忘れ針

出直すための 二人の旅に
仕立てたあの日の 夢紬(ゆめつむぎ)
ひとりで片袖 通すたび
襟元あたりが ちくりと痛い
貴方が残した 傷かしら
いいえ 未練という名の 忘れ針

繕(つくろ)えなかった 努めてみても
二人の間の ほころびは
何度も縫っては みたけれど
その度解(ほつ)れて 広がるばかり
男と女の 夢違い
そうね あの日の空しい 針仕事

月日は女を 大人にすると
誰かに聞いたが 作り言
想い出紬(つむぎ)を 手にすれば
いまでも心が ちくりと痛い
憎さが消えない せいかしら
いいえ 未練という名の 忘れ針
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