翻訳機People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | ぼくはきみの翻訳機になって 世界を飛びまわってみたい 高い空を斧でまっぷたつに 箱のなか震える心臓 カーテン揺れる 踊る光 ぼくはきみの気高さを掲げ 恥じ入る彼らを見てみたい どこにだって友達はいるよ 誰もぼくらを知らないけど あのひとごみのなかから きみのうまれた街を繋ぐ 歌を誰が歌うのさ 静けさが息を荒げる 電話の向こうで 世界中によくある話は 剥製のように呼吸がない かつてきみは愛した機械で 命を吹き込もうとしたけれど 誰も耳を貸しはしない あのひとごみのなかから きみの育った街を繋ぐ 歌を誰が歌うのさ それはもうすでにそこにあるよ きみはどこへ行ったの 言葉だけ残して きみはどこへ消えたの 風だけおこして きみはどこへ行ったの あのひとごみのなかから きみはうまれた街を失う 歌を誰が歌うのさ 静けさが息を荒げる あのひとごみのなかから きみのうまれた街を繋ぐ 歌をぼくが歌うのさ 双眼鏡をのぞいたなら きみはそこにいる ぼくが飛ばす飛行機のなか 横たわるきみの席はファーストクラス 燃料は楽しかったこと 悲しかったことのせめぎ合い 悲しみには終わりがないね 終わりがないのは悲しいからね ぼくはきみの翻訳機になって 世界を飛びまわってみたい 悲しいね 悲しいね 悲しいね ときどき 楽しいね |
影People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | ピエロが千人 七色 とび散る影 挨拶を交わしてあたりを見渡せば ひと足遅かった すでに誰もが別人 ピエロが千人 七色 とび散る影 タイガの果てまで 冷たい青の向こうへ 朝と夜の境を汗で溶かしていけ 春が夏を捜している 乗り物を乗り継ぎ続け ピエロが千人 七色 とび散る影 七色に 影もかたちもちぎれそうだよ 爛々 爛々 光る頭のなか 映画みたいで そうではない 夏の青い日、は ポケットのなかに隠していけよ 鶯も百舌も雲雀も くちばしを広げた ピアノ線に挟まれ 餌付けを待っている 味わいたいものを味わうがいいよ ピエロは肉を食べる 知性は口をつぐむ ピエロは肉を食べる 知性は口をつぐむ 爛々 爛々 光る頭のなか 映画みたいで そうではない 夏の青い日、は ポケットのなかに隠していけよ ピエロが千人 七色 とび散る影 |
手紙People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 聴こえるかい? 葉っぱを光がつらぬくよ 聴こえるかい? 地中深く伸びる根の音 樹々の隙間を 草がもらす泡がのぼる 聴こえるかい? 虫の背中 焦がす陽の音 聴こえるかい? ドアからとびだす子供たち 竦むきみを 駅のホーム 風が連れ去る 晴れた日に それはそれは昔のお話 きみはいつしか変わってしまった ひとは居場所を離れていく 音楽が手を離れていくように 手紙が降ってくるよ はらり はらり 空から 手紙は降り積もるよ きみは気づいていないけど 聴こえるかい 人波で倒れこむきみを 聴こえるかい あれは演技だと誰かがいった 膝をついた 横断歩道 風が連れ去る 晴れた日に それはそれは同じお話 きみはちっとも変われなかった ひとが居場所を守っている 音楽が手のなかで光るように 手紙が降ってくるよ はらり はらり 空から 手紙は降り積もるよ きみは気づいていないけど |
さまようPeople In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 出口のない世界を 泳ぐ魚 ミッドナイト 川沿い染まった 星座と提灯 歩きなれた道路が 柔らかく牙を剥く いつだって同じさ 痛みさえどこかよそよそしい 少女は理由もなく街をさまよう 少年は後ろ姿を見失う きみは暗闇のなかにいて そろそろ目がなれてきたころさ いちばん似合う服を着て どうか出ておいで 話があるよ 外れない仮面を 素顔というなら コンクリート 雨粒の模様は 深夜の句読点 少女は理由もなく街をさまよう 少年は後ろ姿を見失う きみにわからないはずはない 利用された誰かの孤独を 理由に惑わされていても 彼女を守るのはきみだけの使命 きみは暗闇のなかにいて そろそろ目がなれてきたころさ いちばん似合う服を着て どうか出ておいで 話があるよ 壊れた傘 投げだして 雨のなかひとが踊るよ 濡れて隠れた泣き顔も きみの知らない陸つづきの素顔 少女は理由もなく街をさまよう |
花People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | ここは失われた未来を映す網膜 時間に運ばれた砂にまみれたキッチン 一億年前に墜ちた柔いヘリコプター たった一滴の水で 今日が動くよ 色彩よみがえれ プールに散らばり浮かぶ 子供たち 赤、白、黄色 靴のなか びしょぬれさ 真っ青な風 渦を巻く 乱れたノート なぐる文字 呼び鈴は誰も出ない 手のひらに入道雲 風景はそこでおわり 灯りがついたのさ 空っぽの面会室に チェスボードはまるで古代の遺跡みたい 勝負の途中消えた声はどこへいった? たった一滴の水で 景色が変わるよ ざわめきよみがえれ プールに散らばり浮かぶ 子供たち 赤、白、黄色 靴のなか びしょぬれさ 真っ青な風 渦を巻く 乱れたノート なぐる文字 呼び鈴は誰も出ない 手のひらに入道雲 風景はそこでおわり 青年がつばを吐き 老人が腰を曲げ 女は占いに夢中 黄昏は金色に 風鈴がひとつ鳴る 涙のなかからならみえる 未来を失う未来も 来ることを忘れないでね |
おいでよPeople In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 重い荷物かかえて帰る ぼくはゆうれい そばにいたいよ ぼくのゆうれい そばにおいでよ 青い窓に白い空 ぼくはゆうれい そばにいたいよ ぼくのゆうれい そばにおいでよ |
馬People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 蒸気のなかから もてあましている指をのばして 星座をほどけ 食卓ぜんぶ 星で汚せ 馬を駆る夢をみた 砂漠を散らせ 食卓ぜんぶ 砂で汚せ 馬を駆る夢をみた 赤い馬を放て 赤い馬を駆れよ ハイヨー ハイヨー 赤い馬を駆れよ 蒸気のなかから もてあましている指をのばして 言葉をほどけ 食卓ぜんぶ 声で汚せ 馬を駆る夢をみた 赤い馬を放て 赤い馬を駆れよ ハイヨー ハイヨー 赤い馬を放て 赤い馬を駆れよ ハイヨー ハイヨー 赤い馬を駆れよ 勇敢な馬よ 芯へと走れ 筒を抜けて 核へと走れ 管を抜け |
もう大丈夫People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 知っているよ 知っているよ きみはいま大丈夫じゃない じぶんでいうから なおさら なおさら 知っているよ 知っているよ きみはいま大丈夫じゃない 笑顔でいるから なおさら なおさら もう大丈夫さ もう大丈夫さ もう大丈夫 もう大丈夫さ 知っているよ 知っているよ きみはいま大丈夫じゃない じぶんでいうから なおさら なおさら もう大丈夫さ もう大丈夫さ もう大丈夫 もう大丈夫さ こころと顔は離ればなれ 思い出はきみを変えていくよ 束の間の連続にしたって 痛いの痛いの飛んでいかない まとわりつく かわるがわる ぞっとする空虚 身にまとって 楽しくもなく笑うきみは 氷のように美しい もう大丈夫さ もう大丈夫さ もう大丈夫 もう大丈夫さ なにがあのひとにおこったんだと みんなが首を傾げている なにひとつおこっていないよ ただ生きているだけ 電話くれてありがとう 心配なんかしてくれて すべて見透かし笑うきみは 氷のように美しい もう大丈夫さ もう大丈夫さ もう大丈夫 もう大丈夫さ |
あの頃People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 子供は風の子 永遠の休日を 空想より遠い あの海へ あの夏へ 帰るよ 誰もがまともなふりをしている 太陽がうたうから 笑うから 大人は神の子 海にペンを走らせる 息を吹きかけて 揺らせよ 漂うヨット みて 誰もがくるったふりをしている 太陽がうたうから 笑うから 日々が消えるのは こわいから 誰もがまともなふりをしている 誰もがくるったふりをしている 太陽がうたうから 笑うから |
月People In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | きみが息を吸うときにぼくが吐くよ ふたりは一対の呼吸 だから夜に見る夢は違うけれど 朝には 未来に 溶けるのさ それはいつだって扉から出入りはしない ノックもせずに窓からやってくるのさ 今日も誰かを蝕む悲しみを ひとは食べておとなになる おお ぼくの話す言葉は同じだけど こころがわからなくなったよ 通じ合わない言葉に意味は無いね やめよう ドライフラワーに水をあげるのは おお 甘いお菓子でみんな逆上せあがってしまったんだ あの口調にはなにかおかしいところがあった たとえ優しさに返答は無くても 胸をはれよ 雲のない夜にきみは駆け出していく 苦しみから解き放たれて 月が欠けていく もうすぐ姿をなくす でもみえるよ 寝息にあわせ揺れる それはいつだって扉から出入りはしない ノックもせずに窓からやってくるのさ 今日も誰かを蝕む悲しみを きみはのみこんだ のみこんだ のみこんだ おおきなくちをあけて おおきなくちをあけて おおきなくちをあけて のみこんだ おお |
風が吹いたらPeople In The Box | People In The Box | Hirofumi Hatano | People In The Box | | 風が吹いたらぼくは行くよ つぎの路地まで 決して嘘つきなんかじゃないよ いつか信じてくれるかな にぎやかな通りでも 人影はないさ 隠れた人々 合図ひとつで 溢れる顔 迎える声 風が吹いたらぼくは行くよ つぎの路地まで きみは嘘つきなんかじゃないよ みんな信じてくれるかな 灯り消してぼくを待つ この部屋を飾って 楽しい衣装でクラッカー構え そうこうしているうちに 10年たった 街はいたずらがとても好きだ 笑みをころして きみに居留守を決めこんでいる ずっと前から 風が吹いたらぼくは行くよ きみを迎えに 誰も嘘つきなんかじゃないよ いつか信じてくれるかな みんなここへおいで すべておいておいで みんなここへおいで すべておいておいで |