結界の情歌

風に消えたあなたを探した
六道の辻で待っていましょう

人の世は絶え間なく流れゆく河のように
わたしはただ浮かんだまま沈みもしないで

あなたの手に肩に背中に
触れるだけでいい
それだけでいい
修羅の世も地獄でも行ける
あなたを呼び戻せるように
迎え鐘を鳴らしましょうか

もう一度と願うことはもう
射干玉(ぬばたま)の闇の現(うつつ)でしょう

花の色は沫雪(あわゆき)の一瞬の夢のまま
恋と呼んだあの日のこと忘れないように

あなたのやさしさが今ごろ
痛いくらいに
痛いくらいに
餓鬼の世も畜生でもない
空蝉の無情な世に
置き去られた女の情歌

あなたの手に肩に背中に
触れるだけでいい
それだけでいい
修羅の世も地獄でも行ける
あなたを呼び戻せるように
迎え鐘を鳴らしましょう

打ち慕ぶる女は情歌
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