ことあるごとに、乗り越えて行くには「心」を大事にすることだ。

 2020年11月11日に“熊木杏里”がニューアルバム『なにが心にあればいい?』をリリース。思うように外にも出られず、不安や焦燥を感じてしまう世の中になってしまった今だからこそ、レコーディングというものにライブを込め、アルバムとして届けよう。そんな想いが強く形となって出来た今作。珠玉の11曲をじっくりとご堪能ください。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“熊木杏里”による歌詞エッセイを3週連続でお届けいたします。今回は第1弾。綴っていただいたのは、今作の制作に至るまでの心情と、コロナ禍で日毎変わってゆく情勢とともに進めた曲作りに対する想いです。今も不安や悲しみのなかにいるあなたへ、このエッセイと今作の歌詞が届きますように…!

~歌詞エッセイ第1弾~

アルバムを作りたかった。
それは心の自動的な欲求のような気もする。

初夏にアコースティックツアーをしようと決めていた。私がピアノを弾き、ベース、ギターと2、3人編成の形で各地行けるように。昨今、東京を軸に活動していると思われているかもしれないが本意ではない。幾らだって全国へ行き歌いたい。秋にリリースをして、年内に発売ライブもしようと。アルバムを作る事で、歌いに行ける。それが今年初めの頃の目論見だった。

3月あたりに、世間と世界に「コロナウィルス」と言うワードと事態が散らばり始めた。他人事にしていたが次第に音楽業界全体にも散らばり、ライブは厳しそうだとなった。

4月には、音楽は世界の果てに置き去りにし、生きるために生きようと「自粛」が始まった。何の心の準備もないまま、今まで会えていた人達に会えなくなり、遮られた行き場のないエネルギーは、鬱々と穴蔵に溜まっていくようだった。

けれど私は切り替えが早い。それは自分でも気に入っているポイントで、どんな事があろうとストンと今を受け入れてしまえば、新たな道も見えるのだと思っている。

予定通り曲を作ろう。日毎変わってゆく情勢と共に。そうして、机に向かう時間が増えた。私よりも悲しんでいる人がいたら、声をかけてあげたかった。私よりも不安な人がいたら、話を聞いて大丈夫だと言ってあげたいと思った。不思議なことに自分への不安はなかった。この先どうなるかは、今綴りゆく歌たちが教えてくれるだろうと思った。ことあるごとに、乗り越えて行くには「心」を大事にすることだ。例え、世の中が不穏だとしても、自分で自分を穏やかにできる術を知っておけたらいい。

私の心は曲を作ることでも穏やかでいられた。それをヤマハのディレクターやアレンジを務めてくれている森田くんにメールで届けて、少しずつ形にしてゆく。道は生きていた。

ライブの光景には、ファンのみんなの顔や拍手や声援がある。それが思い出された。この関係が途絶えないように願いと希望を込めた。みんなが心を傷めた時間を、みんなで取り戻すのだ。ことあるごとに私たちは強くなりながら。

そうしてアルバム制作は、
水面下から徐々に進んで行った。

<熊木杏里>

◆『なにが心にあればいい?』
2020年11月11日発売
初回限定盤 YCCW-10376/B \4,800+ 税
通常盤 YCCW-10377 \2,727+ 税

<収録曲>
1. life
2. 幸せの塗り方
3. ことあるごとに
4. 星天の約束
5. 光のループ
6. 一輪
7. 見ていたいよ
8. ノスタルジア
9. 青葉吹く
10. 雪~二人の道~
11. 秤