ドクダミ

風邪薬が苦いのは
優しさの裏返しか
体温計はないけど
思い当たる節はある

大袈裟だ君は
断りきれない
変な形の梨が甘い

君に風邪がうつる頃には
夕闇にのまれ
日が長くなったことにすら
二人気づかない

そろそろ帰ろうか
線路沿いの道に咲いた花に
君はよく似ていた
春が終わる匂いがした

僕一人を欠いた世界は
淀みなく回る今日も
それならばもう少しだけ長く
寝たかった

病み上がりにだって
平等に通り雨
君も今頃帰り道の途中

この頬で爆ぜた六時の生ぬるい雨が
次は君のまつ毛濡らしながら落ちてゆく

踏み切りが響いて
君の言葉が聞き取れずに
何故か諦めた

君の風邪が治る頃には
夏めく世界で
口約束は湿り気に弱いことを知る

そろそろ帰ろうか
線路沿いの道に咲いた花に
君はよく似ていた
春が終わる匂いがした
夕闇の中
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