すべてはいつかは終わるでしょう、そのときまで目一杯、息を吸おう。

 女性シンガーソングライターの“ヒロネちゃん”が、2017年6月21日に3rdアルバム『ゆめのゆめ』をリリース!今作のコンセプトは、日常と宇宙です。わたしたちが生きてゆくなかで抱く、悲しみや切なさや寂しさ、朝起きたときの虚無感、眠れぬ夜の孤独…。そういった感情が、彼女の描く宇宙世界とリンクし、美しい景色となって見えてくるような楽曲揃いとなっております。
 
 まず、アルバムタイトル『ゆめのゆめ』にはどんな意味が込められているのでしょうか。辞書で調べてみると、夢の中で見る夢、夢のまた夢、つまり非常に“儚い”言葉だそうです。また、夢の中で夢を見るという現象には、客観的に自分自身を見つめたいという気持ちが現れているんだとか。とくに、恋愛が上手くいってなかったり、失恋直後のダメージが大きかったり、心が疲れきっているときにこのような夢を見ることが多い模様。

もう溶けない こころ こおりのなか
四六時中 かんがえていました

もう会わない つきはなしてみた
はるか宇宙 飛べない飛行士

きみのいない 宇宙にきたのに
青い地球が輝いていてさ
きみのいない世界 一日もたず
きみに会いたい きみに会いたくなるんだ
「こおりのなか」/ヒロネちゃん

 たとえば、アルバムの入口となる「こおりのなか」の主人公もまた、大切な人の愛の温もりを失ったことで<もう溶けない こころ こおりのなか>状態です。おそらくこの歌にとっての『ゆめのゆめ』とは、想像した“宇宙という夢”のなかで、もう一度<きみに会いたい>という“叶わない夢”を見ることでしょう。そして、<もう会わない つきはなしてみた>って結局、自分は<きみのいない世界>じゃこんなにも寂しいんだという事実を、どこか冷静に眺めているように感じますね。

きみともぐった 布団の宇宙
これは終わりの夜

真夜中のブラックホールにいこう
飛び込みたいよ 足がすくむけど
生きているうちに きみがきみのうちに
あたしをさらって すべてを飲み込んで
「ブラックホールの夢」/ヒロネちゃん

きみとふたりで地球をみにいこうよ
綺麗なもので ちゃんと泣きたいの

きみとふたりで終わりをみにいこうよ
綺麗なものはなんで悲しいの
「泡沫の春」/ヒロネちゃん

ねえ トゥナイト 内緒で踊りましょう
瞬く銀河の中 泳ぎましょう
ねえ すべてはいつかは終わるでしょう
そのときまで目一杯 息を吸おう

思い出せない夢みたいにならないように
「思い出せない夢みたいに」/ヒロネちゃん

 いずれの曲にも<布団の宇宙>、<真夜中のブラックホール>、<ふたりで地球をみにいこう>、<瞬く銀河>などの“宇宙という夢”が登場します。また、必ず“終わり”という言葉が綴られているところにも注目です。このアルバムは恋愛の終わりを描いた「こおりのなか」で幕を開けましたよね。私たちはすでに冒頭で、ヒロネちゃんから<すべてはいつかは終わるでしょう>というメッセージを提示されているのだと思います。
 
 だからこそ、収録曲の主人公はみんな“終わり”を踏まえた上で、大切な人と今“宇宙という夢”のなか、目一杯の“素敵な夢”を見たいと願っているのではないでしょうか。そして、そんな自分を客観的に眺めることで、景色や感情をしっかり刻んでいるようにも感じられます。そうすることで<思い出せない夢みたいにならないように>にしているのかもしれませんよね。
 
 このように、今作は1曲1曲から『ゆめのゆめ』というタイトルを背負ったアルバムゆえの儚さ、そして瞬間を生きる強さや美しさが伝わってくるんです。尚、歌ネットでは全歌詞の先行掲載がスタートしておりますので、まずは是非ヒロネちゃんの言葉を堪能してみてください。

◆3rdアルバム『ゆめのゆめ』
2017年6月21日発売
MKKS-5 ¥2,300

<収録曲>
1 こおりのなか
2 思い出せない夢みたいに
3 ワンダーテンダー
4 ブラックホールの夢
5 泡沫の春
6 アイニー
7 ふつう
8 ほうき星
9 ハロー青
10 小宇宙
11 浴槽プランクトン
12 渦
13 スロウパレード