奥華子

いつでも貴方なら大丈夫だと思ってた、馬鹿だよね…。

誰にも遠慮はいらないの。
なんでも言葉にして伝えないと。
どんな小さなことでも。
幸せが逃げてしまうよ。
(窪美澄『よるのふくらみ』より引用)

 5月18日は“五(こ)十(と)八(ば)”の語呂合わせから、ことばの日と言われております。そこで冒頭では、言葉にちなんだ一節を引用してみました。言葉は、伝えることでその日を動かすかもしれない力を持っています。しかし逆に言えば、伝えなかったばかりに、救えたはずの何かを失ってしまうことも多いのです。みなさんにも、あとから気づいて、あぁ間に合わなかった…と後悔した経験、あるのではないでしょうか。
 
 今日のうたコラムでも、大切な言葉を大切な人に伝えなかったことで、幸せを逃がしてしまった主人公たちの歌をご紹介いたします。2017年5月17日、約1年半ぶりに“奥華子”がリリースした9枚目のフルアルバム『遥か遠くに見えていた今日』に収録されている新曲です。声だけで泣けるシンガーソングライターとも称される彼女。今作には、言えなかったこと、言わなかったこと、言いたかったこと、言いたいこと、その切ないすべてが詰まっているんです。

私を困らせるのも 傷つけるのも いつもあなただった
大事なことは二人だけ 心の中に見つけられたね

会うたびに苦しくなってた
会いたいと言えなくなってた
あなたの好きな私にはもうなれない

どんな時も忘れないでね
愛した日々がここにあったこと
どんな時も笑っていてね 
あなたの笑顔も あなたの背中も
すべてが愛しかった
「彼女」/奥華子

 まず「彼女」は、女性側から別れてゆく心情を描いたラブソング。<あなたの好きな私にはもうなれない>から“あなたの彼女”という役を自ら降りたのでしょう。このカップルは、<大事なことは二人だけ 心の中に見つけられた>時期があったゆえに、お互いどこか「言葉にしなくてもわかるよね?」という気持ちを抱いていたはず。でも、時が経つにつれ<会いたいと言えなくなってた>私。それに気づけなかった彼。そして、心に取り返しのつかない距離ができてしまいました。もしも“大事なこと”を言葉にしてもっと早く相手に伝えていたなら、違う未来が待っていたのかもしれませんよね…。

君が僕に残した物は 使いかけの化粧水と
読み終わった雑誌の山と テーブルの上の水色の手紙

どうしていつも君は一人で決めてしまうんだろう
僕ならばきっと平気だと思ってるのかい?
何が物足りないんだよ 何が優しすぎるんだよ
君の文字を握り潰し 部屋を飛び出した

Rainy day いつか晴れると知っていても
Rainy day 今はただ雨に濡れたい
野良猫みたいに道を横切っても
もう誰も僕を探しはしないんだ
「Rainy day」/奥華子

 一方、新曲「Rainy day」では、手紙で女性に別れを告げられた男性の心情が描かれております。なんだか「彼女」の“あなた”サイドの気持ちも伝わってくるようです。彼女が「言葉にしなくてもわかってよ!」と思っていたとしたら、彼は「言葉にしてくれないとわからないよ!」というモヤモヤに苦しんでいたのではないでしょうか。また<どうしていつも君は一人で決めてしまうんだろう>とも綴られていることから、二人には“いつも”言葉が足りていなかったこともわかります。だからこそ<何が物足りないんだよ 何が優しすぎるんだよ>と、別れの原因も掴めないままに振られ、ただ悲しみに濡れることしかできないのです。

あなたが去年の誕生日にくれた時計を見るたび
悲しくなるから捨ててしまおう
そんな風に気持ちも捨てられたら
憎むくらい嫌いになりたい 
そしたらきっと楽だったよね
最後まで優しい顔した あなたはずるいよね

忘れる勇気も強さも全て私にはいらないから
だからもう一度 最後に一度 
その手に触れたい あなたに会いたい

誕生日じゃなく 記念日でもなく 何でもない毎日に
あなたがいてくれる
ただそれだけで本当は幸せだったのに
素直になれずに 優しくなれずに 後回しにしてたのは
いつでも貴方なら大丈夫だと思ってた 馬鹿だよね
「365日の花束」/奥華子

 そして「365日の花束」で描かれているのは、毎日毎日大切な人がそばにいてくれる幸せに気づけず、恋を失ってしまった後悔。優しい相手だったから<いつでも貴方なら大丈夫だと>たかをくくり、大事なことを言葉せずに後回しにする日々に甘えてしまっていたのでしょう。その結果、幸せは逃げてしまいました…。ただ、彼女にはまだ<もう一度 最後に一度 その手に触れたい あなたに会いたい>という伝えたい想いがあります。言葉は、その日を動かすかもしれない力を持っているもの。今度こそ素直に伝えてみることで、この物語の続きは変わるのではないでしょうか。
 
 いえ、「365日の花束」に限らず、「彼女」や「Rainy day」の主人公たちも“言葉”次第で、これからの物語が変わる可能性が十分にあります。一度逃がしてしまった幸せをもう一度、掴むことはできるような気がします…!と、そんなことも考えながら奥華子のニューアルバム『遥か遠くに見えていた今日』を聴いてみてください。大事な人に伝え損なっている、大事な言葉、ありませんか…?

◆New Album『遥か遠くに見えていた今日』
2017年5月17日発売
【初回限定盤】 PCCA-04535 ¥3,500(tax in)
【通常盤】 PCCA-04536 ¥3,000(tax in)

<収録曲>
1 Rainy day
2 恋のはじまり
3 愛という宝物
4 プロポーズ
5 彼女
6 365日の花束
7 キミの花
8 ほのぼの行こう
9 思い出になれ
10 最後のキス
11 Mail
12 アイスクリーム
13 スタンプラリー
14 遥か遠くに
発売である5月17日には、地元・津田沼にて発売記念のフリーライブを行い、ALに収録された新曲『遥か遠くに』を含む5曲を披露!
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