LIVE REPORT

阿部真央 ライブレポート

阿部真央

『5th Anniversary 阿部真央らいぶ2014@日本武道館』

2014年10月10日@日本武道館

撮影:緒方秀美/取材:石田博嗣

2014.10.28

2014年は“5th Anniversary”を掲げ、対バンツアー企画や『シングルコレクション19-24』のリリースなどを精力的に行なってきた阿部真央。その活動の最後を締め括るのが、自身初となる日本武道館公演である。当然のようにデビューから5年間の集大成的なメニューが用意され、お祝いムード、お祭りムードも含め、ソールドアウトとなった会場にはアットホームな空間が生まれていた。また、“武道館だからって特別なことはしたくない”と本誌のインタビューでも語っていた通り、派手なセットがあるわけでもなく、武道館の空間を最大限に活かした大きなステージにはLEDビジョンがある程度。スタイルとしては通常のライヴと何ら変わらない。ただ、違う点は前述したように、この5年間の集大成的なセットリストだろう。いや、5年どころか、それこそ阿部真央の全てを曝け出したライヴだったと言える。

爽快なアッパーチューン「Believe in yourself」が幕開けを飾ったライヴ。ポジティブなメッセージであり、痛快なバンドサウンドが観客の高揚感を焚き付ける中、ゆっくりと会場を見渡しながら歌っている彼女の姿が印象的だった。武道館という特別な場所で歌っていること、目の前の満杯のファンに支えられている自分...さまざまな想いを噛み締めているのだろう。しかし、それは一緒になって歌っているオーディエンス側も同じで、武道館で歌っている阿部真央に対して、武道館で彼女の楽曲たちを聴いていることに対しても高揚感を抱いていたと思う。少なくとも自分はそんな感情を胸に抱きながら、この光景を見ていたし、一曲一曲にいろいろな想いを重ねながら、時にフラッシュバックさせながら、繰り出されるタフなバンドサウンドに体を預けていた。

“いつものようにおちゃらける余裕がないほど緊張しております“と、今の心情を吐露する阿部真央。しかし、いざ歌い出せば、力強い歌声を武道館に轟かせ、『シングルコレクション19-24』からのナンバーを中心に、「マージナルマン」「15の言葉」などの懐かしい楽曲も織り交ぜ、客席を盛り上げ、会場の一体感をより強固なものにしていく。誤解を恐れずに言うならば、そこに綴られているのは男性からすると“愛おしさ”と“重さ”という紙一重の間を行き来するような女性ならではの本音の想い。それを吐き出すように、叫ぶように、願うように歌い上げ、会場ごと聴く者の胸を震わせる阿部真央のヴォーカルはさすがだった。また、そんな中で感じていたのは、集大成を彩る楽曲たちから滲み出てくる阿部真央像だ。真っ直ぐなまでに正直なところはもちろん、不器用さ、弱さ、痛さ...そういうものまでもがひしひしと伝わってくる。それだけ楽曲に自身が投影されているということだ。だからこそ、言葉のひとつひとつが聴き手の心を掴み、前に進み出す勇気も与えのであり、だからこそ、こんなにもファンひとりひとりとつながって、この温かい空間を作り出しているのだと実感した。

そんな空間をシェアする全員が思いっ切り弾けた「ロンリー」で本編が終了すると、LEDに“History of Abe Mao”と題し、2009年12月3日の大阪umeda AKASOをはじめ、2010年4月8日のSHIBUYA-AXや2013年12月16日の東京国際フォーラムAなどのライヴ映像が矢継ぎ早に映し出される。最後に2010年3月9日の地元・大分TOPSでのMCシーンとなり、自分のことが嫌いだったと語る当時の阿部真央。しかし、歌うことでいろいろな人と出会って、20歳になってやっと自分を認められるようになったと言葉を続ける。今、彼女は24歳。来年の頭で25歳となる。ダブルアンコールのMCでも“みなさんがいるからこそ私は頑張れるし、たくさんの人に育てられて、たくさんの人に支えてもらった5年間だったと思います”と感謝の気持ちを述べていたが、今も変わらずファンの存在が彼女の支えとなっていることは、今日の光景を見れば一目瞭然だ。また、“この武道館が特別なモチベーションになります。次の10周年に向けて、ものすごい力になると思っています”とも言っていたように、この光景が彼女のさらなる支えになっていくことも想像に容易い。

本公演の最後を締め括ったのは、“武道館でこの曲が歌えるとは、母親もびっくりしていると思います”と披露された「母の唄」。アコギを掻き鳴らしながら高らかに歌う彼女の姿を幾本ものスポットライトがとらえ、その凛とした歌声が会場中に響き渡る。阿部真央の始まりの歌であり、音源化しないとも豪語している、ライヴでしか聴くことができない同曲。この曲を武道館という場所で聴けることに特別な想いを抱いていたファンも多かったことだろう。約3時間に及んだ濃密なライヴは、阿部真央はもちろん、ファンにも確かなものを刻み込んだと言える。そして、アンコールのMCで来年3月より全国ツアーを開催することも発表されたが、本公演の終演と同時に、次なる10周年へのスタートが、この場にいる者全員で切られたことも言うまでもない。
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