最初から二番目だと気付いていた。

 2022年1月19日に“moon drop”が1st Full Album『この掌がまだ君を覚えている』をリリース!キーボーディスト・SUNNY氏をプロデューサーに迎えた「水色とセーラー服」「リタ」など、ストリングスを中心としたバンドサウンド以外の音を巧みに組み合わせた意欲的な楽曲や、ライブハウスを中心に活動を続けてきたバンドの雰囲気がソリッドに表現された「君と夜風」など、全11曲のドラマチックなラブソングが収録されております。
 
 さて今日のうたコラムでは、そんな最新作を放つ“moon drop”の浜口 飛雄也(Vo.)による歌詞エッセイをお届け。今回が最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲この雪に紛れてのお話です。大切なひとの一番大切なひとにはなれないとわかっていても…。今、切ない恋をしている方へこの歌詞とエッセイが届きますように…!



本当は分かっていた
花はいつか枯れるし、
始まりがあるから終わりがある
いわゆる大人の恋ってやつは、
どこまでも子供だったりする
この肌を刺すような痛みは寒さからなのか、それとも
この雪に紛れて
言ってしまいたかった
 
白い息が空へ上がる
とぼとぼと歩く
すれ違う人を目で追って振り返る
向こうで微笑む貴方ともう一人
観たくもないものほど
目に入ってしまうから残酷だ
分かっていたような顔の下で大きくなる心臓の鼓動
いつでも心の底は見えなかったし、見せなかった
最初から二番目だと気付いていた
 
貴方の薬指にはめたそれと、私の頬を伝う雫
街のイルミネーションがいたずらに照らし合って
綺麗に光ってた
 
どうか、最後まで本当のことは言わないで
目を瞑ったままで側に居るから
二人で居る時間だけ、
この瞬間だけは嘘にならないで欲しい
そう、そのままでいい
だから今だけは優しい嘘をついてほしい
 
甘ったるい思い出が蘇る
握った手と手
車の中でしたキスの味
背中に飛び乗った帰り道
このままが続くことは無いと分かっていた
 
匂いと記憶は繋がっている
あれから日が経った今でも鮮明に思い出す
ほつれかけたマフラーに染み付いた貴方の匂い
忘れたいと思えば思うほどに
いつの間にか手繰り寄せている
こんなことになるなら、いっそ出会わなければ
なんてことは思わないけど
せめて記憶と一緒に
何も知らなかったあの頃に、
あの夜に連れて行って欲しかった
 
いつでも明日からのことなんて考えずに
いつでも貴方以外のことから目を逸らしてきた
これまで過ごしてきたツケが回ってきただけ
だからもう、これで最後にします
 
この夜が明ける頃、私の前に貴方は居ないでしょう
この雪が溶ける頃、貴方の前に私は居ないでしょう
私が貴方を想っていたように、
貴方を思っていてくれる人の側に居てほしい
 
そして、どこまでもズルくて
どこまでも子供のままでいる私は
まだ分け合えるものが残るのなら
今度は貴方から会いに来てほしいと
その想いだけ心に蓋をして閉じ込めておきます
 
一つだけまたわがままを言ってもいいのなら
この浮かれた街のようにいつか
私も輝けますように

<moon drop・浜口飛雄也>



◆紹介曲「この雪に紛れて
作詞:浜口飛雄也
作曲:浜口飛雄也・坂知哉

◆配信SG「この雪に紛れて」 
2021年12月8日(水)リリース



配信URL:https://moondrop.lnk.to/konoyukinimagirete