このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第29回は1985年4月4日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、アイドル的な人気を誇ったバンド、C-C-Bの出世作「Romanticが止まらない」を取り上げます。
カラフルに染めた髪、ドラムを叩きながら歌う斬新さで話題に
spot_photoです。

 C-C-Bは、1982年にココナッツボーイズとして結成。ベンチャーズやビーチ・ボーイズのようなバンドを作ろうというラジオ局の企画に応募したのがきっかけだった。1983年6月に「CANDY」でデビュー。初期のメンバーは渡辺英樹(ベース)、関口誠人(ギター)、笠浩二(ドラムス)を含む5人。その後メンバーチェンジで田口智治(キーボード)、米川英之(ギター)が加入する。爽やかなサーフミュージック風の楽曲を発表しながらもヒットにはなかなか結び付かなかった。

 彼らが路線転換し、一躍人気バンドの仲間入りを果たしたのが、3rdシングル「Romanticが止まらない」である。デビュー当時からの担当ディレクター渡辺忠孝が、実兄である人気作曲家・筒美京平に作曲を依頼。筒美は、ボーカルができるメンバーが複数いた中、笠浩二の特徴ある高い声を気に入り、彼が歌うことを前提に曲を書いたという。アレンジは、イントロの電子音、コーラスの掛け合いも印象的な、テクノ系ビートとロックが融合したスピード感あふれるものに仕上がった。メンバーは見た目のインパクトを求めて髪を紫や赤に染め、バンド名もC-C-Bに変更した。

 この曲が主題歌となったのが、ドラマ『毎度おさわがせします』(1985年1月~)である。思春期真っ只中の中学生たちが主人公で、コメディータッチながらも、過激な描写やセリフが賛否両論を巻き起こした。この番組でドラマ初出演した中山美穂はアイドルとして一躍人気者に。

 ドラマの人気と共に主題歌も注目され、C-C-Bは2月21日、ザ・ベストテンのスポットライトに初登場。「Romanticが止まらない」を歌った。カラフルに染めたメンバーの髪、そしてドラマーが演奏しながらヘッドセットマイクでボーカルを務めるという斬新なスタイルは、たちまち視聴者の心をつかんだ。その後ランクインして上昇、5週目の4月4日にはついに第1位を獲得。これは番組通算100曲目となる第1位であった。続いて「スクール・ガール」、「Lucky Chanceをもう一度」もヒットし、出演回数が増えていく。

  C-C-Bはアイドル的な人気も兼ね備え、バラエティー番組にも積極的に出演していた。そんな彼らのキャラクターを面白がって、ベストテンの番組スタッフもユニークな演出を試みていく。ある時は、メンバーが足繁く通う駄菓子屋を、引っ越し業者を使いまるごと持ってきてステージ上に再現。富士サファリパークからの中継で、熱気球に笠浩二が一人で乗って上昇し空中で歌ったり、スタジオセットの中で全員ゴーカートに乗ったりと、バンドであるにもかかわらず楽器を持たないで曲を披露したことも少なくなかった。この年、「Romanticが止まらない」で日本レコード大賞の金賞を受賞。「Lucky Chanceをもう一度」でNHK紅白歌合戦に出場した。

 その後のシングル作品では渡辺英樹や関口誠人もボーカルを担当してヒットを放っているほか、1986年以降はメンバー全員が髪を黒色にしている。それでも、C-C-Bといえばピンクの髪・派手な伊達メガネで歌いながらドラムを叩く笠浩二を象徴的に記憶している人が多いのは、「Romanticが止まらない」のインパクトがいかに強かったかを物語っている。ちなみに『毎度おさわがせします』は人気シリーズとなって続編が作られ、C-C-Bはドラマ第2作で「空想Kiss」、第3作で「ないものねだりのI Want You」と、シリーズ全作で主題歌を担当した。楽曲を聴くと、ドラマの場面を鮮明に思い出す人も多いであろう。

 1987年に関口誠人が脱退し、シンガー・ソングライターとしてソロ転向。C-C-Bは4人となって活動を続けるが、1989年に解散。その後、メンバーは個々および別ユニットでの活動を続けていた。2008年には渡辺・笠・関口の3名で正式にC-C-Bとして再結成し活動。2015年に、C-C-B名義でのライブツアーが予定されていたが、直前になって渡辺英樹が急病で倒れ、中止に。渡辺は手術を受けたものの約一ヶ月後に死去。多くのファンや交流のあったミュージシャンが、早過ぎる死を惜しんだ。C-C-Bの再結成は、残念ながら二度と叶わないことに。

 「Romanticが止まらない」は2005年、缶コーヒーのCMソングに使用された(CMには笠浩二本人が出演)ほか、同年、テレビドラマ『電車男』の中で毎回挿入歌として使用され話題に。80年代を代表する楽曲の一つとして、今も人々の記憶に強く刻まれている。

ザ・ベストテン☆エピソード
 1985年10月17日、番組400回を記念して静岡県の日本平から放送された「ザ・ベストテンIN静岡」では、C-C-Bの「Lucky Chanceをもう一度」が第1位に。メンバーは野外特設ステージで演奏しました。この時、1位を記念して、曲タイトルとメンバー全員の名前が刻印された金色のプレートが富士山山頂の岩に設置され、さらにお祝いの花火が打ち上げられる様子が生中継されました。そのプレートは、山頂付近の山小屋で今も大事に保管されているそうです。
ザ・ベストテン「今月のスポットライト」 Back Number