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ぼくのりりっくのぼうよみ ライヴレポート ライブレポート

ぼくのりりっくのぼうよみ ライヴレポート

【ぼくのりりっくのぼうよみ ライヴレポート】 『ぼくのりりっくのぼうよみ ラストライブ『葬式』』 2019年1月29日 at 昭和女子大学人見記念講堂

2019年01月29日@

撮影:川崎龍弥/取材:池田スカオ和宏

2019.02.01

ぼくのりりっくのぼうよみ(以下、ぼくりり)とは何だったのか?
ライヴ中やライヴ後も、それを深く考えていたーー。

振り返ると、ぼくりりのこの3年の活動は“実験”だったように映る。反響やリアクションはその効果測定であり、話題や炎上は調査資料のようにも今となっては思える。そして、その最期の実演や臨床実験が行なわれた。時は2019年1月29日、場所は東京・昭和女子大学人見記念講堂。2019年1月をもって“ぼくのりりっくのぼうよみ”を辞職する旨を公言し、“葬式”と題された今回のぼくりりのラストライヴは終始、厳かで荘厳であった。あえて総括的な内容にはせず、逆にここ最近の境地に至るまでをはっきりと集まった参列者の胸元に突きつけた感もあった、この日。結果、その実験の成果や作用は、永遠に残された命題のように、この日集まった者たちの今後へと託されたのだった。

この葬式への参列は入場時から始まっていた。入ってすぐに設置された献花台には彼の遺影が飾られ、開演までの間、ひとりひとりがそこに花を手向けた。また、場内正面の無人のステージはさながら聖堂であった。巨大な十字架がシンボリックに掲げられ、ろうそくが灯り、開演までの場内BGMにはパイプオルガンのバロック音楽が流れ、神聖で荘厳な雰囲気が場内を支配していた。こころなしか従来の彼のライヴに比べ場内の会話も少なく、多少の緊張感が漂うひんやりと感じるシチュエーションの中、じっとその儀式を、ある種の覚悟を伴って待っているようにもうかがえた。

突如インダストリアルでノイジーなSEが轟き渡る。気付けば十字架は消え去り、そこにぼくりりが遺書的なものを走り書きでしたためる映像が映り、ギター、ベース、ドラム、キーボード、マニュピレーターがステージに登場。そして、ぼくりりがステージ後方に設置された一段高い段より現れ、ラスト・オリジナルアルバム『没落』より「遺書」をラップしながら階段をゆっくり降りてくる。早くも情報量の詰まった彼独特のフロウと早口に言葉を転がすラップをマシンガンの如く場内に連射。躍動感があるサウンドなのに、場内の厳粛な雰囲気のほうが勝り、みな微動だにできない。《丹精込めて育てた偶像を 今日を持って破壊することに決めました》のリリックが信憑性を伴って我々を突き上げてくる。

続く「あなたの手を握ってキスをした」に移ると、その躍動感にダイナミズムが加わり、ワウとグリッチ音、妖しさを交えたサウンドにDJもスクラッチを加えていく。また、都会の雑踏の映像を挟み、たゆたうような「sub/objective」の際には、天に向かい手を伸ばすぼくりりの姿もシーン的には印象深かいものがあった。

ようやく観客が立ち上がったのは「CITI」からだった。スウィング混じりの同曲の中、華麗にフロウを回すぼくりり。同曲以降、歌に感情が宿っていくのを見た。リアルタイムで叩かれるMPCのドラムパットの上、ラップを乗せていった「Black Bird」では、ステージ設置の階段に座りラップ。この会場独特の高い天井にウィスパー混じりの彼独特のフロウが吸い込まれていった。

ステージのトーンが豹変したのは「二度と来ない朝」。シティポップやアーバンなミッドナイト感のあるサウンドとメローに歌う姿は、大人びた彼の側面が楽しめた。対して、アフターアワーズさを味合わせてくれたのは「断罪」。《心ごと丸裸にされて踏まれる》のフレーズは、まるで彼のここ数カ月の騒乱を想起させ、これまで以上にアクティブでシアトリカル、感情を込めて歌われた「人間辞職」では、やさぐれさも入り交り、場内をグイグイと惹き込んでいく。

再び映像がインサートされる。今度は風を感じさせる風景だ。以後は歌が映える曲が目立った。「Be Noble」の疾走感と躍動感のあるサウンドとともにライヴが走り出せば、「liar」では再度ライヴの色が豹変。ラテン混じりのサウンドがノリの良いグルーブを生み、ここでようやく会場の数カ所で手があがり出す。また、激しい雨の映像を挟み、折り返し地点では「僕はもういない」のグルービーさが会場を揺らした。そして、ステージがまばゆさを発したのは「For the Babel」から。レーザーが飛び交う中、激しくスリリングな曲が転がり出す。

映像の雨はますます強くなる。後半に入ると弦カルテットが加わり、荘厳さと優雅さが各楽曲に加わっていく。アカペラで「輪廻転生」を歌い出した際には、歌と楽器の重なりにて永遠性を感じさせてくれ、「曙光」がライヴの激化に拍車をかける。そして、私がこの日もっとも美しさを感じたのは、同曲後半に突如現れた長い無音の部分。そこはまさにサイレント。緊張感が漂いひんやりとした雰囲気の中、誰ひとり物音を立てることなく一切の音が消えた尊くも神聖な瞬間がそこにはあった。

ストリングスも加わり原曲とはまた違った側面を楽しませてくれた「没落」を経て、最後は「超克」。彼の活動...いや、実験の最終地点は、昇華や凪の如く荘厳に神聖へと辿り着いた。最後はリリックテープが舞い降り、お辞儀をし、一切振り返えることなく、無言のままぼくりりは、現れたのと同じくステージ2階から背を向けたまま消えた。それはまるで動物が自分の死期を悟ると自ら姿を消す逸話を想い起させた。

但し、まだライヴは続いた。演奏こそ止んではいたが、激しい落雷と激雨の音、荘厳なオルガンが鳴り響く。そして轟く雷鳴。その後、青い光に包まれ露わにされたステージは無人。メンバーたちも消え誰もいなくなっていた。そして、そこには初めから何ごともなくずっとそこに掲げられていたかのように巨大な十字架が再び現れていた。なんかここに辿り着くまでに、ここまでの活動があったかのような見事な幕引きだった。
終わって一瞬間が空き、みながようやく自我を取り戻すかのように拍手を無人のステージに贈る。私を含む会場中のこの拍手は一体誰に向けられたものだったのだろう? 贈る相手はもうすでに存在していないというのに...。

ぼくりりは消えた。しかし、逆に我々には課題が残り、その実験の成果発表や結果も委ねられた。今度は我々が彼が遺した歌や3年という活動を通し、ぼくりりが何を伝え、何を遺し、何を我々に植え付けていったのかを見つけ出さなくてはならない。その作用や結果、成果は今はまだ出ていない。それらが判明し、現れるのは、いつになるのだろう? 今は彼の遺した作品を繰り返し聴き、一刻でも早くその実験の結論を導き出したいと思っている。

撮影:川崎龍弥/取材:池田スカオ和宏

ぼくのりりっくのぼうよみ

神奈川県横浜市在住の男性アーティスト。“ぼくのりりっくのぼうよみ”“紫外線”名義で動画サイトに投稿を開始。高校2年生だった2014年、10代限定オーディション『閃光ライオット』に応募、ファイナリストに選ばれる。そして、主催のTOKYO FMによる人気番組『SCHOOL OF LOCK!』でその類まれなる才能を高く評価され、一躍脚光を浴びることに。2014年5月、4曲入りEP『Parrot's Paranoia』を配信リリース。2015年12月、高校3年生にして1stアルバム『hollow world』で初のCDリリース、メジャー・デビューを果たす。ほかのトラックメーカーが作った音源にリリックとメロディーを乗せていくラップのスタイルをベースとしつつ、その卓越した言語力に裏打ちされたリリック、唯一無二の素晴らしい歌声を聴かせ、高校生というのが信じられないほどのラッパー/ヴォーカリストとしての表現力を持つ。日本の音楽シーンを震撼させる強烈な才能は、各メディアから高い評価を集めている。2016年5月には『VIVA LA ROCK 2016』に出演。

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