このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第27回は1979年8月23日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、70年代後半に颯爽と現れ、英語詞と先進的なロックサウンドでヒットを飛ばしたゴダイゴの代表曲「銀河鉄道999」を取り上げます。
映画の感動を演出 歴史を変えたアニメ主題歌の金字塔
spot_photoです。

 1978年10月、日本テレビ系ドラマ「西遊記」がスタート。個性豊かなキャラクターたちの演技が子どもたちに受けて高視聴率を記録した。巨額の予算をかけ、海外展開を意識して制作されたこのドラマの音楽を担当したのがゴダイゴだった。異国ロマンあふれるアコースティックなサウンドのEDテーマ「ガンダーラ」、全編英語詞で、シンセを駆使したエネルギッシュなリズムのOPテーマ「モンキー・マジック」はいずれもヒット。さらに国際児童年(79年)のテーマ曲となった「ビューティフル・ネーム」もヒットし、彼らは一気にスターダムへと駆け上がった。既存の洋楽の日本語カバー等とは別次元で、ごく自然な英語で歌い、最先端のサウンドを取り入れたゴダイゴは日本の歌謡界に颯爽と登場したのである。

 そして1979年、劇場版アニメ『銀河鉄道999』の主題歌として発売されたのが、映画と同タイトルの曲「銀河鉄道999」だっ
た。

 松本零士の漫画を原作とする『銀河鉄道999』は、1978年9月にテレビアニメが放送開始。少年・星野鉄郎が機械の身体を手に入れるため、謎の美女・メーテルに導かれて旅立ち、星々を巡る旅の中で成長していく、壮大なスケールの物語。当時は、77年に「宇宙戦艦ヤマト」劇場版が大ヒット、78年には初のアニメ専門誌「アニメージュ」が創刊、79年4月には「機動戦士ガンダム」の放送が始まるなど、斬新な世界観と緻密な設定による作品が次々と誕生。それまでの「テレビまんが」に代わって「アニメ」という呼称が定着し、一つの文化として若者を中心にブームが巻き起こっていた。前年に沢田研二が劇場版『さらば宇宙戦艦ヤマト』の主題歌「ヤマトより愛をこめて」を歌ってヒットさせているが、 人気ロックバンドがアニメ主題歌を担当した前例はなく、作曲を担当したボーカル・タケカワユキヒデ(当時26歳)は「アニメの歌というものの常識を変えてやるんだ」という意気込みで取り組んだという。当初はゆっくりとしたバラードだったが、ミッキー吉野の手によって、999が走っていくような疾走感のあるアップテンポの曲に仕上がった。

 劇場版『銀河鉄道999』は、まだテレビシリーズが放映中の79年8月4日、夏休みシーズンに合わせて公開され、空前の大ヒットに。アニメ映画として初めて、1979年度の邦画の興行収入1位を記録する快挙を達成した。

  ザ・ベストテンでは、「銀河鉄道999」は7月26日に第10位で初登場。映画公開とともにランキングを上昇し、8月23日にはゴダイゴにとって初となる第1位を獲得。7週連続で1位をキープし、11月1日まで計15週にわたってランクインした。テレビで歌う時は、1番は日本語詞、2番は英語詞で歌われることがほとんどだった。ステージセットは、曲に合わせて蒸気機関車や宇宙、星空などをイメージした様々なものが登場。彼らが野外イベントに出ると必ず雨が降るそうで、タケカワが雨男と呼ばれることが話題になり、傘をたくさん並べたセットで歌ったことも。

 何よりこの主題歌の人気を決定づけたのは、映画のラストシーンでの使われ方が見事だったことに尽きる。メーテルを乗せた999を走って追いかける鉄郎。汽笛を残して空の彼方へ消えていく999。美しく壮大なオーケストラのBGMにのせて別れの場面がしんみりと描かれた次の瞬間、このゴダイゴの曲のイントロが力強く始まるのだ。鉄郎は線路の上をトボトボと歩き、やがて振り向かずに駆け出していく…。 山川啓介による日本語詞は、映画のストーリーに重なると同時に、夢に向けて旅立ちを促すメッセージ性の高いもので、多くの若者が感銘を受けた。少年から大人への成長を描いた青春映画は、この曲によって心地よい余韻を残し、アニメ史上屈指の名ラストシーンになったと言えよう。

  ゴダイゴはその後、海外公演を成功させるなどグローバルに活躍するも、メンバーの脱退を経て1985年に活動休止。1999年に期間限定で再結成。その後、現在も全盛時のメンバーで活動中だ。「銀河鉄道999」は代表曲の一つとして人気が高く、2008年にEXILEがカバーしたのも記憶に新しい。今でこそ「アニソン」はジャンルの一つとして立派に認知されているが、ゴダイゴの「銀河鉄道999」は、アニメの主題歌を人気アーティストが手掛ける先駆けとなった記念すべき作品なのだ。

ザ・ベストテン☆エピソード
 「ガンダーラ」「モンキー・マジック」の2曲は、79年2月15日~4月5日まで8週間にわたってベストテン内に同時ランクインしました。また7月19日のランキングでは、11位以下ではあるものの、「ビューティフル・ネーム」、その次作シングルとして発売された「はるかな旅」、「銀河鉄道999」に加え、さらにタケカワユキヒデのソロ曲である「ハピネス」が、20位以内にすべて名を連ねるという記録も残しており、当時のゴダイゴの人気の高さが分かります。
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