このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第4回は1981年7月23日のランキングを紹介。今月のスポットライトは、清楚な笑顔と高い歌唱力で愛された河合奈保子さんの「スマイル・フォー・ミー」を取り上げます。
爽やかアイドルの魅力が花開いた代表曲
spot_photoです。

 河合奈保子は1980年3月、16歳の時に西城秀樹の妹を募集するオーディションでグランプリを受賞。同年6月「大きな森の小さなお家」でデビューした。高い歌唱力に加え、八重歯の似合う爽やかな笑顔、健康的なプロポーションで、たちまち人気アイドルに。松田聖子、柏原芳恵、岩崎良美、田原俊彦など同期デビューの人気アイドルたちと共に華々しく歌謡界を盛り上げた。
 「スマイル・フォー・ミー」は、デビューからちょうど1周年の日に発売された5枚目のシングル。「ザ・ベストテン」には81年6月18日から7週連続ランクイン、最高6位を記録。この曲はスタンドマイクで歌うことが多く、マイクスタンドには「Naoko」の文字が入ったリボンとハート形のスマイルマークがデザインされた赤いロゴマークを取り付け、さらにマイク本体も赤いものを使用(黄色バージョンもあり)。笑顔で両腕を斜め上に大きく広げる振付は彼女の爽やかさをより強く印象づけた。18歳の誕生日前日である7月23日には国鉄福井駅からの中継で歌い、誕生日を記念してなぜか駅弁にサインしていた。7月30日にはスタジオにて、親から教わったというお手玉を披露してから歌っている。この曲で同年の「第32回NHK紅白歌合戦」にも初出場した。
 その後も「夏のヒロイン」「けんかをやめて」「エスカレーション」などをヒットさせ、「ザ・ベストテン」にランクインさせた曲数は23曲。ランクイン総週数94週という実績からしても、安定してヒットを出していたことが分かる。
 幼い頃からピアノを習い、音楽の素養が高かった河合は、当初からアイドル活動の合間を縫って曲を書き溜めていた。86年11月発売の「ハーフムーン・セレナーデ」は、初めて自身の作曲によるシングルで、ファンの間でも非常に人気の高い名バラードだ。86年の紅白歌合戦では、同曲をグランドピアノの弾き語りで披露。以降も自作曲を多数発表し、全曲自ら作曲したアルバムも発売。アイドルから、多彩な曲を歌えるシンガー・ソングライターへと成長を遂げたのである。

 96年に結婚、97年の出産を機に活動休止。現在はオーストラリア在住。企業CMへの楽曲提供など、作曲家としての活動はあるものの、タレントとしては表舞台から完全に姿を消してしまったため、その後の姿が伝えられることは極めて少ない。しかしながらファンの人気は根強く、その高い音楽性の分析・再評価が繰り返し行われると共に、熱意に後押しされる形で、これまで定期的にベスト盤等が発売されてきた。
 そして2015年。デビュー35周年を記念して日本コロムビアからCD2枚組メモリアルアルバム『ファンが選んだ35周年アルバム 私が好きな河合奈保子』が発売された。このうちCD1枚目には、歴代シングルA面の中からファンからの人気投票によって上位18曲を収録するという、ファン参加型の企画を実施。その結果、見事1位に輝いたのはやはり「スマイル・フォー・ミー」であった。眩しいほどの輝きを放った河合奈保子の魅力が最も表現され、30年以上たっても愛されている名曲なのである。

ザ・ベストテン☆エピソード
 もう少しでベストテンに届きそうな、第11位以下の歌手をピックアップしてスタジオで歌ってもらったのが「スポットライト」のコーナー。既に人気のある歌手ばかりでなく、ブレイク間近の新鮮な顔ぶれも登場させることで、番組として飽きられないようにするためでした。注目度は高く、コーナー出演をきっかけに人気に火がつき、後にベストテン入りした曲も多数。サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」も、アルフィー「メリーアン」も、C-C-B「Romanticが止まらない」も、荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」も、最初はスポットライト出演だったのです。売り出し中のアイドルやバンドはもちろんのこと、話題の曲として、歌手デビューした俳優やお笑いタレントなども紹介。意外なところでは、タモリ、ビートたけし、小堺一機、小沢昭一などもスポットライトのコーナーに出たことがあります。
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