LIVE REPORT

いつかの空蝉 ライヴレポート

いつかの空蝉 ライヴレポート

【いつかの空蝉 ライヴレポート】 『蝉祭 SEMI FESTIVAL 2022 東京編』2022年10月15日 at 下北沢SHELTER

2022年10月15日@下北沢SHELTER

撮影:浅香郁絵/取材:峯岸利恵

2022.10.22

The;Cutlery、VELDE、いつかの空蝉の3バンドが2022年に『響都』プロジェクトを発足し、“まだ知らない音楽に出会える場所”をコンセプトに、各バンドがホストとなるサーキットイベントを3公演にわたって開催。その第一弾として、いつかの空蝉主催『蝉祭 SEMI FESTIVAL 2022 東京編』(以下、セミフェス)が、10月15日に下北沢の5会場・下北沢 近松、SHELTER、WAVER、DaisyBar、LIVE HOLICにて開催された。この日出演したアーティストは、いつかの空蝉を含めて全40組。この規模での開催に至るまでには、きっと多くの苦労があったであろう。招聘されたアーティストたちは、そんないつかの空蝉のアツい想いをしっかりと受け止め、MCでそれぞれが抱く彼らへの感謝と敬意を告げながら渾身のライヴを繰り広げており、どこの会場に赴いても素晴らしいステージを観ることができた。

そんな一日を下北沢SHELTERにて締め括ったいつかの空蝉の阿部そら見(Vo)、たっちー(Gu)、クワヤマシュンスケ(Gu)、しろ(Ba)、元帥(Dr)の5人は、リハーサル時から気合十分な様子で、1曲目から感情を爆発させたアッパーチューンで迎えるのかと思いきや、“この曲から始めます”との合図でスタートしたのは「夢で逢えたら」。今はもうこの場所にいない“君”への想いと、その手を放してしまったことへの後悔を抱えて生きる今日を慈しむ歌詞をじっくりと、それでいて感情的に歌い上げるミディアムチューンだ。“今日はもうすぐ終わるけど、どんな一日だった?”という阿部からの問いかけは、単純にイベントがどうだったかという意味ではなく、“今日という一日の中で、あなたは何を感じ、何を得たのか?”という本質的な意味を宿したもののように聴こえた。

続く「PRAY」では、ドラムとベースがハードさと伸びやかさの双方を描き上げ、繊細さと疾走感を生み出すギターが、熱のこもったヴォーカルをフォローする。“バンドを結成してから、小さな縁がつながってつながって、今日ができています。今日、私は、恩返しのために歌う!”と力強く伝えた阿部は、まるで泣き出す寸前かのような昂ぶりを見せた。そんな感極まるアクトを目の当たりにしたオーディエンスは、その想いを一滴も零さぬように受け止め、じっと耳と心を傾けていた。セミフェスというイベントについて、“友達のバンドと面白いことをしたい”という想いから始めながらも、多くの人に力を借りながらここまで大きく成長できたことに対する感謝をステージからしっかりと伝えつつ、“こっから飛ばしますんで、よろしくね”という合図から、ソリッドかつエモーショナルなメロディーとサウンドに呼応してフロアーに拳が上がった「サカナ」と、強がりと本音の狭間における揺らぎと真っ直ぐに向き合ったエモーショナル&エネルギッシュなナンバー「unknown code」を続けてプレイ。“力貸してくれ!”という阿部の叫びに対して、オーディエンスは力強いハンズアップやクラップで応えると、彼女はここでも“ありがとう!”と礼を述べた。そういう素直さもまた、いつかの空蝉が信頼され、多くの仲間と共に大イベントを行なうことができた理由のひとつなのだろう。そして、本編最後には新曲「王様気取り」を披露! 阿部曰く“これが私の等身大”だという楽曲で、自分の人生は、自分の意志と足で歩んでいくものだというメッセージが込められたパワフルな最新曲で豪勢に本編を締め括った。

熱望されたアンコールでは、改めて感謝を告げつつ、“週末ですからね!”とハイテンションナンバー「スーパーフライデー」をプレイし、ステージをあとにしたいつかの空蝉。豪快で強気で、怖い者知らずのように見えて、周りの人への感謝と愛を決して忘れない。そんな彼らの性格がひしと伝わるライヴであり、温かさと信頼が成し得た素晴らしいイベントだった。

撮影:浅香郁絵/取材:峯岸利恵

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1.夢で会えたら

  2. 2

    2.PRAY

  3. 4

    4.unknown code

  4. 5

    5.王様気取り

  5. 6

    <ENCORE>

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