なんだか今、イラ立っていたり心がトゲトゲしてるなーと思っている方

 2020年にCDデビュー25周年を迎えた、シンガーソングライター・川村結花。今日のうたコラムでは、その記念企画として2020年~2021年の2年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けしてまいります!更新は毎月第4木曜。

 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第18回をお届けいたします。

第18回歌詞エッセイ:「Travels

「にんげん~50ねん~~」と本能寺の変の折炎の中で舞う織田信長公、というシーンをよく時代劇で目にします(特に大河ドラマ)。あの舞は古い能、正確には能の原型にあたるものらしいですが、その演目であるところの「敦盛」の中の一節、ということはよく知られている歴史的知識だと思われます。ちなみにこれは当時の人間の平均寿命が50年という訳ではないそうですね(わたしはすっかりそう思っていましたが)。

なににせよ、「人間50年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり」というこの一節。人生なんぞ夢幻の如きもの。ほんまそうやわ。なんかもう胸にグッと来ます。それと同じようなことで言えば豊臣秀吉公の辞世であるところの「露と落ち 露と消えにし我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」てこんなん泣いてまうやん。

そら信長公も秀吉公も生前偉大なことと同じくらい否それ以上に酷いこともさんざんしはったやろうけど、今はとりあえずそういうことは置いといて。なにしろどれだけ有名な歴史上の人物でさえ「人の一生とはなんと儚いものであろうか」という歌を舞ったり詠んだりする訳であります。

そう、人の一生とはなんと儚いものなのであろうかと感じる気持ちは、古今東西同じなのだなあと思います。そしてそのことを思うたびに、こんな儚い一生やのに日々イラついたりしてばっかりでなんでもっと優しく穏やかに生きれんもんかいな、と反省しきりなのであります。

ということも含め、わたしの曲「Travels」の出だし。

どんなに長く 一緒にいれたとしても 100年にはとても足りない
どうしてもっと早く出会わなかったの


大好きな人がいる。家族、友人、仲間。100年どころか永遠に一緒にいたい。けれどそんなこと叶わないとわかっている。永遠なんて無理だから。一生は儚いから。ならば、そんな儚い時間なら、争ったり疑ったり奪いあったりせず、お互い相手に優しくいたい。本当にそう思うのです。

巡る星の意味さえ知らずに いつかこの目が閉じられる
たとえば1日だけでもいい 旅が長く続きますように
あなたとずっといられますように


そう、巡る星の意味もエジプトのピラミッドの謎も坂本龍馬の真の暗殺犯もわからないまま、多分わたしもこの目を閉じる時が来るのでしょう。今などこんなコロナ禍ゆえ1日1日がやたら長く感じる気がしますが、実際のところ時間は平時と同じに流れているのですよね。同じ1日ならば気持ちよく過ごせたほうがどんなにいいことでしょう。大好きな人とならなおさら。

そんな気持ちを込めて作った1999年リリースの「Travels」。ここ最近わたしのYouTubeチャンネルにて当時NYにて撮影したMVが公開になっています。自分でもとっても好きな作品です。ぜひご覧になってみてくださいね。


そしてなんだか今、イラ立っていたり心がトゲトゲしてるなーと思っている方。大切な人に優しい言葉をかけてみるとかメールなどしてみてはいかがでしょうか。かく言うわたしはこれを書いている最中に思い立ち、たった今ある人にご機嫌伺いの電話をしました(←ほんまよ)。気持ちが柔らかくなりました。笑顔にもなりました。相手もいっぱい笑ってくれました。よかった。今日はいい日。儚い一生のうちのほんの小さないい日。あなたも是非ね。ではまた来月!

<川村結花>

◆紹介曲「Travels
作詞:川村結花
作曲:川村結花

◆「Travels」MV
https://www.youtube.com/watch?v=igRXpI26Bd0

◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
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