ホントの君は、ダイヤの指輪を、求めてたんだ

20代の夢は男を輝かすけど
30代の夢は男をくすませるだけや。
(ドラマ『カルテット』より)

 今、懸命に夢を追っている男性には痛いセリフですよね。しかし何歳であろうと、自分のやりたいことに全身全霊をかけている方って、とても魅力的。夢は決して「男をくすませる」ものなんかじゃないのだと思います。ただし、状況によっては「一緒にいる二人の未来をくすませる」ものになってしまう可能性はあるのです…。

 今日のうたコラムでは、そんなどうにもならない現実問題も考えさせられる新たな失恋ソングをご紹介!2018年3月14日に“Thinking Dogs”がリリースした6枚目のニューシングル『愛は奇跡じゃない』に収録されているカップリング曲「ユメラブ」です。この歌は、主人公<僕>がまさに<夢>のせいで恋人にフラレてしまうシーンから幕を開けます。

今なんて言ったの?マジで?
それはつまり君と僕が 今日でサヨナラってこと
僕はフラレたってことだ

映画館の手前で 映画より衝撃で
泣きたいのは 僕なのになんで 君が泣いてるのか
「ユメラブ」/Thinking Dogs

 まず冒頭から伝わってくるのは、フラレた<僕>が受けた大きな衝撃ですね。本当ならいつも通りにデートして、仲良く映画を観て、何事もなく今日を終えるつもりだった。それなのに突然、告げられたお別れ…。きっと<僕>は今の今まで、続いてゆく二人の愛を、未来を、信じて疑わなかったのでしょう。それゆえに<なんで君が泣いてるのか>もわからないのです。

 でも「サヨナラ」を告げた<君>にとっては、おそらく突然の決断ではありません。ずっと前から迷い悩み苦しんでいたこと。だけど、夢を追う<僕>を気遣って一人で抱えていたこと。その問題の答えを、やっと伝える覚悟を持てたのが今日だったのです。そしてその想いが、涙と共に溢れ出したのではないでしょうか…。

もう僕の夢 信じること できないのかそれとも
僕は僕の 君は君の夢見てたのか
トキメいても キスをしても 手を繋ぎ歩いても
違う夢を 描いてたのに気づかないまま
この恋に おちてた
「ユメラブ」/Thinking Dogs

 もう<僕>の夢を信じることができないのか。最初からお互いに違う夢を見ていたのか。どちらも別れの原因の答えとして正解ではないような気がします。もちろん<君>は彼の夢も含め好きだったはず。夢を心から応援してくれていたはず。さらに今だって、好きな気持ちも応援する想いも変わらないはず。

 それでも、好きだけじゃどうにもならないことってあるんですよね…。これは想像ですが、多分いつだって<君>は<僕の夢>を信じてついてゆくことが第一優先で、自分の夢には“まだ時間があるから焦らず、いつか、いつの日か”と蓋をしていたのでしょう。ただ、皮肉なことに、現実では夢にタイムリミットが刻々と迫ってくる場合も多々…。

お揃いのシルバーリング もう似合わなくなって
ホントの君は ダイヤの指輪を 求めてたんだ
「ユメラブ」/Thinking Dogs

 たとえば、結婚。両親が元気なうちに花嫁姿を見せたいと思ったら、気長にしてはいられません。たとえば、出産。女性は子どもを産める年齢に限界があります。すると、蓋をしていたはずの<夢>が今の自分に「本当にそれでいいの?」と語りかけてくるのです。そして、その夢が<僕の夢>とは同時に叶えられないとしたら、どちらかを諦めなければならないんですよね。

もう僕の夢 信じること できないと言うのなら
僕は僕の 君は君の夢叶えよう
この別れで 僕はもっと 僕の夢に近づく
傷だらけの 心歌うほどロックスターは
誰かの 夢になる
「ユメラブ」/Thinking Dogs

 結果<君>は、二人の愛より未来より、彼の夢、自分の夢を守るために「サヨナラ」を選んだのでしょう。その決断は今は二人にとって、悲しくて仕方ないものに違いありません。でも<この別れで 僕はもっと 僕の夢に近づく>し、君も君の夢に近づく。やがては、お互いにそれぞれの夢を叶え、かつての“分かれ道”に向かって微笑むことができる日がやってくるのではないでしょうか。

 そんな悲しくも、希望的な失恋ソングが、Thinking Dogsの「ユメラブ」なんです。あなたは今、自分の夢と恋人の夢のベクトルの違いに悩んではいませんか? または最近、夢が原因で別れたショックを引きずってはいませんか? 一人で悩み苦しんでいる時には是非、じっくりとこの歌を聴いてみてください…!