2023年9月6日に“yutori”が2nd mini album『夜間逃避行』をリリース!夜をテーマにバラエティの飛んだ楽曲で紡がれた今作は、「煙より」「センチメンタル」「ワンルーム」といったデジタルシングルに加え、ライブでのみ演奏されてきた楽曲や完全新曲など、全9曲を収録。5曲目「ヒメイドディストーション」では、ヒトリエ・シノダがアレンジを担当するなど、彼女たちの名刺となる1枚が完成。9曲目「眠るためのうた」はCDのみの収録曲で、ボーカル・佐藤古都子による弾き語り楽曲となっております。
さて、今日のうたコラムではそんな“yutori”による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は【前編】です。執筆は佐藤古都子が担当!今作『夜間逃避行』で焦点を当てたテーマについて綴っていただきました。みなさんは「大人になる」とはどういうことだと思いますか…?
大人になるとは、一体どういう事だろうか。
自分でお金を稼ぐ事だろうか。
はたまた家庭を築く事だろうか。
大人になるとは、
私は、この世の中のたった1人の誰かを愛し、そして慈しむ事だと思っている。
人間、生きていれば必ず出逢いや別れを経験する。
この出逢いの中で、名前を知り、声を知り、笑い方を知る相手は何人いるのだろう。
その中で恋をする相手はごく一握り。
そして、恋をして仕舞えば最後、愛してしまう。
しかし、愛してしまうと後にはなかなか引けない。
そもそも恋とは、相手の良い部分が「好き」であり、
愛とは、相手の良い部分も悪い部分も「好きになってしまう」ものだ。
気付かぬ内に、相手の根底の奥深くまで見つめ、気付けば、抜け出せなくなっている。
この世で産声を上げてから19年の小娘の言葉はきっと、これを読んでいるあなたにはただの戯言のように思えるだろう。
しかしこの小娘の考えを理解してとは言わないが、頭の奥の片隅にでも置いてもらえると嬉しい。
恋愛とは至極尊く、美しいものだ。
自分が恋に落ちた相手が、恋に落ちてくれるのだから。
だが現実には様々な恋愛がある。
「好意を伝えられたから、とりあえず付き合ってみる。」
など片方の好きという感情だけで成立する恋愛があれば、
「好意を互いが抱いていた。」
など両方の好きで成立する恋愛もある。
いつかは離れてしまうこともあるだろう。
大抵は、相手の嫌な部分を見つけてしまい、日々のストレスや苛立ちの積み重ねで、徐々に気持ちが崩れて行く。まるでグラグラと揺れる乳歯のように。
そしてその乳歯を少し押す些細なきっかけや一言で、スポンとその場から消えてしまうのだ。
消えてしまえば、痛い思いをすることがわかっているのに、乳歯が生えていた場所を舌でいじるよう、過去の思い出や写真を見返し、恋愛のリストカットをし、その痛みに泣いたり苦しむ。
そして傷が癒えた頃、また恋愛のリストカットを行い、さらに酷い痛みに悶え、苦しむのだ。
人間とは単純な生き物だ。
何年と繰り返してきた失敗を、形は違えど、敢えてするのだから。
『夜間逃避行』というミニアルバムは、恋愛のリストカットへ焦点を当てた作品となっている。
冒頭で話したように、私は大人になることを「たった1人の誰かを愛し、慈しむ事」だと思っている。
大人になれなかったあなたは、この作品に自己投影し、傷つき、そして苦しむだろう。
でも、それでいい。
「たった1人の誰かを愛し、慈しむ」日まで、一緒に苦しもう。
いつかその日があなたに来ることを願って。
<yutori 佐藤古都子(Vo.Gt.)>
◆2nd mini album『夜間逃避行』
2023年9月6日発売
<収録曲>
1.ワンルーム
2.会いたくなって、飛んだバイト
3.センチメンタル
4.安眠剤
5.ヒメイドディストーション
6.もしも
7.煩イ
8.煙より
9.眠るためのうた (Bedroom ver.)※CD only