佐藤千亜妃

SNS殺人。

 2021年9月15日に“佐藤千亜妃”が2ndアルバム『KOE』をリリース!今作は“声”というテーマのもとに制作。フジテレビ系ドラマ『レンアイ漫画家』主題歌の「カタワレ」、『NYLON JAPAN』創刊15周年プロジェクト映画主題歌の「転がるビー玉」など、計12曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作をリリースした“佐藤千亜妃”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「Who Am I」に通ずるお話です。人の生き死にに関わるショッキングなニュースがきっかけで生まれたこの曲。わたしたちは何のために言葉を選ぶのか。歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。

~歌詞エッセイ第1弾:「Who Am I」~

 言葉を選ぶ、ということの難しさに常日頃ぶつかる。自分だけでは無いと思う。昔はこんなに、誰かを傷つける恐れが無いか逡巡しながら話していただろうか。正直きっと、そうでもなかった。今思えば恐ろしいことだ。しかし、こういった意識の変化を感じている人は、昨今増えているのではないだろうか。自分の経験値から思うこともあるし、時代的側面も無関係ではないだろう(本来、時代的な事象としてではなく、昔から全人類が本質的に協議すべき課題だったのだとも思う)。

 そこで今回は、「Who Am I」という曲について話させてもらいたいと思う。この曲を作ったのは去年の5月だった。きっかけは、テラスハウスというリアリティーショーに出演していた、木村花さんの死である。自殺だった。未だに全くもって記憶から消えない、自分にとって物凄くショッキングな事件である。

 当時、発信は一切しなかったが、思うことは色々あった。まず、私がテラスハウスを毎週見ていたこと。そしてSNSが炎上していく様をリアルタイムで感じていたこと。死を予感させる投稿を彼女がしていたこと。そして本当に死んでしまったこと。"まさかこんなことになるとは"、と呆然としたこと。

 SNSで彼女は一部の人間に叩かれていた。死を選んだ理由は本人しか知りえないが、おそらく数えきれないアンチの言葉に殺されたのだろう、と、事件を知るほとんどの人がそう理解したのではないだろうか。彼女の母親が、言葉に思いやりを持ってほしい、とSNSで投げかけていたことからも察することが出来る。アンチの人々の心無い言葉は、確実に彼女の心を切り刻んだと思う。事件を受け止めきれず、悲しみや怒りや喪失感が襲い、本当に長い期間呆然としていた。

 しかし、自分はどうだったろう。と、考え始めた。テラスハウスを呑気に見ていた自分は、この事件に加担していたことにはならないだろうか、と。しばらく頭の中はそのことでいっぱいになった。見る人がいるから、そのコンテンツは生まれるのだ。彼女の苦悩も知らずに、のうのうと番組を見ていたんじゃないのか、と、自分を恥じた。アンチが投げた言葉は最悪なものばかりだったが、自分だって正義のヒーローじゃないではないかと、思ってしまったのだ。ここでの自分はただの傍観者であった。

 何も手につかない日々が続いたけれど、破片だけ出来ていた楽曲を仕上げようと思った。渦巻く感情を絞り出すような作業だった。コロナ禍で混沌としている世界の片隅で、自死について考えていた。同時に生きることについて考えていた。眠れなかった。弱さ、不甲斐なさ、何者でもない自分のことを思った。そうして生まれた曲が「Who Am I」だ。

 生きることと向き合えば、他者とも向き合うことになる。たかがネットだアングラだSNSだ、嫌なら見なければいい、と、そんな言い訳は通用しない。外に発信し、自分以外の誰かが読める時点で、独り言の域はとうに超えている。言葉は世界を形成し、自分を形成する。そして他人を殺したりもする。救うことだってある。だからこそ、言葉のやりとりがある場所は、等しく思いやりが必要である。今強くそう思う。

 そして、自分は何者なのか?と問いかける時、自分に恥ずかしくない答えを持っていたいと思う。人を嘲笑うだけのアンチです、と名のりたい人間なんて居ないはずだ。ただの傍観者でした、なんてふうに名のりたくもない。だから私はこの曲を歌うことで、今のあなたに問い、同時に自分自身に問いかけ続けようと思っている。

<佐藤千亜妃>

◆紹介曲「Who Am I
作詞:佐藤千亜妃
作曲:佐藤千亜妃

◆Newアルバム『KOE』
2021年9月15日発売
通常盤 UPCH-20592  ¥3,300(tax in)
初回限定盤 UPCH-29408 ¥6,380(tax in)

<収録曲>
1. Who Am I
2. rainy rainy rainy blues
3. 声
4. カタワレ
5. 甘い煙
6. 転がるビー玉
7. リナリア
8. 棺
9. Love her...
10. 愛が通り過ぎて
11. ランドマーク
12. 橙ラプソディー
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