JFK空港People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 君の沈んだプールへ 男たちが飛び込んだ でも君はここにいる 羊飼いが手を上げる たかが知れた痛みのなか 笑みを洩らす君はもう ながくはもたないと思った とっさに「帰ろう」って手を引いた 管制塔 黙り込む 機内の酸素は薄れる かつて嫌った夕焼け 燃える客室のなかで 嘘をつけない体で ふたり こころに決めた 炎はいまに呑み込もうとしてる 来ない迎え 待った 『もしもし パパだよ、ママだよ 今頃は家に着いたかな ごめんね、許して、許して 僕らまだ子供だったんだ』 いいよ、いいよ、知っていたよ 目隠しをして産まれてきたんだよね 君はいま次の夢を見ようとしている 瞳孔を開いて 光の庭は果実で溢れ 朝 眩しいホース 株価は暴落 とある日のニューヨークで 腹を抱えて 笑う 笑う 塩の柱は僕らの前にもうひとつもないよ 歯車が悲鳴を上げるのを僕は聴いた そこはとても寂しい国 経済は脆くも崩れた 粉々に割れたクレジットカード 水浸しの小切手 我らが愛すべき愚かな王様の 国を挙げてもてあます休日 アルコールの海に漕ぎだして 遭難したことを決して認めようとしない 帆が折れて船が沈んでしまっても 君はまだ信じられない 僕を失ったことに 僕はまだ信じられない 君を失ったことに 巡り巡って地球を一周したようだ すでに方位磁針に針はないけれど 城壁の向こうの取り繕った朝食の気配だってもうここにはない 僕の誰にも知られたくなかった君の犯罪者のような目 守り抜こうとしたものは指の隙間から 最後の最後でこぼれ落ちていってしまった それはいつでも滑走路から 離れられずに燃えている でも どうか諦めないで だって 僕たちはまだこの世界に産まれてはいない 荒れ放題の庭で全部の催しは終わっていない 永久に続く寝息のような 優しい象の背中 美しいものは巧妙にカモフラージュされている かけられた巨大な布 大掛かりな手品が始まる 僕はただ君の笑顔が好きなひとりの愚かな人間だった 君のよろこぶ姿が見たかったんだ トイレの床に出現する甘いチアノーゼが 僕たちの足跡をたどって瞬く間に地球を覆い尽くしていく 僕たちはまだこの世界に産まれてはいない 受けとめて、君 みて 晴れた 空から降ってくる |
スルツェイPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 2度目の朝を迎えたよ 乾きに震えるカエル 毎日起こる奇跡に苛まれて 逃げてきたんだ 君が最初に笑う理由を見せて 見えない手に押されて放り出された 舞台じゃないから? 君はかわいい怪物のようだった そうたやすくは手懐けられない 崖の下を青い風 渡る 海馬 叫ぶ 跳ねるエンドルフィン ここは君の大きな傷口 辿り着いたよ 君が最後に笑う理由を見せて 見えない手に押されて放り出された 舞台じゃないから? 海鳴りが轟いた 霊と交わる 更衣室で 押しよせる波 血流 言葉なくす司祭たち 赤ん坊の泣き声は 海の底から突き上がる 神秘が僕に鞭を打つ 「まだまだ君は生きなさい」って 夢から醒めて笑う そこはまた夢 目を開けたまま眠る秘密を見せて そして 君が最期に笑う理由を見せて 見えない手に押されて放り出された 舞台じゃないから? 全然知らなかった 誰も教えてくれなかった 切れた糸電話 ここは屋上 神のプール ふたり行列を離れる ためらう殉教者たち 君が駆け出して 僕は悲しい口を閉じた |
新市街People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | ようこそ 銀色の世界へ そびえる金属の箱へ あなたは憶えていないかもしれない ヒーローだったよ 遺失物センターにも 記憶はみつからない あなたは隠し事だらけ 今にも増え続けるのさ 楽しいことには貸し借りは要らない 震える大地の巨大な秘密 ぜんまい、モーター、シリンダー 不揃いのボルト 重なり合う櫛と歯 地軸震わせ オルゴール鳴りだしたら どおぞ そこは舞台さ オルゴール鳴りだしたら どおぞ 踊ろう 朝まで ぜんまい、モーター、シリンダー 不揃いのボルト 重なり合う櫛と歯 地軸震わせ モルモット駆け出したら ほおら 回るリボルバー オルゴール鳴りだしたら どおぞ 引き金を引け |
マルタPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 水圧に押されて割れた窓 星のようだ 石ころ 口にほおばって 「また間違った」って言った後にやったんだ 電飾で縛って吊るし上げて 3、2、1、目を開けて 海が干上がるまでは内緒にしておくよ 時計は止まったまま 朽ちた木馬 漂っている 火山のそば 通り抜けて 「また間違った」って言った後にやったんだ 電飾で縛って吊るし上げて 3、2、1、目を開けて 「また始まった!」って一斉に歓喜したい 鮮やかなバルーンを撃ち落として 罪は果たされた 海が干上がるまでは内緒にしておくよ |
リマPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 食卓は無政府状態 騎士のカードが華を添える 記念撮影はセルフタイマー レンズは銃口みたい ハイ、チーズ! メリークリスマス 緊張しいなサンタクロース 写真の僕らは仮面をつけたまま パパは強いけど 欲望に勝てない たぶん明日も ギロチンが広場を分つ 子供の兵隊 行く 毎晩 元通りになったママの王国へ メリークリスマス 緊張しいなサンタクロース 写真の僕らは仮面をつけたまま パパは強いけど 欲望に勝てない たぶん明日も 仮面の子供は走る 聖なる山に分け入って 捕まえられるかな メリークリスマス 剥製のサンタクロース 写真のなかに人影はひとつもない メリークリスマス |
ストックホルムPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 気を失うほど楽しいのがいいね 鍵をかけて 空の追跡を巻くよ 虹が出たよ −排水溝 渦を巻く 立てこもるリビングで −排水溝 渦を巻く 昔の僕達は互いのドクターだった 野放しで育つこころ 汗はねる 夏のドレス 跳んでみたいな シーツ乱して 天井触れた まさか君が −排水溝 渦を巻く 蛇口をひねるなんて −排水溝 渦を巻く 差し出した両手の代わりに何が欲しいの? 気を失うほど楽しいのがいいね 罪深くたって 飛んでみたいな 背中の羽を1本 ちょうだい ヨハネもルカもマタイも 今日だけはテレビに夢中 流れるニュース 洗面台で君が溺れた! 気を失うほど楽しいのがいいね 罪深くたって 飛んでみたいな 背中の羽を1本 ちょうだい 背中の羽を1本 ちょうだい ちょうだい? 嫌だよ! ちょうだい? 嫌だよ! |
旧市街People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 朝食に毒を密かに盛れ ながい土曜日を終わらせる為に 軌道を外れた人工衛星の物憂い視線 緩んだ口元 塔の門をくぐってからどのくらいの時間が経っただろうか 1時間? 1日? 1年? 100年? この階段はあまりに長くて 昇りながら下っているような感覚に陥った 多分そのふたつに大きな違いはない ほとんどは忘れてしまった 雨に溶けていった どこかの大地の養分に僕の記憶はなる 誰かが今頃 遠くで雨季を待つ 雨季は遠い 突然階段は終わる 風が沈黙する 静寂が辺りを包む 時が満ちたようだ 最上階の扉 開け放ち 僕は言った 僕は言った 「時間だよ 僕から生まれた僕自身に告ぐ メメント モリ」 青空 少しだけおかしくなったよ 君の首に触れて引きずり込んだ かくして僕は塔に君臨した さあ角砂糖を献上せよ 遠い眼下をのぞき込んだ そこに元の君の姿はない 印刷機が作った未来の歴史 退屈な病に血清はない 革命に血は流されないからだ 生きながら死んでいるような感覚に陥った 多分そのふたつに大きな違いはない 足音が秒針のように近づいてくると 僕はそれを知っていたこと 思い出したのさ 足音止んで 開け放つ 君は言った 君は言った 「時間だよ 僕から生まれた僕自身に告ぐ メメント モリ」 青空 少しだけおかしくなったよ 僕の首に触れて引きずり込んだ 青空 少しだけおかしくなったよ 僕の首に触れて引きずり込んだ 青空 塔を抱いて眠りにつくのさ |
レテビーチPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | むかし、むかし、君の名前が今と違っていた頃 太陽は夜の傷を消毒してくれる親戚みたい でも君は変わった メスをいれて傷を広げる 柔らかい君のおなかに ルビー色の夜がそこから溢れだす ここは楽園さ 頭上を超えて飛び込むスイマー達 水の無いプールへと そうさ、もう苦しいのはやめた! わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いやつを ひとつだけ 楽し過ぎて眠れない 広げた傷に潜り込む 僕は悪夢を書き換える ゼリー状の空気吸い込んで 浮かぶ楽園さ 頭上を超えて飛び込むスイマー達 水の無いプールへと そうさ、もう苦しいのはやめた! わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いやつを ひとつだけ 楽し過ぎて眠れない 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いのを ひとつだけ 楽し過ぎて わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 真夜中、僕らの味覚は最高潮に達している 異端の思し召し下る 聖者の仮装で 赤いアーチの出口塞いだら わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いやつをひとつだけ 楽し過ぎて わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いのを ひとつだけ 楽し過ぎて眠れない |
ベルリンPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | −レッドライト/グリーンライト ひと振りのインクで 夜は産まれる 飛び散るアルファベット カーテンと窓 深夜の追いかけっこ −レッドライト/グリーンライト 濡れた高速道路 無人の車 注ぎ込まれる 午前2時の友達 遠く離れた裸の秘密警察 明日には僕はここにいない −レッドライト/グリーンライト アンテナの代わりで逆さに傘を差す −レッドライト/グリーンライト ニヒリスト待っている 目の前を過ぎるアルファベット 撃つ −レッドライト/グリーンライト 濡れた高速道路 無人の車 注ぎ込まれる 午前4時の友達 遠く離れた裸の秘密警察 明日には僕はここにいない −レッドライト/グリーンライト アンテナの代わりで逆さに傘を差す 傘を差す 傘を差す 傘を差す ミニチュアの憂鬱に乗り込んで これが初めての単独飛行 このどこかできみに会えるかな 少しユーモアに欠けた引力の呪いから 人工衛星をすべて解き放ってみるよ リン、リン、リン はじめまして 未来からの僕の親友 雨のカーテンのなか 山火事が燃えている |
アメリカPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 神様 僕は愛しているよ 愚かで淫らなこの世界を おはよう もうひとりの僕 もう目を開けて眠らないで 朝の志願兵 まだ眠る街を背に 歌う 血とか汗とか精液を 新しいシーツに隠して ピアニスト泣き出した 君だけなのさ 僕の呼吸をデザインできるのは 強くなることは とても恥ずかしい 本当はね 皆の衆、射撃用意だ 撃ち放せ! パパとママ席を立つ 後ろめたさで 怒りで 屈辱で 車はスピード上げて炎に包まれる 哲学は銃殺刑だ もう ちゃちなメタファー捏ち上げるな 奪い合うひとつのボール 気をつけろ それは すり替えられた時限爆弾 勝ち続けろって声に耳を貸すな 紙幣の積み木 批評家たち 僕らが抜けたトンネルはいつだって ただの銃口だから 強くなることは とても恥ずかしい 本当はね 皆の衆、射撃用意だ 撃ち放せ! 神様 僕は恨んでいるよ 本当はね 不思議なこの機械を 誰の子でも いられない いられない |
東京People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | その秘密を 僕は見たよ だから行くんだ 胸を張って もうすぐ優しいドアに手が かかる 軽蔑した 朝の太陽を その口の軽さを でも新しい一日は 今までと違うふうになるだろう だって僕は君の大きな 美しい嘘へ 恋に堕ちた 堕ちた 堕ちた |
八月People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 透きとおる朝 からだ宙を舞う 晴れやかな体勢で 流れ出す太陽を青空がのぞきこむ 海岸線 這いつくばるきみを 上からみんなが笑っていた 痛みさえ感じるひまもなかっただろうね はじめからきみは そのつもりで そうさ きみの世界で選べるのは ただひとつだけのボタンさ 機械のように「その階には止まりません」と ぼくは何度もくりかえすけど きみには冗談にしかきこえない 誰かが死にかけているとき きみは生きる喜びにある 人の渦に削られたあげくに なくなってしまいたい 朝 走る車をぎりぎりでひらりとかわす 突然 誰かにあって話をしてみたくなった 傷ついても そとは冷たいけれど なかは暖かい ちょうど からだみたいだ きみの夢は 毎夜 歳をとっていくのさ きみを残して 踊りだしたら視界が揺れる 織り成す世界は壮大なジョーク ぼくには冗談にしかきこえない 愛も正しさも一切君には関係ない きみは息をしている |
さようなら、こんにちはPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 雨の街に傘を降らす それを奇跡と呼んだよ まわる まわる 地球儀に そびえ立つ銀行に宿るもの 橋が燃えているよ 燃えて焼け落ちるよ モルヒネの川のなか ぼくら夢をみてる 傘を忘れて踊ろう 降り注ぐ それは雨じゃなかったんだ 橋が燃えているよ 燃えて焼け落ちるよ あなたの絶望で空が晴れ渡るよ わたしの聖域にはいっておいで 土を踏みしめて なみだを垂らして 意味もなくきみが笑う (さよなら、物質) 意味もなくぼくも笑う (さよなら、物質) いくつも国を抜けて 列車は走る最中へ 深い深い中心へと 花と宇宙が散るなかを めざめだ わたしの聖域にはいっておいで 土を踏みしめて なみだを垂らして 意味もなくきみが笑う (さよなら、物質) 意味もなくぼくも笑う (さよなら、物質) 窓を開け放って 風を誘い込んだ 屋根を吹き飛ばして すべて撒き上がるよ 窓を開け放って 光 暴れだした まぶた開け放って その眼でなにもみるな ただいま、ひさしぶりだね 原風景 |
市場People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 物語が続いていくって 感動的にみんな信じている もうすでに一部の人たち 笑いの発作止められないよ ラリって またブットんで 痛みを忘れた ぼくのことだ 七色の雨が降っている 塩の街 浮かれ騒ぐのさ 一斉に誤作動おこした火災報知器 スペクタクル 貪婪で やわらかい爆撃を背にし 扉をおりていけ 地下深くへ すすめ 純粋無垢な憎悪のかたまり 武装解除して押し黙ったきみは危ない 暗闇は見えるよりはるかに広大なスペース 沸き立つ欲望も言葉も押し殺していけ 物語が続いていくって 黒幕の契約の上で 七色の雨が降っている 塩の街溶けはじめるのさ 扉降りていけ 地下深くへ すすめ 純粋無垢な憎悪のかたまり 武装解除して押し黙ったきみは危ない 暗闇は見えるよりはるかに広大なスペース 物体にまつわる情報量を越えていく 光はきみの想像に制限をかける 沸き立つ欲望も言葉も押し殺して 暗闇は世界よりはるかに広大なスペクタクル むせかえるほど濃密な空気があるよ 遠くで水の音がしている 耳をすませ 耳をすませ 清潔な流し台を血液が走る |
みんな春を売ったPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ゆうべ からだを売ってみたんだ こころを切り離すために フラスコのなかで一生を 過ごせたらいいな アルコールランプの照らす 混じり気なしの血液で それで自由になれたかな 天秤にかけてわかるかな 絶対にからだから逃げられないと 知ったきみは おかしくなってしまった おかしくなってしまった おかしくなってしまった さよならさ いつかきみも おとなになるよ 聞きわけのない おとなになるよ 未来はまるで泥のように横たわる まみれて泣いてるきみを横目に 人々は行く それで自由になれたかな 天秤にかけてわかるかな 最後にこころからにげてしまって さよならした まともなひとたちはみな まともなひとたちはみな まともなひとたちはみな 戦争へ行ってしまった 戦争へ行ってしまった 戦争へ行ってしまった さよならさ いつか君も おとなになるよ 聞きわけのない おとなになるよ |
割礼People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | きみはたとえば夜行列車で産みおとされた 赤ん坊 その寿命は北半球を行き来する 振り子 永久機関に焦がれた腕が 踊る たえず軋むレールに 拍子あわせ ほら 物質の洗礼さ 夜空 輝くコイン あの東京にも原始時代はあった ためらうにきび面の少年も 駆けだすそばかすだらけの少女も IDをカラーチャートに照らし合わせ 近似値で恐怖の汗を ぬぐい落とした ほら 物質の洗礼さ 夜空 輝くコイン あの東京にも原始時代はあった ほら 物質の洗礼さ 夜空 輝くコイン あの東京にも原始時代はあった |
ダンス、ダンス、ダンスPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ぼくは大勢のなか ただのひとり 機械が上陸した青い海で 同じ広告が何度も流れる 網膜に強く焼き付いたLED はねつけられたら きみのプライド著しく傷つけられた 愛がすべてというなら 汚れひとつ許せないね 土足厳禁の庭で息をとめるのかい? 哲学者の友達はきびしかった 遂にぼくを許してくれなかったけど 嘘だけは絶対つかなかった “ついていい嘘なんてあるわけがない” 死んでしまってからも ぼくはそれを誇りにおもうよ どんな美しいひとも じぶんの嘘に気づいていない 超然としていたって あたまはからっぽさ 風が止んだら 人が倒れる 観客のいないドミノ遊び 悲鳴が止んだら 鳥が笑った 息吹きかえす いくつもの産声 森を突き抜けて立つ狼煙のようだ 割れる喝采のなか さあ はなしをしよう 想像上の神の庭で だれもうまく踊れないよ 超然としていたって あたまはからっぽさ ダンス!ダンス!ダンス! きみの孤独が 世界を救うかもしれない 荒れはてた庭で ひとり なかよく踊りましょう |
物質的胎児People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | まぶたおろして むをたべてみよう こころをなくして なくのはしないで 影をきりおとせ やわらかいメスで ふかさのない穴へと ほつれだした いとをたぐる くちのなかを舌がころがる あじわって あじわって たくらみをとかすように 蓮のはな ひらいた きかい からまる 聖なるあくびで ようふくとおどる からだはいらない 秘密の遺伝子 あんぜんなみどりむし 無重力 そのかんまんなアクロバット もつれだした いとをさぐる たちのぼるよ 色もかたちも まじわって まじわって たいくつをしのぐように いるか すべりこんだ 動物たちだまりこんだ みずの底で いしがけずれる 冷蔵庫のなかでひかる なにもみてはいない まなざし まじわって まじわって たいくつをしのぐように いるか すべりこんだ あじわって あじわって たくらみをとかすように 蓮のはなひらいた いつわって いつわって のどのおく はびこる根を なみだがしたたった うたがって うたがって あしもとのひえたかわを なにかがしたたった |
球体People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて 今日も 昨日も 明日も 球体に守られて だれもが痣だらけ 誰も気付かない 声をかえせ 泥棒は笑っている 晴れた日 視界から消えたものは 密かに膨らんでいく 僕らはだれも殺せはしない 透明な膜のなか 青ざめた労働者 群れを成しさまよう 砂ぼこり 舞い上がり 顔はほとんど見えない 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて だれもが痣だらけ 球体に守られて だれもが痣だらけ 誰も気付かない 声をかえせ 泥棒は笑っている 空がおちてきたところで 指くわえ みているだけさ 噂と架空の痛みさえ 城壁は越えない 声をかえせ 泥棒は笑っている 晴れた日 視界から消えたものは 密かに膨らんでいく 僕らはだれも殺せはしない 透明な膜のなか 空をかえせ 泥棒は笑っている |
時計回りの人々People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ある日 きみは動くのをやめた 発明家のほんの思いつきのように 地球は走る しっぽに見とれて 24時間 気にも留めはしないよ 電話がやかましく騒ぎだす 郵便受けが吐き出す手紙 ひとがいうには 「すぐに治るよ きみのこころは 仲間の待つ仕事に戻れよ 今日のところは」 もしかしたら そうかもね みんないうなら そうかもね 街は実物大の模型で ふえるエキストラ 泣いて怒って笑う 台本どおり 忙しい 医者がいうには 「すぐに治るよ きみのこころは 少し休みなさい」 科学者がきめるピースサイン そこでひとは産まれた 照明焚いて カメラまわせ 用意、スタート! もしかしたら そうかもね みんないうなら 政治家も警察も 調子悪いな 言葉つまらせ 専門家曰く、 「こんな天気はみたことがない」 なにか不思議だ きみは壊れていないのに でも 医者がいうには 「すぐに治るよ きみのこころは」 もしかしたら そうかもね みんないうなら そうかもね もしかしたら |
開拓地People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 月を漂白してみることはできても ふれることはできない いつも手ざわりはこの手のなかあるけど 冷たく圧し黙ったまま 向かい風のなか目を凝らしてみれば 空っぽの小屋が佇んでいる その歪なかたちした楽器の 名前を誰も知らない 歌をおぼえたての外国語で歌う 帽子深く隠れて 向かい風のなか目を凝らしてみれば 空っぽの小屋が佇んでいる 強い強い風が 強い風が 強い強い 強い風が吹いた 向かう場所はいつでも荒れ地だった 虫たちは土に凍る 遮るものもなく 隔てられもしないけど それは迷路だった 途方にくれた ようこそ ごきげんいかが 孤独な旅人 おなかが空いたら 食事にしようよ ようこそ ごきげんいかが 祈りが終わったら 食事にしようよ おなかが空いたら 食事にしようよ |
鉱山People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 聖なるビルのふもと 電磁波の降るなかを ぼくは歩いて帰ろう 見上げた空は虹色 螺旋の樹にのぼる 21人の子供 朝を隠して 夜を消す 山は静かにたゆたう 帰ろう 聖なるビルのふもと 電磁波の降るなかを ぼくは歩いて帰ろう 見上げた空は虹色 |
脱皮後People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | きみが持つピカピカの腐らないやつを ちょうだい ぜんぶちょうだい 透明な樹液に集まる うつろな目した昆虫たち あしたはどこへ行こう 孤立無援のまま それだけできみは腰抜けではない 君が乗る戦闘機のなか 花 敷き詰めて 贈るよ はじめから抜け殻だったら もっと世界が好きになれたかな あしたはどこへ行こう 孤立無援のまま それだけできみは腰抜けではない |
船People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 夜は黒い 夜は深い 放送はこれでおしまい 住宅街 眠る気配で 子供が泡立つのさ 朽ちた灯台から船は出る 浮かぶ 浮かぶ 浮かぶ 消える 夜は黒い 夜は深い つまさきを浸し遊ぶ 土深く秘めた熱で 子供は気化していく 霧立ちこめる沖へ船は出る 浮かぶ 浮かぶ 浮かぶ 消える 石炭の臭いで犬が乾いた 霧の向こうでラッパが鳴り響くのさ 夜は黒い 夜は深い 放送はこれでおしまい 住宅街 眠る気配で 子供が泡立つのさ 朽ちた灯台から船は出る |
新聞People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 円の中心に立って雨を待ち望むとき 人は守られている 空想の卵のなか もう一歩も踏み出せない 外の世界で砂埃が舞っている ラジオが放送されている 息も絶え絶えに 夜の闇を瞬くシナプスの列 カメラのフラッシュ ショーウィンドウ 円の中心に立って雨を待ち望むとき 人は守られている 空想の卵のなか 誰かが何かを吹き込んだ 頭のなか テープレコーダー 人はそれを記憶と呼んだ 頭のなかテープレコーダー 原音を忠実に再生していると誰もが口をそろえて 新聞紙はそう言った 雑音に満ちた数世紀をまたぐ 名前が足りない 名前が見つからない戦争があって 言葉がだぶつく 言葉があり余る季節がきた いつでも視線を感じている 新聞紙はそう言った 暴風雨が踊る おびただしいアンテナをなぎ倒して それは人間のようなかたちをしている それは鳥のようなかたちをしている それは衛星のようなかたちをしている それは電波のようなかたちをしている それは塔のようなかたちをしている それは箱のようなかたちをしている 名前が足りない 名前が見つからない戦争があって 言葉がだぶつく 言葉があり余る季節がきた いつでも視線を感じている 新聞紙はそう言った 雑音に満ちた数世紀をまたぐ |
潜水People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | もう おやすみ ここはどうみても公平な世界 手近な価値をはかるまえに 天秤を疑ってみてごらん 一度でも昼に夢をみたら おめでとう どんな色をしているの? どんな味がするんだ? 人がいつか飛び込む 海の底はさあ 誰も知らないことは 一番近くにあるよ 誰も知らないことは もう おやすみ 皿の上 織りなす凡庸な舞台 余った役は残っていないのさ そこは帰るべき家ではない 演じる場所を今も探しているんだね どんな色をしているの? どんな味がするんだ? 人がいつか飛び込む 海の底はさあ 誰も知らないことは 一番近くにあるよ 誰も知らないことは 優しい人をさがすのはやめたよ 飛び込む海はきみのもの どんな色をしているの? どんな味がするんだ? きみがいつか飛び込む 海の底はさあ どんな色をしているの? どんな味がするんだ? きみがいつか飛び込む 海の底はさあ |
夏至People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | ぼくは静かにページめくった 黴の匂いにきみは目醒めた ああここはどこからも 遠ざけられた場所 海は風に凪ぐ 物いわぬ便箋のように 鳥は静かに翼たたんだ 夏がおわれば夏がはじまる 過ちをおかした 海辺の行列 途方に暮れ微睡む 罰を忘れられて 止まる世界でページめくった いまも目次に たどり着けない いまも目次に たどり着けない |
真夜中People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 今日の放送は終了したと そっけない画面のテロップ 遠くのクラクション サイレンの音 彼女の夜はやかましい 見えない虫が一匹 聞こえない声で質問攻めさ 彼女の夜はやかましい 理由を述べよと 執拗に 鳴り止まない囁きに 眠れそうにないなら 一晩じゅう一緒に起きていても いいよ 深夜のタクシー 気怠く流れる 国道 死神 鎌を振る ヘルツ博士のよどんだ眼に 真夜中のトロフィー 誰かがギターを弾いている もう うんざりだ 彼女の夜はやかましい 理由を述べよと 執拗に 鳴り止まない囁きに 追いつめられ壊れそうなら 一晩じゅう夜を傷つけても いいよ いいよ |
塔(エンパイアステートメント)People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | ビラを撒いた エンパイアステートビルの屋上から 観光を装って 地下鉄のぼれば五番街 見上げた 都市を賑やかす大晦日 歩いた 眩しい身体を横たえた 浴槽で 眠れるゲストに告ぐ夜の 警報 ハレルヤ! ニューヨーク午前0時 ベトナムは正午過ぎ ニューヨーク午前0時 ヴァレッタ朝の6時 ビラを撒いた 輝く夜の地上に 浮かぶ髑髏たち アーティストが踏み潰した みんな傷ついた羊飼い演じた 著名人たちがもみ消した王国 ハレルヤ! ニューヨーク午前0時 ベトナムは正午過ぎ ハレルヤ! ニューヨーク午前0時 ヴァレッタ朝の6時 ハレルヤ! 新宿午前0時 ニューヨーク朝10 時 ハレルヤ! 新宿午前0時 ニューヨーク朝10 時 血で血を洗う 血で地を洗う |
空地People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 門を出てどこかへと行くよ 肥えた土地には貧しい果てがあると 知っていても 高く伸びるビルにだって限りはあるし 無視をするや否や 雷 落ちるよ おもいの丈を叩きつけろ ある男はいうけど 良くいえばオールドファッション ただの時代遅れ きみの声は聞こえたけど 言葉は届かない そうさ 水彩画に描いた曇り空を ベランダのホースでもって 洗い落としてみれば そこにはなにがある? ただのぬれた紙がある |
穴People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 誰ひとりいれるな その穴のなかには 年齢 性別問わず 年収 国籍問わず 誰ひとりいれるな そのようにきいております 誰ひとりいれるな その穴の内部を のぞいた男がいた 砂丘から望遠鏡で 翌日 風邪ひいた そのようにきいております |
投擲People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | デスレースだ 丘のまんなかで 白いコンバースと 青いたてがみで 目の前の 何もない草原 先発はまだ帰らない それでも とびだせば すぐに夢中になるさ 身体 投げだすだけ 凍る草原へ 客席も カメラ 放送席 失格までも ない コースもない 選手の眼 映る万国旗 飛ぶヘリコプター 乾いた風 迷いなくとびだせば 不安は消えるものさ 記録叩き出すだけ 凍る草原へと ハイライトはCMの後で スポンサーは周知のとおり 神さま 銀行家の庭で様子うかがっている ゲーム結果はCMの後で スポンサーは周知のとおり 神さま いつも一等賞 死者は一等賞 花をくわえさせられ話せない 隠されたことが隠されている 人間を知り抜いた よくできたルールだ |
起爆People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | きみは戦争に興味がないしね 戦争はきみに興味がない しね |
皿(ハッピーファミリー)People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | パーティーは続いている 終わりそうに見せかけているが ケチャップで引いた国境に ピザはほぼ型崩れ 我が子は大切だよ 他人の子よりも みんな賛成だよ 友達だものね 友達だものね あのとき略奪してしまってごめんね 欲望が欲してるのは 欲望そのもの 遊びさ ただの遊びさ パーティーは続いている クラッカー打ち鳴らしてさ コーラの油田 奪い合う 冒険小説 深読みしながら 我が子は優秀だよ 他人の子よりも みんな賛成だよ 友達だものね あのとき略奪してしまってごめんね 欲望が欲してるのは 欲望そのもの 400年前のあの混乱をうまく再現するのさ 思い出せるかな 遊びさ ただの遊びさ |
砂漠People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 砂時計を 風 吹き荒れる 時は過ぎ ただ 吹き溜まる 砂時計が 木々を揺らせば 果物は種を宿して浮かぶ 結わえ 結わえ 電極を地表に それが真実だ 曲線 せまる波うちぎわ はりつめた糸 針の先 終わりは悲しい 誰も知れない 砂時計を 風 吹き荒れる 時は過ぎ ただ 吹き溜まる 人 消えた昼の都会で たちのぼる煙草の煙 結わえ 結わえ 電極を地表に それが真実だ 曲線 せまる波うちぎわ はりつめた糸 針の先 毒 孕んだ花が咲いたのさ 遥か古代のテレビドラマ 種子まとって 砂漠は拡がる 最後まで 終わりは悲しい 誰も知れない 砂時計を 風 吹き荒れる 時は過ぎ ただ 吹き溜まる |
気球People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 何千機もの気球が ゆっくりと地上を離れていく 虹色の荒野 年老いたぼくらがいた 植物も思い出も かたちをとどめないよ ここは最後の国 ぼくらは孤独なアインシュタイン 互いの声 耳も貸さず もうすぐおしまいだと 誰もが信じていたけど ここはおじいちゃんとおばあちゃんの国 それはただのながい幼年期みたい トンネル抜ければそこはまた大きなトンネルのなか いつから列はここでつっかえていたのか 眼を閉じ 耳を塞ぐ 誰かの温度も忘れた 迷走するボロい機械 それでも歯車は チクタク回転している 金属の粉振りまいて チクタク回転している 眼を閉じ 耳を塞ぐ ぼくらは孤独なアインシュタイン 震える夜の闇に これは、はじまりかも ただただ気配がしている とっくに無視はできないよ あなたは孤独なアインシュタイン 空想する春のマシン これははじまりだよ! ここは歴史のまんなかさ ここは歴史のまんなかさ チクタク回転している |