まあるい笑顔

おばあちゃんのね 手のしわや 顔のしわ見つめてしまうよ
おばあちゃんのね 笑う顔は畑の中 心の中輝いてた
まあるいまあるい笑顔で優しく僕らを迎えるんだ

おばあちゃんのね 髪の毛はいつも変な方へ流れているよ
おばあちゃんのね 若い頃はどんなだったろうかと想像してみるんだよ
まあるいまあるい笑顔で優しくおじいちゃんに微笑んだろう

僕の生まれるずっとまえにおじいちゃんはもういなくなってた
死んでしまった
おばあちゃんはそれからひとりでずっと長屋にいた
寂しくはないよとまた笑った

おばあちゃんのね 笑う顔は風邪みたいだ みんなに移るよ
おばあちゃんちで少し早めの夕食のあと そろそろ行くかとお父さん
おばあちゃんのね 顔が少し寂しそうで それも移った

さよならまた会いに来るよ 車の窓からみんなで手を振る
夏休み 夕暮れの中 おばあちゃんもいつまでも手を振っていた
寂しくはないよと手を振ってた

おばあちゃんのね 腰が悪くなって 施設に入ることに決まった
あっという間に あの長屋が おばあちゃんちが取り壊されてゆく
まあるいまあるい笑顔でおばあちゃんはそれを見つめていた
少し寂しいねと言って 小さく手を振っていた
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