“美”に支配される。

 2020年9月9日に“ちゃんみな”がニューシングル「Angel」をリリース。全4曲が収録される今作。タイトル曲「Angel」はラテン調のギターのリフが印象的なサマーチューンで、エナジードリンクブランド『モンスターエナジー』の新商品“モンスター ウルトラパラダイス”とのタイアップ曲となっております…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ちゃんみな”によるスペシャルエッセイを【前編】と【後編】でお届け!【前編】に続く【後編】で綴っていただいたのは、音楽にも通ずる面がが多いという“美”についてのお話。他人の理想の美や、自分の理想の美に囚われすぎているあなたへ、彼女のエッセイと音楽が届きますように。

~歌詞エッセイ【後編】:“美”に支配される~

時々、一体何人の人間が自身の美の欠落に絶望をして自ら命を絶ったのだろうと考える。

私が思うに美しさというのは、音楽と共通するところが沢山ある。どちらも奥が深すぎて、一時はとんでもなく楽しくて癒されるものだが、それを追求していけばいくほど、抜け出せなくなり、深海よりも深くて謎めいたところから睨み返される。とても恐ろしいものだ。美しさと、芸術、芸事、アートは切っても切れないものがある。

じゃあ、美しさとは一体何か。もちろん種類は沢山ある。感情的な美しさ、外見的な美しさ、内側に秘める美しさ、自然美、植物美、動物美、刹那美、儚い美、グダグダな美、淫らな美...つまり、生きていると普通に数々の美に触れている。

問題なのは、常に問題になっている事。それ自体が紛れもない問題だ。

今回は人間美について考えてみた。まずは、人間の内側の美について話そう。私が人間としての美しさ、つまり魅力を感じる部分については沢山ある。純な心を持ち、自分の色を理解できている、人に歩み寄れる、何かを信じている、何かを生み出せる強さがある、などなど。でもそんなのは正直、10割で来られるとしんどいものがある。つまらない。出来すぎている事が美しいかといったらそうでもないし、人間の特性によりけりで、それを持つものの人格と心とが重なりバランスが整ってやっと美しい。いや、さらに言えば、その全てのバランスが整った人間が私に出会って、やっと、やっと美しいんだ。

何でって、だって、今まで散々言ってきた事は全て私の「好み」に過ぎないからだ。だからこそなのか、こういう話は、合う、合わない、という表現をされる事が多い。

本題は、人間の外見の美しさについて。これは内面に比べて、それこそ「好み」が浮き彫りになるし、わかりやすい。何と言っても、人間の第一印象、窓口になる。地球上には色々な骨格、肌の色、目の色、があるにもかかわらず、好みがどうとかを置いておいて、単純にストレスが多いのも事実。

ここ最近は、SNSに簡単に顔を上げられて簡単に裁判台に上がる事ができる。それと同時に私たちは、簡単に人の顔を見ることができて、簡単に裁判長になれる。他人の美の理想に押し潰されそうになったり、自身の美の理想に押し潰されそうになったり、なんだったら自分の美で他人を押し潰そうとしたり。とにかくみんなペッシャンコだ。

私もその一人。私は人に比べて、小さい頃から私が美しいか美しくないかを目の前で意見される事が多かった。物心がついた時からクラシックバレエをやっていたり、ヒップホップダンス、芸能事務所のオーディションを受けまくりの幼少期。芸事にどっぷりはまり、とにかくステージが大好きだった。

でもステージには、そのようなジャッジが付いて回る。他人の好みに支配される事は多々ある。そこから高校生ラップ選手権に挑戦し、メジャーデビューを果たし、今の今まで一体何万回美しくないと言われ、何万回美しいと言われたかわからない。

私の場合は、自身の美の理想にペッシャンコになった。その理想というのは、他人からも自分からも作られているものだった。とにかく人生で何度も、痩せたり太ったりを繰り返した。自分好みの美になるために。そしてこれは矛盾しているのだけど、他人にもそれを認めて欲しかった。

今思えば、何をやってもね、どんな見た目でいようが、人の好みがある限りは好きとか嫌いとか言われてしまうんだよ。そんな世の中は悲しいけど、自分に好かれるには“好き”を増やしていくことしかないと思った。前回のエッセイの、人を許せる時に自分も許せると同じで、人を好きになる時に、自分も好きになれるのだと、私は思う。

どんな見た目の人間も涙が出るほど美しい、そう心から思えた時にはもう、私の心は私に夢中になっていた。女として生まれた私の体や顔、表情には、沢山の知識と経験が詰め込まれている。人が私を美しいと認めてくれる事も諦めたわけじゃない。自分の理想の美が、紛れもなくこの私である事を信じている。もちろん、たまに疲れる時もあるけど、その時は、休もうと思う。

必死になりすぎると、自分の顔に刃物を刺したくなるような気持ちになる事もある。そう思った事がある人は少なくないと思う。美しさには、音楽同様正解がない。あるのは、好みだ。その好みというのが厄介者だが、私たちはそれよりももっと寛大だと信じている。

これからも、そんな美しさと音楽を作っていきたい。

<ちゃんみな>

◆New Single 「Angel」
2020年9月9日発売
初回限定盤 WPZL-31771 ¥2,300+税
通常盤 WPCL-13226 ¥1,300+税

<収録曲>
M1. Angel
M2. Very Nice To Meet You
M3. Rainy Friday
M4. As Hell