JFK空港People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 君の沈んだプールへ 男たちが飛び込んだ でも君はここにいる 羊飼いが手を上げる たかが知れた痛みのなか 笑みを洩らす君はもう ながくはもたないと思った とっさに「帰ろう」って手を引いた 管制塔 黙り込む 機内の酸素は薄れる かつて嫌った夕焼け 燃える客室のなかで 嘘をつけない体で ふたり こころに決めた 炎はいまに呑み込もうとしてる 来ない迎え 待った 『もしもし パパだよ、ママだよ 今頃は家に着いたかな ごめんね、許して、許して 僕らまだ子供だったんだ』 いいよ、いいよ、知っていたよ 目隠しをして産まれてきたんだよね 君はいま次の夢を見ようとしている 瞳孔を開いて 光の庭は果実で溢れ 朝 眩しいホース 株価は暴落 とある日のニューヨークで 腹を抱えて 笑う 笑う 塩の柱は僕らの前にもうひとつもないよ 歯車が悲鳴を上げるのを僕は聴いた そこはとても寂しい国 経済は脆くも崩れた 粉々に割れたクレジットカード 水浸しの小切手 我らが愛すべき愚かな王様の 国を挙げてもてあます休日 アルコールの海に漕ぎだして 遭難したことを決して認めようとしない 帆が折れて船が沈んでしまっても 君はまだ信じられない 僕を失ったことに 僕はまだ信じられない 君を失ったことに 巡り巡って地球を一周したようだ すでに方位磁針に針はないけれど 城壁の向こうの取り繕った朝食の気配だってもうここにはない 僕の誰にも知られたくなかった君の犯罪者のような目 守り抜こうとしたものは指の隙間から 最後の最後でこぼれ落ちていってしまった それはいつでも滑走路から 離れられずに燃えている でも どうか諦めないで だって 僕たちはまだこの世界に産まれてはいない 荒れ放題の庭で全部の催しは終わっていない 永久に続く寝息のような 優しい象の背中 美しいものは巧妙にカモフラージュされている かけられた巨大な布 大掛かりな手品が始まる 僕はただ君の笑顔が好きなひとりの愚かな人間だった 君のよろこぶ姿が見たかったんだ トイレの床に出現する甘いチアノーゼが 僕たちの足跡をたどって瞬く間に地球を覆い尽くしていく 僕たちはまだこの世界に産まれてはいない 受けとめて、君 みて 晴れた 空から降ってくる |
水面上のアリアPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 水は夜 飛沫上げる聞こえる音 暗いプール人影ひとつ見下ろしている 沈んでいく水のなか 眠っている君と目があった 家の屋根が見えるかな 心配ないさ 夜は僕の背中にある カウチのそば流血の痕 沈んでいく水のなか 眠っている君と目があった 家の屋根が見えるかな 今 2階の窓が開く 僕はもういないものとして生きていた もう既にいないものとして生きていた 君はそう手を伸ばして揺れていた 水面を越えてしまってはダメだ 沈んでいく水のなか 眠っている君と目があった 家の屋根が見えるかな 星が眩しい 今 2階の窓が開く 僕はもういないものとして生きていた もう既にいないものとして生きていた 君はそう手を伸ばして揺れていた 水面を越えてしまってはダメだ |
水曜日 / 密室People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 少年少女 迷いの庭で天国夢みる このクラブのリーダーは神ではないのさ 走れ 速く メリーゴーラウンド どこかへ連れて行くよ 遊ぼう 遊ぼう 目が回って叫ぶ! おもちゃの兵隊の影 みるみる僕らを追い越していく 誰も気付いていない 破れたリュックサックに蛇 大丈夫、もう からだの声に毒されているから 走れ 速く メリーゴーラウンド どこかへ連れて行くよ 遊ぼう 遊ぼう 今日が終わらぬように 密室の蝶みたいだよ 君の祈りは 立ちのぼり 急降下して 燃えて消えるのさ 密室の蝶みたいだよ 君の祈りは 青い空が先に目を逸らしたってさ 僕らは楽し過ぎたから 動けなくなった 僕らは楽し過ぎたから 戻れなくなった 走れ 速く メリーゴーラウンド どこかへ連れて行くよ 指で、口で、満たしたいよ 呼吸を! 密室の蝶みたいだよ 君の祈りは 立ちのぼり 急降下して 燃えて消えるのさ 密室の蝶みたいだよ 君の祈りは 立ちのぼり 急降下して 燃えて消えるのさ 溢れ出した 赤いミルク 白い血 いつか結婚しようね 僕らは楽し過ぎたから 動けなくなった 僕らは楽し過ぎたから 戻れなくなった 僕らは楽し過ぎたから 動けなくなった 僕らは楽し過ぎたから 戻れなくなった |
ストックホルムPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 気を失うほど楽しいのがいいね 鍵をかけて 空の追跡を巻くよ 虹が出たよ −排水溝 渦を巻く 立てこもるリビングで −排水溝 渦を巻く 昔の僕達は互いのドクターだった 野放しで育つこころ 汗はねる 夏のドレス 跳んでみたいな シーツ乱して 天井触れた まさか君が −排水溝 渦を巻く 蛇口をひねるなんて −排水溝 渦を巻く 差し出した両手の代わりに何が欲しいの? 気を失うほど楽しいのがいいね 罪深くたって 飛んでみたいな 背中の羽を1本 ちょうだい ヨハネもルカもマタイも 今日だけはテレビに夢中 流れるニュース 洗面台で君が溺れた! 気を失うほど楽しいのがいいね 罪深くたって 飛んでみたいな 背中の羽を1本 ちょうだい 背中の羽を1本 ちょうだい ちょうだい? 嫌だよ! ちょうだい? 嫌だよ! |
スルツェイPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 2度目の朝を迎えたよ 乾きに震えるカエル 毎日起こる奇跡に苛まれて 逃げてきたんだ 君が最初に笑う理由を見せて 見えない手に押されて放り出された 舞台じゃないから? 君はかわいい怪物のようだった そうたやすくは手懐けられない 崖の下を青い風 渡る 海馬 叫ぶ 跳ねるエンドルフィン ここは君の大きな傷口 辿り着いたよ 君が最後に笑う理由を見せて 見えない手に押されて放り出された 舞台じゃないから? 海鳴りが轟いた 霊と交わる 更衣室で 押しよせる波 血流 言葉なくす司祭たち 赤ん坊の泣き声は 海の底から突き上がる 神秘が僕に鞭を打つ 「まだまだ君は生きなさい」って 夢から醒めて笑う そこはまた夢 目を開けたまま眠る秘密を見せて そして 君が最期に笑う理由を見せて 見えない手に押されて放り出された 舞台じゃないから? 全然知らなかった 誰も教えてくれなかった 切れた糸電話 ここは屋上 神のプール ふたり行列を離れる ためらう殉教者たち 君が駆け出して 僕は悲しい口を閉じた |
生物学People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | さあ 目を開けて僕を見て 今日から君は僕のもの 行こう 氷河期は始まったばかりだ 海の底を這いまわるニーチェ 飢えて剥きだしの心臓は 野蛮でとにかく気高いのさ そう 汚らわしいものは粛清さ 匙を投げて憤るフロイト 輝く目が僕を見返した |
潜水People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | もう おやすみ ここはどうみても公平な世界 手近な価値をはかるまえに 天秤を疑ってみてごらん 一度でも昼に夢をみたら おめでとう どんな色をしているの? どんな味がするんだ? 人がいつか飛び込む 海の底はさあ 誰も知らないことは 一番近くにあるよ 誰も知らないことは もう おやすみ 皿の上 織りなす凡庸な舞台 余った役は残っていないのさ そこは帰るべき家ではない 演じる場所を今も探しているんだね どんな色をしているの? どんな味がするんだ? 人がいつか飛び込む 海の底はさあ 誰も知らないことは 一番近くにあるよ 誰も知らないことは 優しい人をさがすのはやめたよ 飛び込む海はきみのもの どんな色をしているの? どんな味がするんだ? きみがいつか飛び込む 海の底はさあ どんな色をしているの? どんな味がするんだ? きみがいつか飛び込む 海の底はさあ |
脱皮後People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | きみが持つピカピカの腐らないやつを ちょうだい ぜんぶちょうだい 透明な樹液に集まる うつろな目した昆虫たち あしたはどこへ行こう 孤立無援のまま それだけできみは腰抜けではない 君が乗る戦闘機のなか 花 敷き詰めて 贈るよ はじめから抜け殻だったら もっと世界が好きになれたかな あしたはどこへ行こう 孤立無援のまま それだけできみは腰抜けではない |
ダンス、ダンス、ダンスPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ぼくは大勢のなか ただのひとり 機械が上陸した青い海で 同じ広告が何度も流れる 網膜に強く焼き付いたLED はねつけられたら きみのプライド著しく傷つけられた 愛がすべてというなら 汚れひとつ許せないね 土足厳禁の庭で息をとめるのかい? 哲学者の友達はきびしかった 遂にぼくを許してくれなかったけど 嘘だけは絶対つかなかった “ついていい嘘なんてあるわけがない” 死んでしまってからも ぼくはそれを誇りにおもうよ どんな美しいひとも じぶんの嘘に気づいていない 超然としていたって あたまはからっぽさ 風が止んだら 人が倒れる 観客のいないドミノ遊び 悲鳴が止んだら 鳥が笑った 息吹きかえす いくつもの産声 森を突き抜けて立つ狼煙のようだ 割れる喝采のなか さあ はなしをしよう 想像上の神の庭で だれもうまく踊れないよ 超然としていたって あたまはからっぽさ ダンス!ダンス!ダンス! きみの孤独が 世界を救うかもしれない 荒れはてた庭で ひとり なかよく踊りましょう |
天使の胃袋People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ドーベルマン ドーベルマン 廊下抜け 床を蹴って 手の鳴るほうへ駆けるニュース 今夜 誰が踊らされるのさ ボイラー室 ボイラー室 追手は遂には追い抜いて 走る暗闇を伸びるレール 君が服を脱ぐ 輝く眼で 何も欲しくないけど物足りない ってさ、君は僕みたいだね ファンファーレ ファンファーレ 胃袋はもういっぱい 粘膜の夢に溶けていたい だけど空席の王座へ飛ぶシュプレヒコール 僕らの欲望が吹き飛ばすパレード 何も欲しくないけど物足りない ってさ、君は僕みたいだね 電池が切れてしまった僕ら だから次の世界で息をするよ 息をするよ ふたりはいつでも泣かない子供 君は僕みたいだね 大丈夫 ってさ 傷をつけてあげるよ 君の傷口は動く 動く 体をねじって逃げる 逃げる ふたりで震えて 笑う 笑う もうすぐトンネルを抜けるよ 光り溢れ |
塔(エンパイアステートメント)People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | ビラを撒いた エンパイアステートビルの屋上から 観光を装って 地下鉄のぼれば五番街 見上げた 都市を賑やかす大晦日 歩いた 眩しい身体を横たえた 浴槽で 眠れるゲストに告ぐ夜の 警報 ハレルヤ! ニューヨーク午前0時 ベトナムは正午過ぎ ニューヨーク午前0時 ヴァレッタ朝の6時 ビラを撒いた 輝く夜の地上に 浮かぶ髑髏たち アーティストが踏み潰した みんな傷ついた羊飼い演じた 著名人たちがもみ消した王国 ハレルヤ! ニューヨーク午前0時 ベトナムは正午過ぎ ハレルヤ! ニューヨーク午前0時 ヴァレッタ朝の6時 ハレルヤ! 新宿午前0時 ニューヨーク朝10 時 ハレルヤ! 新宿午前0時 ニューヨーク朝10 時 血で血を洗う 血で地を洗う |
東京People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | その秘密を 僕は見たよ だから行くんだ 胸を張って もうすぐ優しいドアに手が かかる 軽蔑した 朝の太陽を その口の軽さを でも新しい一日は 今までと違うふうになるだろう だって僕は君の大きな 美しい嘘へ 恋に堕ちた 堕ちた 堕ちた |
投擲People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | デスレースだ 丘のまんなかで 白いコンバースと 青いたてがみで 目の前の 何もない草原 先発はまだ帰らない それでも とびだせば すぐに夢中になるさ 身体 投げだすだけ 凍る草原へ 客席も カメラ 放送席 失格までも ない コースもない 選手の眼 映る万国旗 飛ぶヘリコプター 乾いた風 迷いなくとびだせば 不安は消えるものさ 記録叩き出すだけ 凍る草原へと ハイライトはCMの後で スポンサーは周知のとおり 神さま 銀行家の庭で様子うかがっている ゲーム結果はCMの後で スポンサーは周知のとおり 神さま いつも一等賞 死者は一等賞 花をくわえさせられ話せない 隠されたことが隠されている 人間を知り抜いた よくできたルールだ |
時計回りの人々People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ある日 きみは動くのをやめた 発明家のほんの思いつきのように 地球は走る しっぽに見とれて 24時間 気にも留めはしないよ 電話がやかましく騒ぎだす 郵便受けが吐き出す手紙 ひとがいうには 「すぐに治るよ きみのこころは 仲間の待つ仕事に戻れよ 今日のところは」 もしかしたら そうかもね みんないうなら そうかもね 街は実物大の模型で ふえるエキストラ 泣いて怒って笑う 台本どおり 忙しい 医者がいうには 「すぐに治るよ きみのこころは 少し休みなさい」 科学者がきめるピースサイン そこでひとは産まれた 照明焚いて カメラまわせ 用意、スタート! もしかしたら そうかもね みんないうなら 政治家も警察も 調子悪いな 言葉つまらせ 専門家曰く、 「こんな天気はみたことがない」 なにか不思議だ きみは壊れていないのに でも 医者がいうには 「すぐに治るよ きみのこころは」 もしかしたら そうかもね みんないうなら そうかもね もしかしたら |
どこでもないところPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | かつて家の庭で繰り広げられたパーティーで 様々なものをひとは燃やして帰った それは灰になって 今 降り注いで ほら 君は真っ白な髪を振った みんなどこかへ消えてしまえばいいのにな 願った瞬間にひとり残らず消えた 寝室の扉は閉めて 僕は地上で息を無くした潜水士さ 僕のからだ打ち捨てられた 君の唇 うずく うずく 波はかえさず寄せ続ける 迷路に悩め 出口はないけど 憶えているよ いちばん楽しいことと悲しいことがあった部屋を もうどこへも行かない 君は 寝室の扉は閉めて 僕は地上で息を無くした潜水士さ |
土曜日 / 待合室People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 朝、蒸気のような雨が吹きつけて 通りは輝きだした 目の褪せたサイコロを振って 思い出の街を行く 光の駅のホームで 僕は始発を待った 寝て起きると そこに君がいたらいいな 足音は溶けていく 色の消えた空に もし明日が来るのなら とても悲しいな もう、やめようよ って袖を引いてくれて ありがとう でも あと一錠だけ でも あと一錠だけ そびえ立つ陽炎 顔の無い人々 君のパパが建てた高いビル すべての窓がふたりをのぞき込んで いっせーのーせっ で歌い始めた 君はカメラを逆さに構え自分に向けた 何が見える? 誰かと目が合って離れない 口を開けて 君の宇宙を見せて ほらね 言葉のない秘密は とてもやかましい 世界中に電話 鳴る 僕は、君は、出ない 音もなく 雨が降る 僕はいない 君はいない |
泥の中の生活People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | Good Morning, My Frog Queen. その温かい泥のなかから見上げるもの なにか激しい衝撃を待ってる 今なら光は警棒のように掴めそうだ Good Afternoon, My Frog Queen. 一日中手紙の返事を待ち続ける 隣の国の空は真っ赤に染まった 「なにもかもうまくいくわ」って歌を歌った Good Evening, My Frog Queen. スポーツ好きの数学者と居酒屋で会った 今夜は勉強しようか 1+1+1+1+1… Good Night. |
日曜日 / 浴室People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 「水滴のようだよ もういまにも落ちようとしてる」 「君がいる闇へ手を伸ばして かきまわしたい」 「交じりあえたね でもこれ以上は 現れては消える」 「僕は待ちきれるかな」 「もういいかい?」 「まだだよ、まだだよ」 「僕はずるをして もう一回生きてしまって」 「許せないよ 二度とは」 「またやってしまったんだ」 「震えをとめて」 「サンクトペテルブルグで 浴室で」 「この狭いバスタブが世界を蹂躙する」 「もういいかい?」 「まだだよ、まだだよ」 「君は嘘をついて もう一回死んでしまって」 「わからないよ 二度とは」 「もう一回触れたかった」 「現れては消える」 「もういいかい?」 「まだだよ、まだだよ」 「僕はずるをして もう一回生きてしまって」 「許せないよ だから、 わたしのいのちを、君にあげる パンケーキみたいに切り分けて、あげる」 |
始まりの国People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 架空の国境を跨ごうとしている まばたき忘れ 呼吸忘れ また振り出しに戻った 扉から細く漏れる光 偶然が重なり続ける街 煉瓦のように積まれる 思想を溶かしてみたい 天才だらけの庭 僕はもう生きてはいないかもしれない 眩さに驚き目を開いたまま 若い哲学者の口を ガムテープでぐるぐる巻きに 開いたページ破ってしまえ それは未来からの手紙 君はもう生きてはいないかもしれない 住み慣れた街の亡霊に取り憑かれて 行こうかな 戻ろうかな いっそ踊ろうかな 僕ら自由さ 抜け出して この永い熱病からもう 誰もいなくなって 気配だけがざわついている |
八月People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 透きとおる朝 からだ宙を舞う 晴れやかな体勢で 流れ出す太陽を青空がのぞきこむ 海岸線 這いつくばるきみを 上からみんなが笑っていた 痛みさえ感じるひまもなかっただろうね はじめからきみは そのつもりで そうさ きみの世界で選べるのは ただひとつだけのボタンさ 機械のように「その階には止まりません」と ぼくは何度もくりかえすけど きみには冗談にしかきこえない 誰かが死にかけているとき きみは生きる喜びにある 人の渦に削られたあげくに なくなってしまいたい 朝 走る車をぎりぎりでひらりとかわす 突然 誰かにあって話をしてみたくなった 傷ついても そとは冷たいけれど なかは暖かい ちょうど からだみたいだ きみの夢は 毎夜 歳をとっていくのさ きみを残して 踊りだしたら視界が揺れる 織り成す世界は壮大なジョーク ぼくには冗談にしかきこえない 愛も正しさも一切君には関係ない きみは息をしている |
バースデイPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 吸い込む空気の秘密を 君は探っている 犬のように 誰もが忘れてしまった小さな呪文を僕は聴いた 赤ん坊の数学者 徹底的に神が嫌い 疑っていいよ 疑っていいよ あのネズミのおばけみたいに 「1、2、3、4、5、6、7」 オーケストラ、騒げ 今日は君のバースデイ 独立記念日も一緒に バイオリン、コントラバス、チェロ、ティンパニ、ホルン 血が流れた 鳴るよ トランペット 外でみんなが怒っている 傘をさす妄信者 奴らの目はただの鏡 そらしていいよ そらしていいよ ぜんぶ夢さ おばけみたいに 「1、2、3、4、5、6、7」 オーケストラ、騒げ 今日は君のバースデイ 独立記念日も一緒に バイオリン、コントラバス、チェロ、ティンパニ、ホルン 血が流れた 鳴るよ トランペット 「1、2、3、4、5、6、7」 オーケストラ、騒げ 今日は君のバースデイ 独立記念日も一緒に バイオリン、コントラバス、チェロ、ティンパニ、ホルン 血が流れた 鳴るよ トランペット |
船People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 夜は黒い 夜は深い 放送はこれでおしまい 住宅街 眠る気配で 子供が泡立つのさ 朽ちた灯台から船は出る 浮かぶ 浮かぶ 浮かぶ 消える 夜は黒い 夜は深い つまさきを浸し遊ぶ 土深く秘めた熱で 子供は気化していく 霧立ちこめる沖へ船は出る 浮かぶ 浮かぶ 浮かぶ 消える 石炭の臭いで犬が乾いた 霧の向こうでラッパが鳴り響くのさ 夜は黒い 夜は深い 放送はこれでおしまい 住宅街 眠る気配で 子供が泡立つのさ 朽ちた灯台から船は出る |
物質的胎児People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | まぶたおろして むをたべてみよう こころをなくして なくのはしないで 影をきりおとせ やわらかいメスで ふかさのない穴へと ほつれだした いとをたぐる くちのなかを舌がころがる あじわって あじわって たくらみをとかすように 蓮のはな ひらいた きかい からまる 聖なるあくびで ようふくとおどる からだはいらない 秘密の遺伝子 あんぜんなみどりむし 無重力 そのかんまんなアクロバット もつれだした いとをさぐる たちのぼるよ 色もかたちも まじわって まじわって たいくつをしのぐように いるか すべりこんだ 動物たちだまりこんだ みずの底で いしがけずれる 冷蔵庫のなかでひかる なにもみてはいない まなざし まじわって まじわって たいくつをしのぐように いるか すべりこんだ あじわって あじわって たくらみをとかすように 蓮のはなひらいた いつわって いつわって のどのおく はびこる根を なみだがしたたった うたがって うたがって あしもとのひえたかわを なにかがしたたった |
ベルリンPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | −レッドライト/グリーンライト ひと振りのインクで 夜は産まれる 飛び散るアルファベット カーテンと窓 深夜の追いかけっこ −レッドライト/グリーンライト 濡れた高速道路 無人の車 注ぎ込まれる 午前2時の友達 遠く離れた裸の秘密警察 明日には僕はここにいない −レッドライト/グリーンライト アンテナの代わりで逆さに傘を差す −レッドライト/グリーンライト ニヒリスト待っている 目の前を過ぎるアルファベット 撃つ −レッドライト/グリーンライト 濡れた高速道路 無人の車 注ぎ込まれる 午前4時の友達 遠く離れた裸の秘密警察 明日には僕はここにいない −レッドライト/グリーンライト アンテナの代わりで逆さに傘を差す 傘を差す 傘を差す 傘を差す ミニチュアの憂鬱に乗り込んで これが初めての単独飛行 このどこかできみに会えるかな 少しユーモアに欠けた引力の呪いから 人工衛星をすべて解き放ってみるよ リン、リン、リン はじめまして 未来からの僕の親友 雨のカーテンのなか 山火事が燃えている |
ペーパートリップPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 風が部屋に吹き荒れる まるで嵐 声を巻き上げ 目には見えないその強盗は 夜の庭に降りた はやく君を見つけなくては 渡り廊下行き交う亡霊 街に飛び散る光と闇 誰もいなくなってしまったら 君の肌に針を立てて 体のなか旅をするのさ 山を越え都市を抜け 虫歯の奥に潜む言葉 晴れた朝にモールス信号 僕ら鳥になったシーツの上 街に飛び散る光と闇 インクまみれの夢を見ようよ 空はなんて深い落とし穴だ 終わりのはじまりを見たいな 全部溶けてしまえばいいのに 1丁目から27丁目まで 街に飛び散る光と闇 インクまみれの夢を見ようよ 空はなんて深い落とし穴だ 終わりのはじまりを見たいな |
真夜中People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 今日の放送は終了したと そっけない画面のテロップ 遠くのクラクション サイレンの音 彼女の夜はやかましい 見えない虫が一匹 聞こえない声で質問攻めさ 彼女の夜はやかましい 理由を述べよと 執拗に 鳴り止まない囁きに 眠れそうにないなら 一晩じゅう一緒に起きていても いいよ 深夜のタクシー 気怠く流れる 国道 死神 鎌を振る ヘルツ博士のよどんだ眼に 真夜中のトロフィー 誰かがギターを弾いている もう うんざりだ 彼女の夜はやかましい 理由を述べよと 執拗に 鳴り止まない囁きに 追いつめられ壊れそうなら 一晩じゅう夜を傷つけても いいよ いいよ |
マルタPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 水圧に押されて割れた窓 星のようだ 石ころ 口にほおばって 「また間違った」って言った後にやったんだ 電飾で縛って吊るし上げて 3、2、1、目を開けて 海が干上がるまでは内緒にしておくよ 時計は止まったまま 朽ちた木馬 漂っている 火山のそば 通り抜けて 「また間違った」って言った後にやったんだ 電飾で縛って吊るし上げて 3、2、1、目を開けて 「また始まった!」って一斉に歓喜したい 鮮やかなバルーンを撃ち落として 罪は果たされた 海が干上がるまでは内緒にしておくよ |
見えない警察のためのPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 行列は続いた 青空を背負って 晴れた日僕らは滅茶苦茶なことをする 大きく渦巻く自転車置き場の海 口笛吹こうジェリービーン 大通りへ 相変わらずの点滅が刺さる 近所の薬局で洗剤買って それから僕はどうしたっけ 出口は君が盗んで口に隠した 僕に見つからないように 落下するアンテナ 休日の傍観者 市場に漂う消毒液の香り 破壊が始まる3秒前の笑顔 口笛吹こうジェリービーン 踊ろうね 相変わらずの点滅が刺さる 近所の薬局で洗剤買って それから僕はどうしたっけ 出口は君が盗んで口に隠した 僕に見つからないように ある朝 目醒めて 僕は重力をなくした 少し浮かぶ 君がホテルの窓から見上げて笑う もう世界は逃しはしない 探し物みつからない 踊ろうね それから僕はどうしたっけ 出口は君が盗んで口に隠した 僕に見つからないように 大丈夫さ 大丈夫さ 大丈夫さ 逃げられない |
みんな春を売ったPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | ゆうべ からだを売ってみたんだ こころを切り離すために フラスコのなかで一生を 過ごせたらいいな アルコールランプの照らす 混じり気なしの血液で それで自由になれたかな 天秤にかけてわかるかな 絶対にからだから逃げられないと 知ったきみは おかしくなってしまった おかしくなってしまった おかしくなってしまった さよならさ いつかきみも おとなになるよ 聞きわけのない おとなになるよ 未来はまるで泥のように横たわる まみれて泣いてるきみを横目に 人々は行く それで自由になれたかな 天秤にかけてわかるかな 最後にこころからにげてしまって さよならした まともなひとたちはみな まともなひとたちはみな まともなひとたちはみな 戦争へ行ってしまった 戦争へ行ってしまった 戦争へ行ってしまった さよならさ いつか君も おとなになるよ 聞きわけのない おとなになるよ |
木曜日 / 寝室People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 寝苦しくて目覚めたら豚が僕に馬乗り まったく神様のしつけがなってないな 夜のテント飛び出すとまっぷたつのミラーボール 中身 僕は知っていた これ誰かの夢だ! 日付のないカレンダー うごめく前頭葉 波打ち際 上陸する歌手 メガホン越しにオペラを歌いだした 堅く目を瞑ったら開かずのプラネタリウム 星を喰って 豚に喰われ 一日が終わる これ誰かの夢だ! |
ヨーロッパPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 君は両手を床につけた 居間の吹き抜けの10:00AM 革命に揺れるシチューの鍋 こんにちは 僕のいびつなひと 砂の上 浮かんでいるのは 白い背中 やがて世界が君のスカートに のみこまれる日を待っているのさ 君は両手を床につけた 暴動に荒れるチョコレート中毒 こんにちは 僕のいびつなひと 砂の上 浮かんでいるのは 白い背中 やがて世界が君のスカートに のみこまれる日を待っているのさ |
リマPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 食卓は無政府状態 騎士のカードが華を添える 記念撮影はセルフタイマー レンズは銃口みたい ハイ、チーズ! メリークリスマス 緊張しいなサンタクロース 写真の僕らは仮面をつけたまま パパは強いけど 欲望に勝てない たぶん明日も ギロチンが広場を分つ 子供の兵隊 行く 毎晩 元通りになったママの王国へ メリークリスマス 緊張しいなサンタクロース 写真の僕らは仮面をつけたまま パパは強いけど 欲望に勝てない たぶん明日も 仮面の子供は走る 聖なる山に分け入って 捕まえられるかな メリークリスマス 剥製のサンタクロース 写真のなかに人影はひとつもない メリークリスマス |
冷血と作法People In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | People In The Box | 埋め立て地を亀裂が走る 都市が歪む 放射能 黄砂 メーデー 放射網 黄砂 メーデー 改札は喘息を患っている 咳き込んでいる xとyとxとyとx xとyとxとyとx 君のことを耳にしたよ 元気でやってるみたいだね だけど みんなの知っている君じゃなかった 頭の外れた馬が叫ぶ 蹄 打ち下ろし 広場に集る警察 広場に集る警察 君のことを耳にしたよ 元気でやってるみたいだね だけど みんなの知っている君じゃなかった 記憶はコピー機のなかに まるで砂埃みたいだよ もう ここには既に 体はない 翼だけが空を飛ぶ 亀裂が走る 亀裂が走る 放射能 黄砂 メーデー 君のことを耳にしたよ 元気でやってるみたいだね だけど みんなの知っている君じゃなかった 記憶はコピー機のなかに まるで砂埃みたいだよ もう ここには既に 体はない 翼だけが空を飛ぶ 血迷って 血迷って 遂には生まれ変われたのかな 今の君はきれいだった |
レテビーチPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | むかし、むかし、君の名前が今と違っていた頃 太陽は夜の傷を消毒してくれる親戚みたい でも君は変わった メスをいれて傷を広げる 柔らかい君のおなかに ルビー色の夜がそこから溢れだす ここは楽園さ 頭上を超えて飛び込むスイマー達 水の無いプールへと そうさ、もう苦しいのはやめた! わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いやつを ひとつだけ 楽し過ぎて眠れない 広げた傷に潜り込む 僕は悪夢を書き換える ゼリー状の空気吸い込んで 浮かぶ楽園さ 頭上を超えて飛び込むスイマー達 水の無いプールへと そうさ、もう苦しいのはやめた! わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いやつを ひとつだけ 楽し過ぎて眠れない 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いのを ひとつだけ 楽し過ぎて わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 真夜中、僕らの味覚は最高潮に達している 異端の思し召し下る 聖者の仮装で 赤いアーチの出口塞いだら わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いやつをひとつだけ 楽し過ぎて わあ、わあ、わあ、わあ、わあ 甘い悪夢を見たいよ とびきりの長いのを ひとつだけ 楽し過ぎて眠れない |
レントゲンPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 朝焼けがいつも投げかけるエックスレイ 僕は一瞬だけいないはずの存在になる さあ虐殺のスタートだ 部屋を跳び出して行け 君が着飾った 晴れた屋上で 影が揺れていた 巨大な弧を描いて スカートの隙間から 飛行機が飛び立った ここから見下ろす鳥の群れ プールはただ脈打ち、ひるがえる 耳栓を外したら 大きな音の秒針にステップを 白昼夢が続きますように 白昼夢が続きますように すれ違うベビーカーでまた会おうぜ 花粉を吐き出す植物のようだ 人の叫び声 僕は黙り込む あの懐かしいスモッグだ ここは希望の国 ここはとても広い霊安室 白く目映い海のようだ 終わりかな?はじまりだよ こうして僕ら生れ変わるんだ 白昼夢が続きますように 白昼夢が続きますように すれ違うベビーカーでまた会おうぜ |
6月の空を照らすPeople In The Box | People In The Box | Hatano | People In The Box | | 雲の上 猫 唸りを上げていた 粘土の空 うごめいた 誰も耳を貸そうとはしないよ ラジオをつけ家を出る 新宿は大きな布に覆われて 緊急事態 僕ら逃げられない 雨が降っていた ネジが緩んだようなんだ 君は待っていた 僕は驚いた 密かに 神々しく、柔らかく、まんまるな死が もたらされるならば もうひとつだけ頭が欲しくなったんだ はじまりも終わりも同じ事だ 雨が降っていた ネジが緩んだようなんだ 君は待っていた 僕は吐きそうだ 光を空へ あのマンホールの向こうへ ねじれた傘のなかのメリーゴーランド 雨が降っていた ネジが緩んだようなんだ 君は待っていた 僕は吐きそうだ 光を空ヘ ネジが緩んだようなんだ 僕の背後に誰がいるか教えて? そっと |