我れは梔子

聽け この聲を
胸を騷がす音を
見よ この眼を
溢れ出づる涕を

身も心も浮かれてゐるの
眞夏の夜の帷に二人切り
何にも無くて凡てが有る
一片の言の葉も落とさじ
…我れは梔子…

然らばこの世界は
ひときは美しき哉

聽け この聲を
胸を震はす唄を

見よ この肌を
抱へ切れぬ若さを

命がいま目覺めて行くの
二人には虞等少しも無い
生まれた罪つぐなふとき
一片の花びらも散らさじ
…我れは梔子…

初めて身に染みてゐる
生きてゐると言ふこと
我れは口、無しで良い
何も彼も持つてゐるから

然らばこの世界は
凡そ二人のものぞ
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