あの手この手で掴み取る愛のおはなし

 2024年5月29日に“tonari no Hanako”が新曲「あの手この手で feat. 大塚紗英」をリリースしました。8bitのゲーム音でtonari no Hanako節が炸裂した毒のある歌詞がPOPにかわいく表現され、声優としても活躍する大塚紗英を最大限に表したセリフパートもあるtonari no Hanakoの新境地となる1曲となっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“tonari no Hanako”のame(Vo.)による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「あの手この手で feat. 大塚紗英」にまつわるお話です。自身が大学時代に出会った、あの手この手で恋を叶える猛者。一体、どんな手で恋を叶えたのでしょうか…。今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。


ameの朗読を聞く

私が大学生の頃に出会った、あの手この手で恋を叶える猛者の話をしたい。
 
猛者、その名もリサ(仮名)。
当時18歳だった彼女は、共通の趣味を通じて出会った10歳近く年上の男性(社会人)に恋をしていた。
仲は良いものの、年の差もあり、当然相手からは恋愛対象として見られはしない。
その上、リサが恋愛感情を抱いていることを相手も察したようで、やんわりと距離を取られる始末であった。
だが、そこで引き下がれるほど軽い愛ではなかったのだ。
リサは私に言った。
「私これから1年かけて、妹作戦やるから。」
妹作戦…?
何のことかよく分からなかったが、その口調から相当の自信と覚悟を感じ取れた。
 
後日、リサは唐突に意中の男性に告白した。
そして誰もが予想した通り、見事に玉砕した。
「年が離れすぎていて恋愛対象に見れない」と言われたらしい。
だが、これはリサの計算の範囲内だった。
そこで彼女はすかさず
「だよね、分かってたから大丈夫。
でも人として好きなのは変わらないから、お兄ちゃんみたいに思ってもいい?
私お兄ちゃんいなかったから、妹みたいになれたら嬉しい」と可憐な攻撃をかました。
大人な彼は「うん、それはもちろん」と返事をしてくれたらしい。
 
兄と妹、という雰囲気の関係性になってしまえば、ますます恋人のような関係性からは遠ざかるのでは…と懸念した私の心配は杞憂だった。
 
ここから彼の「恋愛対象として求められる」という警戒心はどんどん解けていき、
2人はますます仲良くなっていった。
悩み相談に乗ってもらったり、共通の趣味で盛り上がったり、
まるで本当の兄と妹のように打ち解けていた。
自分の気持ちの押し付けはせず、相手に負担をかけないポジションを見極め、
あくまで相手の心地よい距離感を優先して関係性を築く。
相手が求めるものを考えて注ぎ続ける、リサはまさにその手のプロだった。
距離が縮まって関係が安定したタイミングで「最近気になる人ができたかも~」なんて、
彼を複雑な心境にさせる揺さぶりの呪文まで唱えていたらしい…
 
そして1年半後、「リサがいない日常は考えられなくなった」と彼に言わせ、
見事に恋人のポジションをGETしたのである。
 
若干18歳だった彼女に、当時からこの景色が見えていたのだとしたら…
彼女は一体人生何周目なのだろう、未来から来たのかよ、なんて思わざるを得ないほど私は衝撃を受けた。
 
“あの手この手で”愛を手繰り寄せる、それほど強い信念と深い愛(?)。
彼女のことを、今でも心のどこかで超絶リスペクトしている自分がいる。
これこそが、自分の描く人生を手繰り寄せるバイブルのような気もしてくる。
 
私の中で伝説となったリサは、今日も未来も、
あの手この手で“旦那”に愛を伝えていくのだろうな、と思う。
 
<tonari no Hanako・ame>



◆紹介曲「あの手この手で feat. 大塚紗英
作詞:ame
作曲:ame