帽子

吹き抜くすきま風
白くかたどったうなじの艶っぽさを
通り抜けて舞い上がっていく
帽子を取る間もなく
遠くへさらっていった
たまにかすめた黒い雲を越えて消えていく

たしかに夏の日は
若くいろどって私を誘ったのに
音もなく遠ざかっていく
窓辺に残る影
おでこにはりついた影
雨を降らせばやがて七色の時が来る

どこまで恋は続くだろうか
恋は続くだろう
酔いをひとりでさます間
虫が息をひそめて待っている間に...

もういちどすきま風
白く浮き立ったあなたの色っぽさを
通り抜けて舞い上がっていく
もう一度春が来て
何もかもが終わる頃
花は言葉を交わすひまもなく咲いていく

帽子はさらわれて
あなたの育った町をとびこえながら
悲しみも巻き込んでいく
昨日は過ぎ去った
明日の私だけが居る
忘れかけてたものが現れては消えていく

どこまで恋は続くだろうか
恋は続くだろう
酔いをひとりでさます間に...
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