言葉や想いが全部、間違わずに届きますように

春の船、それからひかり溜め込んで
ゆっくり出航する夏の船
(堂園昌彦)


 こちらは歌人・堂園昌彦さんの作品です。たっぷり溜め込んだ光を乗せて、まだ見ぬどこかへ出航する夏の船…。輝く水面の眩しさまで伝わってきそうですよね。さて、今日のうたコラムではそんな一首にも通ずる、夏の幕開けの新曲をご紹介いたします。2019年7月17日に“WANIMA”がリリースしたニューシングル『Summer Trap!!』収録曲!

迷いを束ねて 夏の幕開け
悲しみ脱ぎ捨て 何度も誰よりも照らせ太陽
狙いを定めて 夏のどこかへ
予報通り晴れたらいいのにな

だけどまだ

思いを集めてあの日も朝まで
見えない明日を何度も今でも探すヒカリを
願いを叶えて もっとはみ出せ
期待外れだって戯けて笑ってた
「夏のどこかへ」/WANIMA


 広瀬すずさん出演の『三ツ矢サイダー2019 CMソング』に起用されているこの歌。冒頭の短歌の言葉を借りれば、歌詞にはまず、ひかりを溜め込んだ夏の船の“出航前”の心境が描かれております。伸び続けた髪のように心に絡んでいた<迷い>。幾重にも着込んでいた<悲しみ>。ずっと自分だけどこへも行けないような不安もあったのでしょう。

 でも、気持ちがほんの少し前に進めたとき、自分にとっての季節が動き出すのです。まだ<迷い>をバッサリ切ることはできないけれど、せめてグッと<束ねて>みて。重たい<悲しみ>は<脱ぎ捨て>身軽になって。ついに<夏の幕開け>を己の胸に告げ<夏のどこかへ>と出航するのです。とはいえ全てが<予報通り晴れ>にはいかないのも現実。
 
 そんなとき、お守りに、支えに、チカラになるのが、これまで“溜め込んできたひかり”ではないでしょうか。朝まで<思い>を集めたあの日も。何度も<見えない明日>のなかに希望を探し続けたこれまでも、今も。願いも。期待外れも。それでも<戯けて笑って>ここまで来たことも。すべてが“出航”のための<ヒカリ>になるのだと思います。

oh~痛みを知らない
アイツに手を振って
oh~魔法が今解けてゆく
苦しみの中に迎えにいこう
「夏のどこかへ」/WANIMA


 そして、出航のとき。<痛みを知らないアイツ>とは、わかりあえなかった誰か。自分を傷つけた誰か。痛みを知らなかった過去の自分とも捉えられます。いずれにせよ<アイツ>は自分に<迷い>を与え<悲しみ>を着込ませる<魔法>をかけていた相手でしょう。しかし<手を振って>旅立った今、その<魔法>はたちまち<解けてゆく>のです。

胸が弾けて
透き通る青空
ココロの地図広げ
やりきろうぜっ、ジブンらしく。

この歌は君がこんな僕にくれた
言葉や想いが全部 間違わずに
届きますように
「夏のどこかへ」/WANIMA


 すると<胸が弾けて>、あの<迷い>も<悲しみ>も<シガラミ>も雲が散ってゆくかのように胸の内から出てゆきます。見上げれば、瞳に映る<透き通る青空>。広げれば、無限の可能性に満ちている<ココロの地図>。WANIMA「夏のどこかへ」は、スカッと晴れたわたしたちの胸に<やりきろうぜっ、ジブンらしく。>とメッセージを放つのです。
 
 また、この歌はかつて<君がこんな僕にくれた>歌でもあるんですよね。きっとその<言葉や想い>こそが<僕>の<夏の幕開け>のきっかけだったのでしょう。そして今度は<僕>がそんな希望のバトンを「夏のどこかへ」届けにゆくのでしょう。この曲を聴くあなたに、どうか<言葉や想いが全部 間違わずに 届きますように>…!

◆紹介曲「夏のどこかへ
作詞:KENTA
作曲:KENTA

◆ニューシングル『Summer Trap!!』
2019年7月17日発売
WPCL-13063 ¥1,400(+tax)

<収録曲>
1.夏のどこかへ
2.サンセットストリップ
3.GONG
4.Mom