お願い、今夜だけはわたしのそばにいて。

 2019年3月6日に“石崎ひゅーい”がニューミニアルバム『ゴールデンエイジ』をリリース。今日のうたコラムでは今作の収録曲から、テレ東ドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』主題歌として書き下ろされた新曲「あなたはどこにいるの」をご紹介いたします。みなさんには、別れさえ告げることができないまま終わってしまった恋、ありませんか…?

ラブレターには土砂降りの雨
もう歩けない沈み出した夜の街

かばんの奥に散らばったグミ
赤、青、黄色、傷みだした古い歌
「あなたはどこにいるの」/石崎ひゅーい

 <あなた>の居場所がわからないから、手渡すことは出来ず、どこへ送ればいいかも不明なラブレター。それでも主人公の<わたし>はその“まだ伝えられていない想い”を胸に携えながら、街を歩き続けたのでしょう。また、深読みすれば<赤、青、黄色、>の色トリドリな<グミ>は“<わたし>と<あなた>の幸福な思い出”の象徴である気がします。

 きっと<わたし>は、その甘やかで鮮やかな思い出をひと粒ずつ噛み締め、希望を補充しながら<あなた>を探したのです。しかし<あなた>は見つからない。やがて、ラブレターは<土砂降りの雨>で滲み、グミは<かばんの奥に>散らばり、体も心も<もう歩けない>とボロボロに。そして“<グミ>=幸福な思い出”のひとつであったであろう<古い歌>さえも、傷みだしてしまったのでしょう。

ひらひら舞って星屑になれ
あなたはどこにいるの?
「あなたはどこにいるの」/石崎ひゅーい


 だからこそ<わたし>は、すべてに対し<ひらひら舞って星屑になれ>と願うのだと思います。Aメロの、ラブレター、雨、街、グミ、古い歌、という様々な名詞。それらには<あなた>への愛が染み込んでいます。ゆえに、このまま腐らせてしまいたくない。少しずつ何もかも傷みきってしまうくらいなら、いっそ今<ひらひら舞って星屑に>なって、美しく最後を飾ってほしい。そんな想いが表れているのではないでしょうか。

お願い、今夜だけはわたしのそばにいて
そしたらあなたのこときっと忘れるから
破れたシャンデリアがキラキラ光ってて
あなたに書いた言葉がまだ胸に刺さってる
「あなたはどこにいるの」/石崎ひゅーい

 その願いが、さらに熱量を増して溢れ出すのがサビフレーズ。さきほど<土砂降りの雨>に濡れて、文字も滲んでしまったはずの<ラブレター>は今、胸の内で<破れたシャンデリア>としてキラキラ光っております。おそらく、最後の夜を飾るために。ちゃんと<あなたのこと>を忘れるための<今夜>の“別れ”を美しく照らすために。

お願い、手を繋いでおんなじ夢を見た
あの日のぬくもりとか忘れないでいてね
失くしたイヤリングは失くしたままにした
あなたと過ごした夜を思い出にできずに

たとえば星降る夜あなたに会えるなら
涙が流れたってあなたに伝えたい

お願い、今夜だけはわたしのそばにいて
そしたらあなたのこときっと忘れるから
破れたシャンデリアがキラキラ刺さってて
あなたに書いた言葉がまだ胸で光ってる
煌きながら揺らめきながら
「あなたはどこにいるの」/石崎ひゅーい

 もう<わたし>は<あなた>と再び、ともに生きていくなんてことを夢見ているわけではありません。でも贅沢は言わないから、せめてもう一度、お互いに<手を繋いでおんなじ夢を見た あの日のぬくもり>は確かだったと確かめ合いたい。それを<忘れないで>と伝えたい。いい加減<あなたと過ごした夜を思い出に>したい。だから<お願い、今夜だけはわたしのそばにいて>と毎夜、毎夜、願うのです。
 
 「さようなら」のひと言さえなければ、終わりたくても終われません。いつか<あなたに書いた言葉>=“まだ伝えられていない想い”届けられるその日まで<わたし>はきっとずっと、思い出迷子のまま。煌きながら揺らめきながら「あなたはどこにいるの?」と彷徨い続けるのです。それは失恋よりもずっと苦しいものかもしれませんよね…。
 
 この歌の<わたし>も、終われない恋を引きずっているあなたも、いつかその恋心に手を振ることができますように。失くしたイヤリングの行方はわからなくとも、新しいイヤリングをつけて、逢いたいと思えるひとに出逢うことができますように…!

◆紹介曲「あなたはどこにいるの
作詞:石崎ひゅーい
作曲:石崎ひゅーい

◆ミニアルバム『ゴールデンエイジ』
2019年3月6日発売
初回生産限定盤 ESCL-5196~ESCL-5197 ¥2,315+税
通常盤 ESCL-5198 ¥1,667+税