誰かのいた風景

沈みはじめた空は
闇を孕んでみえたから
「夜はまだ来ないで」
祈るように呟いた

いつもの街 いつもの人
ありふれた日々がそこにある
耳をそばだてて辿るように目を閉じる

くゆり立つ悲しみは懐かしい香りがして
そのどれもが愛おしくも儚くゆれていて
触れないんだ
触れたい

まだ微かに感じ取れる優しい温もりも
恙無く過ぎ去る日々に溶けてしまうから
触れていたいな

触れたい‥

ただの路地裏 坂道 穏やかな遊歩道
君がいた街 いない日々 抗えない時間
何気ない景色が色づいていく
新しい命芽吹いた
揺れるブランコ 白い靴 自転車 交差点
どれも綺麗な綺麗な
君がいた世界
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