このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第15回は1986年7月17日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、日本の夏といえば彼ら! デビューから30年を越え、今も数々のサマーソングで夏を盛り上げ続けるバンド・TUBEのブレイク作「シーズン・イン・ザ・サン」を取り上げます。
暑い季節を盛り上げる夏ソングの名曲
spot_photoです。

 それぞれ10代で音楽活動をしていた前田亘輝(ボーカル)、春畑道哉(ギター)、角野秀行(ベース)、松本玲二(ドラムス)の4人がビーイング主催の音楽祭を機に知り合い、バンドを結成したのがTUBEの始まりだった。1985年6月1日、The TUBE(ザ・チューブ)として「ベストセラー・サマー」でデビュー。同曲はキリンビールCMソングに起用されスマッシュヒット。同年8月には「ザ・ベストテン」のスポットライトのコーナーに初出演し、トレードマークであった太い縦の青白ストライプのジャケットで登場。当時メンバーたちは19歳・20歳であった。

 「シーズン・イン・ザ・サン」は3rdシングル。この曲の発売時より、バンド名を「TUBE」とあらためた。太くエモーショナルな前田のボーカルと、バックに流れる清涼感ある多重コーラスが夏らしさを演出している。レコードジャケットいっぱいに広がる、海の青のグラデーションも美しい。曲を提供しサウンドプロデュースを手がけた織田哲郎自身は、この曲で描かれている夏のビーチで遊ぶような生活には縁がなく、イメージを精いっぱい膨らませて夏の海への憧れを形にしたという。

 夏に先駆けて4月に発売。やがてキリンビール「びん生」のCMソングとしてオンエアされ売上を伸ばし、ザ・ベストテンには6月5日に第10位で初登場。徐々に順位を上げていった。曲のイメージに合わせ、当時のメンバーの服装は真っ白いTシャツにジーンズ。あまりにラフ過ぎて、テレビ局に入ろうとした時に警備員に止められたこともあったという。

 6週目となる7月10日には第2位まで上昇、コンサートを行った熊本市民会館から中継で出演した。この際に、黒柳徹子から「もし1位になったら番組に何をしてほしいですかー?」と呼びかけられ、前田が「水着の女の子200人をはべらせて歌いたい」と発言。翌週7月17日、ついに第1位に上り詰めると、本当にスタジオに水着ギャル200人が登場し、ド派手な演出で夏気分を盛り上げた。この年は、彼らに加え、ソロ活動を開始した杉山清貴、その杉山に代えて新ボーカルを迎えて始動した1986オメガトライブなど、夏をイメージさせるアーティストの活躍が目立った年でもあった。

 「シーズン・イン・ザ・サン」はザ・ベストテンに計11週間ランクインし、年間ランキング3位にもなる大ヒットに。後に作曲家・サウンドプロデューサーとしてミリオンヒットを連発することになる織田哲郎にとって初めてセールス的に成功を収めた、転機となる作品であった。TUBEはこの後、同じ亜蘭知子・織田哲郎コンビの作品によって、 87年「サマー・ドリーム」、88年に「Beach Time」と3年連続で夏の歌をヒットさせ、「TUBE=夏」というイメージが強く印象付けられた。それは決してメンバーの意図したものではなく、実際この間に「BECAUSE I LOVE YOU」「Dance With You」「Remember Me」といった夏ソング以外のシングルもスマッシュヒットさせている。しかし夏ソングの売れ方があまりにすごかったため、夏のバンド、という世間のイメージが強くなってしまったのである。

 メンバー自身で曲を作るようになり、日本の夏を代表するバンドというイメージを受け入れ、30年以上にわたって活動を続ける彼ら。2000年にはハワイでワンマンライブを開催。88年以降は、毎年8月に横浜スタジアムで野外ライブを行うのが恒例となっている。今年7月には、60枚目となるシングル「RIDE ON SUMMER」を発売。TUBEの曲は時代を超え、日本の夏を彩り続けているのである。

ザ・ベストテン☆エピソード
 黒柳徹子と共に司会を務めた初代MCが、久米宏。番組開始当時は33歳、TBSの局アナでした。
時間の限られた生放送にものすごいスピードの早口で情報を詰め込み、様々なハプニングが起こる中でも臨機応変に対応する沈着冷静さも持ち合わせていました。黒柳のツッコミに対する切り返しも早く、「こちら木曜日オジサンの久米宏さんです」「夜9時オバサンの黒柳徹子さんでいらっしゃいます」
などと互いにやり合う様子は、仲が悪いのではないか?と視聴者に思わせたほど。そんな軽口も絶妙のユーモアに満ちており、信頼し合っていたからこその「芸風」であり、この二人が番組の楽しい雰囲気を築いたと言えます。
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