彼の魂の帰還が無事叶うように祈りを込めて歌いました。

 2022年10月12日に“花*花”がNew Mini Album『5B2H』をリリースしました。2021年6月にリリースされたミニアルバム『52R45』は、 コロナ禍に於いて感じた「あの人に会いに行きたい」「どこかへ遠くへ行きたい」鬱屈な気持ちを、爽快にポップに表現した1枚となりました。それに対し今回は「あの場所に帰る(還る)」郷愁や帰っていくあの人の無事を願い送り出す…といった、前作とは真反対のコンセプトで制作された1枚に。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“花*花”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾。執筆はこじまいづみが担当。綴っていただいたのは、収録曲「最後の散歩」のお話です。「旅からの帰還」をコンセプトにした曲作りのなかで、思い出したのは愛しき小さい家族のこと。歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。



こんにちは、こじまいづみです。
今日は、先日リリースされたミニアルバム『5B2H』の収録曲の中から、「最後の散歩」について、思い出話を交えながらご紹介したいと思います。
 
今作は花*花初めての、コンセプトを決めてからの曲作りにチャレンジすることになりました。
「旅からの帰還」をお題にして相方まきちゃんとそれぞれ曲を生むことになりまして。
 
昨年の春、15年側にいた犬のいのちの旅の最後に向き合う時間があったことを思い出しました。
 
最近のペット葬ってすごいですね。
ちゃんと火葬されて、小さな骨壷に入って帰ってくるの。
そんな形になり戻ってきた彼を私もなんとなく、リビングの1番見える場所に置き、季節の花や昔の写真と共に飾っていました。
 
お盆を過ぎたころ、この骨はこれから先どうしようね? と言う話になり。
彼が毎日散歩をしていた場所に少しづつ散骨しようということに決まりました。
 
数日降り続いた雨が上がった深夜、濡れた舗道を、骨壷を持って久しぶりに散歩に行きました。
 
15年間毎日、歩いていた近所の道々。
子犬の頃はあちこちに興味があり過ぎてなかなか進まなかったり。成犬になってもちょっと怖がりで向かってくる他の犬に震えつつすれ違ったり。
気持ちのいい秋の夜は、缶ビールで涼む飼い主の横で、夕涼みにつきあってくれたりしました。
年々年老い、歩く速度も遅くなり、それでも亡くなる2日前までゆっくりゆっくり自分の足で歩いていた彼のいろんなシーンを思い出して時々泣きながら、骨を帰していきました。
 
最後に高野川の河川に降りた時、月が綺麗で、何となく
ああ、彼があそこに向かって元気に走っていきますように。とお祈りしました。
 
散歩中には離すことの無かったリードを手放したような気持ちになりました。
 
曲作りの時も、何度もその道をまた行ったり来たりしながら、その時の景色や匂い、空気の流れをできるだけ忠実に音にパッケージングしたいと、先述の思い出をなぞり続けました。
 
彼の一生の中で1番楽しかった旅は、家から高野川までの短い距離だったけど、その中にこんなに沢山の思い出を同行者の私に与えてくれてたんだなあと、今も、思い返してはじんわり寂しくてあったかい気持ちになります。
 
めちゃくちゃプライベートな、でも嘘偽りのない想いを彼の魂の帰還が無事叶うように祈りを込めて歌いました。
 
愛しい小さい家族を見送ったいろんな人に少しでも寄り添えるような1曲になれば
幸いです。

<花*花・こじまいづみ>


◆紹介曲「最後の散歩
作詞:こじまいづみ
作曲:こじまいづみ

◆New Mini Album『5B2H』(読み:ゴー・バック・トゥ・エイチ)
2022年10月12日発売
 
<収録曲>
1. Shenandoah
2. 旨し糧(5B2H ver.)
3. またいつか
4. Pigeon blood
5. 旅の終わり
6. 最後の散歩
Bonus Track:あ~よかった(pal*system mix)

◆Tour
11/4(金)【東京】eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
11/6(日)【仙台】誰も知らない劇場
11/19(土)【京都】someno kyoto
11/27(日)【福岡】border -live music&drinks-
12/1(木)【名古屋】Tokuzo -得三-
12/3(土)【岡山】MO:GLA
12/16(金)【大阪】吹田市文化会館メイシアター小ホール