回:“愛”のうたTOP10(2011年12月:11月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
楽曲名 アーティスト CD発売日
1位
2
100
365日のラブストーリー。 ソナーポケット
10/19/2011
2位
3
79.3
やさしくなりたい 斉藤和義
11/2/2011
3位
9
44.6
恋文〜ラブレター〜 GReeeeN
11/16/2011
4位
10
42.3
ウィンターマジック KARA
10/19/2011
5位
17
37.6
永遠はただの一秒から JAY'ED×JUJU
10/19/2011
6位
22
33.6
風は吹いている AKB48
10/26/2011
7位
23
33.3
キセキ GReeeeN
5/28/2008
8位
30
24.5
Green a.live YUI
10/5/2011
9位
32
23.5
どこまでも… feat. BENI 童子-T
11/30/2011
10位
33
22.4
100万回の「I love you」 Rake
3/9/2011
次点
37
21.9
Esperanza 西野カナ
5/18/2011
※歌詞中に「愛」という文字が含まれる楽曲をピックアップした。
  1位は、今や飛ぶ鳥落とす勢いのソナーポケット。確かに、この歌は、いつもにも増して彼らの真摯な気持ちが伝わってくる。これも“恋”ではなく、“愛”ゆえのチカラか。2位は、斉藤和義のドラマ『家政婦のミタ』主題歌。ドラマの高視聴率ゆえの人気もあるだろうが、本作のサビ「愛なき時代に生まれたわけじゃない」というフレーズが印象的だからこそ、楽曲自体もロングヒットしているのではと思われる。これが「恋」や「夢」では、ドラマ中の修羅場を克服する歌に聞こえない。やはり「愛」だからこそ、力強く前に進めるのだ。6位のAKB48も同様で、本作がシリアスに聞こえるのは、派手さを控えたPVやメランコリックな曲調かと思っていたが、意外と“愛”効果が全体に及ぼしているのかも。
 3位のGReeeeNは「ラブ」も「愛」も「好き」も、タイトルに「恋」も含まれていて、見た目上は雑然(笑)だが、後半で「愛」が沢山出てくることで楽曲が締まって聞こえる。やっぱり、最後に「愛は勝つ」のだ。(それにしても、7位の「キセキ」は、これで4年連続上位入り!こんな“キセキ”が起きるのも愛だからか。)
4位のKARAも、前作「GO!GO!サマー」はイケイケで愛など皆無なのに、本作では真冬に愛を告げるという見事にメリハリの利いた戦略(笑)。やはり、冬のまったり感と「愛」の相性は抜群のようだ。

 TOP10内の男女比を見てみると、男性5曲に、女性3曲、男女コラボ2曲と、男性有利。筆者も含め、「愛している」なんて普段言えないからこそ、ここぞとばかり男性ヴォーカルによる「愛」のうたが支持を集めるのだろうか。あるいは、普段「愛している」と言われたい女性たちが、せめて歌の世界だけでも、と男性ヴォーカルによる「愛」のうたを求めているのだろうか。謎は深まるばかりだが、いずれにせよ、このように歌詞の内容で人気が変わると推察できるのも「愛」ゆえの一途なチカラからであろう。

 そして、このランキングをざっと見てみると、「この歌イイ!」と人が言っているものが非常に多いようだ。それだけ普遍的に支持されるということは、クリスマスに向けての駆け込みにも、確度高く効力を発揮するかもしれない。信じるか信じないかはあなた次第・・・ご健闘を祈ります♪



365日のラブストーリー。
ソナーポケット



やさしくなりたい
斉藤和義


恋文〜ラブレター〜
GReeeeN
 

 2年前にダウンロード・シングルがミリオンヒットとなった(ちなみに、2011年単独で、フル音源のダウンロードでミリオンヒットは1曲もなし。。。)「明日がくるなら」から2年、同じコンビでのコラボ・シングル。冬にふさわしくまったりとしたバラードで、二人のハモリも温かく、まさに“愛”にふさわしい仕上がり。ちなみに、JAY’EDは先月2ndアルバム『Your Voice』を発表。本シングルのほか、ニッセンCM曲「Shine」、ドラマ『美咲ナンバーワン』主題歌の「何かひとつ」、JAY’ED×若旦那名義の「Toy box」など話題てんこ盛りだが、それ以上にハードなダンス・チューンから、ベタなバラードまでハマる歌声に成長したことにあらためて感心した。話題性も実力も申し分ないのに、売り上げが前アルバムから急落しているのは、何らかの形で買わずに済ませている人が多いからだろうか。コラボ相手のJUJUが、姐御肌で絶大な同性支持を得て、30万枚ヒットをキープしているのとは対照的。やはり、今のご時勢、アイドル以外でもキャラクターまで浸透させなければ、ヒットの継続が難しいという事なのかも。ともあれ、作品の完成度の高さに罪はなし。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は5位の青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンドamazarashiに注目。彼らは、作詞・作曲をヴォーカルの秋田ひろむが手がけていることや、他に女性のキーボード担当がいること以外、そういった情報を一切公開していない。それなのに、2010年2月に全国流通のインディーズ盤『0.6』を発表するやいなや、YouTubeやニコニコ動画、さらにはその評判がmixiやTwitterで話題となってきたのは、まぎれもなく歌詞のチカラからであろう。BUMP OF CHICKENの陽気な部分をそぎ落としたような、あるいは尾崎豊の内省的な部分をクローズアップしたような、とにかくそれら大物アーティストに匹敵するほどのストーリー性の高い歌詞が際立っている。しかも、それが叫びも呟きも混じった感情的な歌声や、ドラマティックなサウンドに乗っているからこそ、より心に響くのだろう。
時に、現実を直視することを“暗い”と短絡的に決めつける人がいるが、amazarashiもそんな誤解を受けやすい部類だろう。しかし、最新アルバムが、一気にオリコン12位まで上昇したのは東日本大震災以降、こうしたシリアスな視線が今こそ求められているという事かも。今後、まさに歌詞サイトからさらにステップアップしそうな逸材。なお、CDには歌詞ブックレットとは別に各楽曲の詩集ブックレットも封入されていて、こちらも易々と手放せないほど濃厚なものとなっている。



順位 占有率 楽曲 初収録作品 発売日
1
11.5%
空っぽの空に潰される 1stアルバム『千年幸福論』
2011.11.16
2
6.6%
古いSF映画 1stアルバム『千年幸福論』
2011.11.16
3
4.6%
デスゲーム 1stアルバム『千年幸福論』
2011.11.16
4
4.2%
夏を待っていました 2ndミニAL『爆弾の作り方』
2010.6.9
5
3.9%
アノミー 4thミニAL『アノミー』
2011.3.16



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
  演歌歌手によるポップスカバーアルバム“エンカのチカラ”のシリーズ5万枚突破に便乗(?)して、12月21日に、『エンカのチカラ 最強Z レッド』と『エンカのチカラ 最強Z ホワイト』が2枚同時リリースとなります。(詳しい曲目は、私の紹介サイトからご覧ください。)『エンカのチカラ』第1弾のリリース以降、ビリー・バンバンのカバー等を集めたポップスアルバムが20万枚のヒットとなった某女性歌手(だから、『エンカのチカラ』の方が先なのです♪)と、演歌界の大御所の某男性歌手以外はすべて収録にOKをいただきました。「誰が歌っているでしょう?」クイズなど年末年始のパーティーや飲み会に使ってみてはいかでしょうか。かなり正解者を絞り込むことができるはずですよ(微笑)。