このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第33回は1984年3月29日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、バンドでありながらアイドルのような魅力も持ち合わせ、その人気が社会現象にまでなった7人組グループ、チェッカーズの最初のヒット曲「涙のリクエスト」を取り上げます。
本命ではなかった曲で大ブレイク 頭上で腕を回す振り付けが話題に
spot_photoです。

 福岡県久留米市出身のチェッカーズ。1981年9月に行われた「ヤマハ・ライトミュージック・コンテスト」全国大会でジュニア部門のグランプリを獲得したのをきっかけに、デビューに向けて準備が進められた。藤井郁弥、武内享、高杢禎彦、大土井裕二、鶴久政治、徳永善也、藤井尚之らメンバー7人は83年春に上京し、9月21日に「ギザギザハートの子守唄」(作詞:康珍化、作曲:芹澤廣明)でデビュー。チェック柄のポップな衣装をまとった彼らが、不良っぽいイメージの楽曲を歌うというギャップをスタッフが狙ったものだった。

 「ギザギザハートの子守唄」「涙のリクエスト」「哀しくてジェラシー」の3作は、デビュー前の段階で完成しており、中でもレコード会社のスタッフにとって自信作だったのが「哀しくてジェラシー」だった。それを3枚目のシングルとして温存し、それまでに徐々に人気を拡大して3枚目で大ヒットにつなげる、というプランが練られていたという。当初はメンバーの自作曲もシングル候補に挙げられており、「涙のリクエスト」は、そのB面用に用意されたものだった。しかし2枚目のシングルとなった「涙の~」は、ライブ活動を続ける中で徐々に人気に火がついていく。

 「涙の~」の歌詞は、一方的に別れを告げられた男が、彼女へのメッセージを添え、二人の想い出の曲をかけてもらうよう、公衆電話からラジオ番組にリクエストする…といったものだ。80年代の当時から既に懐かしさを感じさせたであろう、1960~70年代の若者文化を彷彿とさせる。作詞:売野雅勇、作曲:芹澤廣明のコンビは、チェッカーズの音楽ルーツであるロカビリーやドゥーワップの要素を取り入れつつ、親しみやすい歌謡曲に仕上げたのだった。

 84年2月23日、チェッカーズはザ・ベストテンのスポットライトに初登場し、「涙のリクエスト」を披露。黒柳徹子は、フミヤをはじめメンバーたちの個性的な髪型に興味津々だった。3月8日に第7位で初ランクインし、登場4週目の3月29日でついに第1位に。この日は、フミヤ・鶴久政治の母校である福岡県久留米市の南筑高校から中継で歌った。特設ステージが作られた校庭には高校の後輩たちや地域の住民らが大集結。ステージ後方に仕掛け花火まで用意された派手な演出の中、サビで右腕を頭上でくるくる回す振り付けを皆が一緒にやって盛り上がった。ちなみにこの日は彼らが上京してからちょうど1年にあたる日。わずか1年で大ヒットを携えて故郷に凱旋を果たし、さぞ感慨深かったであろう。

「涙のリクエスト」は7週連続で1位をキープ、14週間ランクインする大ヒットとなった。この間、「涙の~」に引っ張られる形でデビュー曲も注目され、5月17日には「涙のリクエスト」、次作シングル「哀しくてジェラシー」、そしてデビュー曲「ギザギザハートの子守唄」の3作がベスト10内に同時ランクイン。これは81年5月に寺尾聰が達成させて以来の快挙だった。その後「哀しくてジェラシー」「星屑のステージ」「ジュリアに傷心」のいずれも大ヒットし第1位を獲得。まさにチェッカーズ旋風の吹き荒れた1984年の締めくくりに、彼らはNHK紅白歌合戦に初出場して「涙のリクエスト」を歌った。

 バンドであると同時にアイドル的な魅力を供えたチェッカーズの人気は、まさに社会現象となっていった。メンバーの行く先々で熱烈な女性ファンが待ち構え、街中や駅に貼られたポスターは瞬く間にはがされ盗まれた。多くの若者が彼らと同じチェックのファッションに身を包み、特に前髪の一部を長く垂らしたフミヤの髪型を真似る者が多かった。

 売野・芹澤コンビはこの後もチェッカーズにシングル曲を提供し続け、メンバーの自作曲はカップリングやアルバムにのみ収録されていた。しかし86年の「NANA」以降は、セルフプロデュースでシングルを自作曲でリリースするようになり、高い音楽性やライブパフォーマンスをさらに開花させていった。
ザ・ベストテンの番組終了時までのランクイン週数は計157週に及ぶ。

 しかし92年秋、ついに彼らは解散を発表。ラストツアーを実施した後、年末の紅白歌合戦に9回目の出場を果たし、代表曲をメドレーで披露したのを最後に解散した。その後、藤井フミヤは第一線で活躍し、ソロおよび弟・尚之とのユニット「F-BLOOD」で活動を続けているほか、一部のメンバーも音楽活動を続けている。

 2018年はデビュー35周年にあたり、記念のCD-BOX等が発売される。彼らがいかにクオリティの高い楽曲を作り続けていたか、あらためて見直される機会になりそうだ。

ザ・ベストテン☆エピソード
 チェッカーズと異色の共演をした生き物(?)がいます。それは、ゴジラ。「涙のリクエスト」の第1位を祝して、ゴジラが大好きだというフミヤの願いをかなえる形で登場。演奏している彼らの横で暴れ回り、ミニチュアセットの街を破壊しました。そのうち、メンバーもハンマーを持って一緒に壊し始め、大はしゃぎ。大掛かりなセットが最後はボロボロに。これ以降もフミヤのゴジラ好きはたびたび話題にされ、ファンからゴジラのぬいぐるみのプレゼントが大量に届いたり、スタジオセットに巨大なゴジラ人形が出現したりしました。
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