何者でもなくても、貴方は貴方として尊重されるべき存在だ。

 2022年6月29日に“アツキタケトモ”が『Outsider - EP』をリリースしました。今作は、先行リリース済みの「Family」「Period」「Outsider」の3曲に新録の3曲を新たに加えた計6曲入り。表題曲「Outsider」のmixには気鋭のエンジニア小森雅仁を迎えたほか、各曲それぞれに多彩なアレンジャーやプレイヤーを迎えて制作された意欲作に仕上がっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“アツキタケトモ”による歌詞エッセイをお届け。“青春のキラキラ感”に身を投じることが出来ず、生きづらさを感じていたという学生時代。そうやって居場所のなさを感じたことがある自分だからこそ、生み出すことができた今作『Outsider - EP』への想いを明かしてくださいました。歌詞と併せて、受け取ってください。



常にまわりと馴染めない気がしていた学生時代。
 
体育祭は友達と倉庫裏に隠れてさぼっていた。何というか、“青春のキラキラ感”が当時の僕にとっては耐え難かったのだ。シンプルに運動が苦手で嫌いだったから、参加したくなかったのもあるけれど。
 
そんな日陰にいた僕は17歳のとき一度メジャーデビューをした。普段は学校で全く目立たない存在であったが、さすがにその時ばかりは物珍しく見えたのか、普段絶対話しかけて来ないタイプの女子生徒に話しかけられた。
 
「竹友くんの歌、街で流れてたよー!すごいね。」
 
今思えば素直にその応援を受け止めればいいだけの話なのだが、当時の僕には、「お前みたいな陰キャが調子ノッてるんじゃねぇよ」という牽制に聞こえた。
 
それくらい捻くれている性格だから、そりゃ生きづらいよな、と思う。当時、僕が縛り付けられていた(と思い込んでいた)スクールカースト的なものって、もちろん構造上存在していた部分もあったとは思うけど、多くは自分の内面世界での要素が大きかったのだと思う。“青春のキラキラ感”に身を投じることが出来ない疎外感との戦いだった。
 
今も多かれ少なかれ、そういった面倒くさい自分の性質は存在するのだが、行き過ぎないようにコントロールする術は当時より身についた気がする。大人になったということなのかもしれない。子どもの頃は大人になれば、身体と同じく心も成長して悩みなんか無くなるかと思っていたが、基本的な性格は驚くほど変わらない。変わったのは悩みが生じたときにどう対処するか、その方法論の引き出しが少し増えたことくらいだ。
 
友達だったり、マネージャーだったり、尊敬できる人の話を聞きながら、自己肯定感が少し上がってきたところもある。気持ちを前向きに持ち、自分を認めてあげる作業が最近徐々に出来るようになってきた気がする。
 
状況や環境に限らず、悩みはいくらでも生み出すことができる。自分の内側から。そこに浸り続けることのダメージというのは確実にある。だからかなり注意深く、そいつを避けながら前向きに生きていきたい、と試行錯誤する今日この頃である。
 
今回リリースした『Outsider - EP』という作品に込めたのは、ここまで綴って来たような、どこか生きづらいとか、馴染めないとか、そういう気持ちを持って生きている人々の人生を肯定したいという思いだ。
 
そのために必要なのは「明けない夜はない」みたいな精神論や、リフレーミングみたいな自己啓発の類の言葉を綴ることではなく、なるべく自分の人生を忠実に書き出すことが重要だと考えながら、誠実に言葉を紡いだ。全て実体験・ノンフィクション、ということではなく、“嘘をつかない”ということ。
 
それだけ誠実に向き合って制作したこの作品が受け入れられるということは、僕の人生を受け入れてもらえた、という感覚にもつながるし、同時に僕と同じような疎外感、劣等感を抱いている人の人生を受け入れることにもつながる気がしている。そういう相互作用を求めて今作を制作した。“共感”とか“等身大”ともまた違う感覚。
 
今までほぼワンマン体制でやっていた制作に、たくさんのプレイヤーやアレンジャー、新しいエンジニアを迎え入れたのも、そういった他者とのコミュニケーションの間に生まれる音が今作には必要だと考えてのことだった。
 
人それぞれ様々な人生がある。「普通」に見える人にも「異物」な部分が必ずあるし、そもそも人は一人一人違う存在なので、同一化できなくて当たり前なのである。それなのに枠やカテゴライズを人は作るし、何故かそこに属したくなるし、属せないと不安になったりする。全く不思議な生き物だ。でもそれでいい。何者でもなくても、貴方は貴方として尊重されるべき存在だ。そして、それは僕自身に言い聞かせている節もある。
 
家庭に居場所がなくても、学校に居場所がなくても、その外にもちゃんと世界があることが見える世の中であって欲しい。性別問わず誰かを愛することを否定されない世の中であって欲しい。強い願いと祈り、意志を込めて言葉を紡いだ作品。どうか一人でも多くの人に受け取ってもらいたい。
 
<アツキタケトモ>


◆『Outsider - EP』
2022年6月29日発売
 
<収録曲>
1. Untitled 
2. Outsider 
3. Family 
4. Shape of Love 
5. Period 
6.それだけのことなのに