いつだって きっと ちゃんと 笑ってるよ 私は 大丈夫。

美しいものばっか
差し出してみんな消えた
お日様も 雨粒も

枯れないように
途切れないように
忘れた頃

転がり出すだろう 
時はゆくのだろう
止められやしない

あなたの夢
赤い糸に
絡めて止めて
しまわないで
あなたの嘘
やさしい嘘
ほどいて泣いて
ないで行って
「有終の美」/Cocco

 8月19日、5年ぶりにミュージックステーションに出演し「有終の美」を披露したCoccoの歌声、圧巻でしたね。“恋の散り際”を歌っているこの曲。しかし歌詞に綴られているのは悲しみや切なさというより、相手に「行って」と言える潔さです。「有終の美」の意味とは、物事をやりとおし、最後を立派にしあげること。ひとりの人を悔いなく愛し通したからこそ、曲のラストは<胸張って行くよ いつだって きっと ちゃんと 笑ってるよ 私は 大丈夫>という強いフレーズで幕を閉じてゆくことができるのでしょう。たとえ失恋でも、こんな“散り際”なら凛々しくてかっこいいですよね。とっても素敵な恋をしたんだなぁ…と思えます。
 
 さて、そんな「有終の美」が収録されているのは、8月24日、Coccoが1年10か月ぶりにリリースしたアルバム『アダンバレエ』です。今作は“生存者(サバイバー)による生存者(サバイバー)のための”アルバムなんだとか。その理由について彼女は「戦時中、鋭い棘を持つアダンの茂みに身を寄せて生き抜いた者たちの話を聞いてから、沖縄人の私の心に“アダン”はサバイバルの象徴として刻まれました。いつの間にか私はとうに大人になっていて、そして図らずも生き残った者になっていたから」とコメント。

 皆さん“アダン”という植物を詳しくご存知ですか?亜熱帯から熱帯の海岸近くに生育し、密集する性質をもつ木です。ちなみに、パイナップルに似た外見の果実が実るのだそう。そんなアダンが今回のアルバムのタイトルになっているのですが、収録曲には他にも非常に多くの植物、とくに“花”が登場するのです。今日のうたコラムで何曲かご紹介いたします!

砂糖漬けのスミレは 余りがち
塩梅は 時に狂うから
お咎めは 無しでいい

森に迷う
指には魔法
まるで女郎
群れをなして
もう どうだっていい
でも 泣けたらいいのに
「すみれ色」/Cocco

その時はまだ
暦は尽きて
延々に及んだまま
重大なミスでした
遅すぎますか
何もかも
咲かぬ椿の 散り方は

知らない

散り方さえも
知らぬ技
「椿姫」/Cocco

散りゆく
花もよう
いくつも
見送れば
流れる
水の音なんて
やさしいだけ
「卯の花腐し」/Cocco

 すみれ、椿、卯の花。また、収録曲「Sleeping Beauty」(“眠れる森の美女”の意)には<生き延びた花 生き急ぐ世界>、「フレア」(“スカートなどの朝顔形の広がり”の意)には<瞼に花吹雪>、「花も咲いたよな」には<涙の数 花も咲いたよな>、「ひばり」には<冬には冬の 花が どこかに>というフレーズが登場し、いずれも“花”が関連しております。

 植物は人間のように支えあうわけではなく、自然から与えられるものを自ら吸収し、自ら成長し、たくましく生き延びてゆきます。また花には散ってしまう儚さがありますが、月日を経てまた同じ場所で咲き誇ります。Coccoは“アダン”をサバイバルの象徴、と語りましたが、もしかしたらそんな他の植物・花たちにも“生存”する強さを込めたのかもしれませんね…!最近、残暑で夏バテ気味というあなた。是非“生存者(サバイバー)による生存者(サバイバー)のための”アルバム『アダンバレエ』を聴いて、生きるチカラをチャージしてください!

◆ニューアルバム「アダンバレエ」
2016年8月24日発売
初回限定盤(CD+フォトブック) VIZL-1019 ¥3,700+税
通常盤(CD) VICL-64616 ¥3,000+税

1. 愛しい人
2. 楽園
3. Sleeping Beauty
4. フレア
5. すみれ色
6. 影踏み
7. 花も咲いたよな
8. 椿姫
9. Rosheen
10. 卯の花腐し
11. 常情嬢
12. 有終の美
13. ひばり