離れ離れになれば、この景色はどんな気持ちで見えるんだろう…。

どちらの友人とも、最近は全然会うことがない。
会わなくてもかまわない、と思える類の友人で、
私は彼らが世界のどこかで
ちゃんと生きていることに、
たぶんつねに支えられている
(江國香織『泣く大人』より)

 作家・江國香織さんのエッセイ『泣く大人』に綴られていた言葉をご紹介いたしました。生きていく上で“別れ”というのは必ず訪れるものですよね。まず学生の方なら“卒業”がありますし、大人になっても様々な理由で身近な人となかなか会えない関係・距離になることは多々。しかし<最近は全然会うことがない>という状態でも、その大切な人と過ごした時間や思い出、そして<彼らが世界のどこかでちゃんと生きていること>は、たしかに自分の“今”を支えるものになるのでしょう…。
 
 今日のうたコラムでは、そんな前向きな“別れ”をテーマに描かれた新曲をピックアップ!札幌在住シンガーソングライター・佐藤広大の「スノーグローブ」です。彼は、地元・札幌を拠点に活動を続けていくうちに、順調にいかない日々を支えてくれた仲間や地元の人たちの愛に気づき、感謝、恩返しを芯として聴く人の心を両手でほぐすようなメッセージソングを歌い始め、共感と話題を集めてきました。そして2017年2月8日、ついにシングル「スノーグローブ」でメジャーデビューを果たします。

歩き慣れたいつもの通りは
まだ約束の15分前
寒さに慣れた薄着の僕を
君はいつもどおり笑うだろう

緩やかな道を 少し足早に
風花の向こう 灯りがこぼれる

ずっと遠くに見える 潤んだ街並み
星空、雪を照らして
離れ離れになれば この景色は
どんな気持ちで 見えるんだろう
君に贈る言葉は 白い息に変わる
いつまでもこのままで
Oh I know
浮かんだ この雪が 消えたとしても
僕は ここにいるから
「スノーグローブ」/佐藤広大

 歌の舞台は、一面の雪景色が広がる街。佐藤広大の地元・札幌でしょうか。歌詞のフレーズから細やかな景色まで見えてくるようですねぇ…。そして“僕”と“君”はどちらかが、この場所を離れて、新しい場所で新しい人生を生きてゆくようです。しかし<浮かんだ この雪が 消えたとしても 僕は ここにいるから>…というフレーズがあるので、二度と会えない“サヨナラ”ではなく、遠距離恋愛の“またね”であるような気もします。

通い慣れたコンビニの前で
コートの襟を立てながら
「去年よりも寒いかも…」なんて
厚着した君が足跡増やしに来た

ふいに立ち止まり 下を向く君に
大丈夫だよと そっと差し伸べる

丸い箱の中身は スノーグローブの街
終わらない時を込めて
並んだ足跡には 雪が積もり
もう見えなくなったとしても
きっと旅立ちの日が 想い出に変わる
だから今 このままで
oh I know
回り道だとしても
前を向いて 歩いてゆこう
「スノーグローブ」/佐藤広大

 尚、佐藤広大はこの曲について「人生には、どうしても別れが存在します。でも、その人たちが育った故郷や、想い出の詰まった町は消えないもの。自分たちを成長させてくれた、そして想い出の詰まった街を忘れないでほしいというメッセージを込めたこの曲を聴いてくれた人たちが、大切な場所、大切な人たちを思い出してもらえたら嬉しいです」と語っております。だからこそ、タイトルは「スノーグローブ」なのでしょう。
 
 「スノーグローブ」とは“スノードーム”のこと。液体で満たされたドーム形の透明な容器の中に、建物や人や木々、そして雪に見立てたものを入れ、動かすことで雪が降っている風景をつくるあのインテリアです。この歌には、そんなスノードームのように、地元の街の風景も、二人で作ってきた思い出も、“君”の心でいつでも動き出せるようなものであってほしい、忘れないでほしいという思いが込められていることが伝わってきます。

 そうして自分の育ててくれた場所や大切な人を思い出すことで、「スノーグローブ」の“僕”も“君”もまた、冒頭でご紹介した『泣く大人』と同じように、たとえ離れ離れになってもお互いが<世界のどこかでちゃんと生きていることに>支えられながら頑張っていくことが出来るのだと思います…!さて、寒い日々が続く今日この頃ですが、そんな時こそ「スノーグローブ」を聴いて、少しでも温かい心で一日を過ごせますように…!

◆メジャーデビューシングル「スノーグローブ」
2017年2月8日発売
初回盤(CD+DVD) VIZL-1109 ¥1,800(税込)
通常盤(CD) VICL-37249 ¥1,200(税込)

<収録曲>
1.スノーグローブ
2.Diamond Dust feat. EXILE SHOKICHI
3.スノーグローブ (Instrumental)
4.Diamond Dust (Instrumental)