唇むすんでひらいて、その先は言わないで。

 2018年11月14日に“グッドモーニングアメリカ”がニューアルバム『!!!!YEAH!!!!』をリリースしました。現メンバーになって10周年、メジャーデビュー5周年を迎えた彼らが放つ今作。今日のうたコラムではそのなかから、切なさや悲しみや空しさを含んだ【変化】が描かれている新曲「むすんでひらいて」をご紹介いたします。

唇むすんでひらいて
優しく愛囁いてた日々
別れの気配漂わせ
その先は
言わないで
言わないでよ
「むすんでひらいて」/グッドモーニングアメリカ

 まだ、お互いに愛し合っていた頃は、唇を<むすんで>キスをしたり、言葉もなく抱きしめ合ったり、それだけで満たされていたことでしょう。そして、唇を<ひらいて>は<優しく愛囁いてた日々>がありました。しかし、今や二人の間には<別れの気配>が漂っております。悲しくも、愛する人はいつのまにか【変化】してしまっていたのです。

心当たり
無い訳じゃない
目が合わなくなって
少し上の空だった

始めは疲れのせいで
次から仕事のせいにして
会えない理由途切れずに
別れの理由までも
作んないでよ
「むすんでひらいて」/グッドモーニングアメリカ

知らないピアスが
冬の夜に光る
嗚呼この先どんだけ待ったって
意味は無い
行き場の無い想いだけが
残るだけ
「むすんでひらいて」/グッドモーニングアメリカ

 主人公の<僕>は、相手の【変化】にうすうす気づいていた模様。どうして最近<目が合わなくなって>いるんだろう。どうして<少し上の空>なんだろう。だけど、答え合わせはしたくなかったのでしょう。何故なら<疲れのせい>や<仕事のせい>にされる<会えない理由>が嘘だとわかっていたから。おそらく“本当の理由”が何であるのかも。

 その“本当の理由”が映っているのが、冬の夜に光る<知らないピアス>です。<僕>が知らない時間を、<僕>が知らない誰かと過ごし、<僕>が知らない輝きをもらっていた恋人。そんな眩しい横顔は、もはや別人のようだったのかもしれません。それほどに遠い存在。だからこそこの歌には<君>や<あなた>という二人称が一切、綴られていないのではないでしょうか。

唇むすんでひらいて
優しく愛囁いてた日々
別れの言葉を前に
頷く事しか出来なくて
唇むすんでひらいて
その先は言わないで
言わないでよ
言わないでよ
「むすんでひらいて」/グッドモーニングアメリカ

 歌の終盤。もう<むすんでひらいて>というフレーズは、かつてとまったく違う状態を表しているのがわかります。<別れの言葉を前に 頷く事しか出来なくて>ただただ<唇むすんで>いる<僕>。沈黙に<唇むすんで>いる二人。やがて、愛する人が唇を<ひらいて>最後のひと言を口にしたそのとき、完全なる終焉が訪れるのです。
 
 まだ終わりたくない。そんな胸の内の叫びがラストの<その先は言わないで 言わないでよ 言わないでよ>と繰り返されるフレーズから痛いほど伝わってきますね…。ちなみに、アルバムの12曲目に収録されている「明日また」も同様に【変化】が描かれている楽曲なのですが、こちらは「むすんでひらいて」とまた違ったテイストの【変化】です。

「明日また」って
嗚呼

東京タワー
見上げた
修学旅行から
何年経っただろう?

今じゃいつも
見えてる
街で暮らしてるから
あれから行ってない
「明日また」/グッドモーニングアメリカ

 この歌でいう<東京タワー>は<僕ら>にとっての“青春”の象徴です。でもその場所には、行こうと思えば行けるからこそ<行ってない>ように、あの頃の仲間にも、会おうと思えば会えるからこそ<家庭や仕事で 後回しに>して会っていません。そうやって「明日また」って当たり前に言えた日々が、大人になるにつれ【変化】したのです。

 ただし【変化】した今だから見えること、わかることも教えてくれるのが「明日また」という楽曲なんです。「むすんでひらいて」で切なさに浸るもよし。「明日また」で懐かしさに浸るもよし。是非、いろんな気持ちでグッドモーニングアメリカのニューアルバムを楽しんでみてください…!

◆紹介曲
「むすんでひらいて」
「明日また」
作詞:金廣真悟
作曲:金廣真悟

◆ニューアルバム『!!!!YEAH!!!!』
2018年11月14日発売
初回限定盤 COCP-40533/4 ¥3,600(税込)
通常盤 COCP-40535 ¥3,000(税込)

<収録曲>
1.YEAH!!!!
2.夢のマルティール
3.むすんでひらいて
4.Tonight Tonight
5.永遠に
6.ベツレヘムの星
7.悲しみ無き世界へ
8.寝ていらんないな
9.ゴールライン
10.I'm thinking of you
11.ヒカリイロトリドリ
12.明日また
13.想像の果てへ