なんでだろう、わけもなく泣けてくる。

 2018年5月29日に“ゆず”が新曲「公園通り」を配信リリース!タイトルの由来は、渋谷公園通りです。公園通りに面した場所には、かつて“東京・渋谷公園通り劇場”という会場があったのだそう。さかのぼること20年。1998年、ゆずは路上ライブから踏み出し、その劇場にて初の有料ワンマンライブを行いました。そして、二人にしかできない唯一無二のステージを披露し、後の1stシングル「夏色」への拍車をかけていったのです。
 
 あれから20年。デビュー21年目を迎えた今、あの頃の自分たちを思い出しながら描かれたのが、新曲「公園通り」です。当時のゆずの想いや情景を感じながら聴くのも良いでしょう。または、自分の青春時代や、過去の夢や恋を重ねながら聴くのもよいでしょう。それぞれの捉え方で、歌詞を楽しんでみてください。

公園通りで こんにちは
懐かしいあの頃に出会ったんだ
ひた向きで いつもがむしゃらで
ずっと夢を見ていた
「公園通り」/ゆず


 冒頭の<公園通りで こんにちは>というフレーズ。ここからは二重の景色が見えてきますね。ひとつは“東京・渋谷公園通り劇場”で初めて、お客さんたちに「こんにちは」をした昔の姿。もうひとつは、公園通りを通ったとき、ふと<懐かしいあの頃>が心に蘇ってきて、久々に“思い出”に「こんにちは」と挨拶をする今の姿。こうして大切な過去が歌のなかで息づきはじめるのです。

なけなしの小銭で粘る
「まったく、東京の喫茶店は高いな」とボヤく
クスクス隠れて笑いながら 時間を持て余してた

なんでだろう わけもなく泣けてくる
「公園通り」/ゆず

バイトで貯めた 7万5千円
ニケツで捕まった罰金は痛かった
来週は ついに御茶ノ水まで
アコギを買いに行くんだ

あんな風にはもう 笑い合えなくても
「公園通り」/ゆず


 とはいえ、改めて「あの頃はどんなだっただろうか」と考えてみたとき、浮かんでくるのは大それたことではありません。お金もなかった自分たちが「まったく、東京の喫茶店は高いな」とボヤきながら過ごした時間。やっと<バイトで貯めた 7万5千円>が罰金で損なわれる口惜しさ。でも<ついに御茶ノ水まで アコギを買いに行く>ことができる嬉しさ。

 歌詞には書かれていませんが、そのアコギを初めて鳴らしたとき、込み上げてくる気持ちもあったことでしょう。今思えば、苦笑してしまう記憶だって多いはず。でも、そんなささやかな日々のすべてが<ひた向きで いつもがむしゃらで ずっと夢を見ていた>自分が一生懸命に過ごしていた証なんですよね。その感情や光景の小さなカケラたちによって<あの頃>は<わけもなく泣けてくる>くらいに輝くのです。

霞んで見える景色達
あんなに澄んでいた空でさえも
目頭を抑え ため息ひとつ でも
僕を必要としてくれる人がいるんだ

もう一度前に歩き出すよ
こんなに幸せな今があるから
交差点の信号が青に変わる
何事もなかったように 明日へまた進む
「公園通り」/ゆず

 眩しくて、愛おしくて、もう戻れないあの頃。月日を経て、大人になって、いろんな環境や心境が変わった自分を並べてしまうと、ずいぶん“今”が<霞んで見える>のかもしれません。目に見えない大切な何かが見えなくなってしまったのかなぁと<目頭を抑え ため息ひとつ>吐きたくなる切なさもわかりますよね。だけど、今には今の小さなカケラたちがあります。
 
 <僕を必要としてくれる人>がいて<こんなに幸せな今がある>。それは、もしも昔の自分が見つめたとしても、未来の自分が見つめたとしても、眩しくて、愛おしい、かけがえない“今”なのではないでしょうか。こうして<交差点の信号が青に変わる>瞬間の感情や光景もまた、自分が一生懸命に過ごしている証なのです。

公園通りで さようなら
懐かしいあの頃に手を振る
ひた向きで いつもがむしゃらで
ずっと夢を見ていた

ずっと夢を見ていた
「公園通り」/ゆず

 このように幕を閉じてゆく歌。過去に「さようなら」をして、今の自分が生きるべき<明日へ>と歩んでゆく、前向きな光が伝わってきます。同時にこれからの“ゆず”の二人の道も希望色に輝いているように感じますね…!あなたなら、ふと懐かしいあの頃に「こんにちは」したとき、いつ誰と過ごしたどんな思い出が浮かんできますか…?

◆紹介曲「公園通り
作詞:北川悠仁
作曲:北川悠仁