このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第31回は1989年7月27日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、人形のような可愛らしさと特徴的な振り付けで歌謡界を席巻した相田翔子と鈴木早智子による二人組アイドル、Winkの「淋しい熱帯魚」を取り上げます。
人形のような可愛さ 歌謡界の頂点へ一気に駆け上がったアイドルデュオ
spot_photoです。

 アイドルデュオ・Winkが誕生したのは1988年。アイドルグラビア雑誌が実施するミスコンテストで時期を違えてグランプリになった鈴木早智子と相田翔子によって結成された。88年4月に「Sugar Baby Love」でデビュー。同曲は英国のグループ・ルベッツが1974年にヒットさせた楽曲の日本語カバーだった。しかし歌謡界では全体的にアイドル人気が陰りを見せ始めており、歌番組で歌う機会も決して多くはなく、しばらくは認知度の低いアイドルの一組に過ぎなかった。

 そんな状況を一気に変えたのが、88年11月発売の3rdシングル「愛が止まらない~Turn It Into Love~」だった。この曲は、カイリー・ミノーグが同年7月に発表した楽曲の日本語カバー。ダンサブルな洋楽を10代の女の子2人の声でカバーしたのがうまくハマったことに加え、南野陽子主演ドラマの主題歌に起用されたことで徐々に売上げを伸ばしていく。

 ザ・ベストテンには、88年12月22日にまずスポットライトで出演し、年明け89年1月5日に第6位で初ランクイン。この番組としては珍しく、歌う前に、東京・赤坂の日枝神社に二人が晴れ着姿で初詣したVTRが流れた。絵馬に書いた願い事は、鈴木が「ずっとベストテンに出られますように」、相田が「Winkが今年、出世できますように」。昭和から平成に時代が移る中、その願いは二人の想像をはるかに上回る勢いで現実のものとなっていく。

 「愛が止まらない」はじわじわとランキングを上昇、3月2日にはついに初の第1位を獲得した。この時、歌う前にそれぞれの母親から第1位を祝う声のメッセージが流され、涙ぐむ場面も。「愛が止まらない」は17週連続でランクインするロングヒットとなった。これ以前の活躍があまりに目立たなかったため、この曲がデビュー曲だと思っている人も多いに違いない。次のシングル「涙をみせないで~Boys Don't Cry~」(ユーゴスラビアの男女ユニット、ムーラン・ルージュの楽曲のカバー)も追ってランクインし、「愛が止まらない」と「涙をみせないで」の2曲が5週にわたって同時ランクインする人気ぶりだった。

 彼女たちの人気を決定づけたのが5枚目のシングル「淋しい熱帯魚」である。洋楽カバーをいったんやめ、オリジナル楽曲での勝負。サビ部分で、無表情のまま顔の前で腕を上下させる振り付けは「大魔神ポーズ」とも呼ばれ、Winkを象徴するものとなった。7月20日に第2位で初ランクイン。2週目の7月27日には早くも第1位に。ベストテンでのセットは、水槽、プールといった水をモチーフにしたものが多く、水族館の巨大水槽の前から中継で歌ったことも。1989年9月28日のベストテン最終回までベスト10内をキープした。

 「淋しい熱帯魚」は、年末の音楽番組を席巻した。第22回全日本有線放送大賞グランプリを獲得。また第31回日本レコード大賞では、この年亡くなった美空ひばりが最有力と言われていた予想を覆し、Winkが大賞を獲得。そして大みそかに第40回NHK紅白歌合戦に出場。1年前までは無名だった19歳と20歳のコンビが、歌謡界の頂点まで一気に駆け上がったのである。平成の幕開けとなった1989年は、まさにWinkに始まり、Winkに暮れたのであった。

 歌っている時はけっして笑顔を見せない「無表情」、可憐な衣装、どこか機械的なものを感じさせる振り付けも相まって、当時のWinkはまさに人形のような可愛さであった。相田翔子は後年、無表情だったのは決して事務所の方針だったわけではなく、二人とも大変なあがり症で、いつも緊張して表情がこわばっていただけ…と当時を振り返っている。しかし、彼女たちを発掘した当時のスタッフが「心のこもっていない笑顔を無理に作る必要はない」という意味のことを二人に指示していたとも言われる。

 Winkは1996年3月をもって活動停止。解散ではなく「活動休止中」ということになっている。二人は今でもお互いにかけがえのない存在として、頻繁に連絡を取り合い、食事をするなど交流しているという。2018年のデビュー30周年を目前にして、2017年には一部メディアで「Wink再結成へ」という報道があったが、相田は「話題にしてもらえることは大変ありがたいが、何も決まっていない」と否定している。たとえ本人たちの稼働がなくても、旧譜の再発や特別番組など、何らかの形で30周年記念イベントが行われることを期待したい。

ザ・ベストテン☆エピソード
 ザ・ベストテンの終了が発表されたのは1989年7月6日の放送。放送終了前、司会の黒柳徹子が9月いっぱいで番組が終了することを告げ、「番組の使命は十分に果たされたと思います」と語ったのでした。9月28日の最終回にランクインし出演したWinkは、ミラーゲートから登場した時に司会の2人(黒柳徹子・渡辺正行)に手土産を渡すとともに、わざわざ持ち込んだコンパクトカメラをスタッフに渡して、4人で記念撮影しています。最終回は出演者たちにとっても名残惜しいものだったのです。
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