海の蝶

連絡船の 着く町へ
落ちて流れて もう三年(みとせ)
潮のかおりが しみ込んだ
赤いネオンの 横文字に
すがるわたしは 海の蝶(ちょう)

連絡船で 来たころは
初心(うぶ)な娘の おさげ髪
雪と氷に とざされた
暗い酒場の 片隅で
いつか覚えた 酒の味

連絡船の 出る町も
どうせわたしにゃ 仮(かり)の宿
あすのあてさえ ない身なら
ひとり翼を いたわって
グラス重ねる 夜の蝶
×