鏡に映る私は透明だった
分かってた事でも知らないままの方が良かった
この歌は“傘の擬人法”がテーマとなり生まれた1曲だそう。言い換えれば、主人公の<私>は<君>にとって傘のような存在なのです。役目は、降り注ぐ雨や雪から<君>の心身を守ること、それだけ。たとえ自分が濡れても、凍えそうでも。それはイコール、自分の心模様など“無”にすることでしょう。だからこそ<鏡に映る私は透明だった>のです。
きっと<私>は<君>の傘になると決めたその日から、自分を犠牲にする覚悟もあったし、余計な感情は捨てるべきだと<分かってた>はず。でも、頭で理解することと、受け入れることは別なんですよね。ふと<鏡>のなかの自分を、客観的に見たとき<私>は、自身の<知らないままの方が良かった>現実を思い知ったのではないでしょうか。
私は君を濡らすこの忌々しい雨から
君を守る為のそれだけの傘
それは自分で決めたようで運命みたいなもの
何も望んではいけない 傷付くのが怖いから
もう一度あの日に戻れたとしても
繰り返してしまうでしょう 私はきっとそう
これまで一心に<君を濡らすこの忌々しい雨から 君を守る為>生きてきた自分。しかし今、そんな“傘”として在る<私>が揺らいでいるのが伝わってきます。本当に<それだけの傘>でいいのか。ずっと<何も望んではいけない>と思ってきたけれど、本当は…。とはいえ、過去に戻れたとして、他の選択などできないこともわかっているのです。
この雨がこのままずっと降れば
願ってはいけない そんな事は分かってる だけど
君に降る雨が いつの日か上がって青空を望んだら
その時私はきっと
そして<私>の胸の内には、本来<君を守る為のそれだけの傘>なら<願ってはいけない>気持ちが膨らんでゆきます。傘とは、雨が降っているからこそ、悲しみや苦しみが<君>を襲うからこそ、必要な存在。では<君>の幸せを願うのなら、自分が望むべきは<青空>であり、自分の存在が要らなくなるときが<君>が救われるときでしょう。
だけど<この雨がこのままずっと降れば>ずっと<君>のそばにいられる。そばにいたい。おそらくそれが<私>の密やかな願いです。もしかしたら<私>は、どうしても<君>のそばにいたくて<傘>になる選択をしたのかもしれません。ただ、相容れない<青空>と<傘>…。つまり<君>と<私>の幸せ、どちらもが叶うことは難しいのです。
あの雪の日 私を閉じ空を見上げた
泣いているように見えた笑顔に私は触れられない
また、傘である<私>にとってツラいのは、ずっとそばにいられないことだけではありません。<私>が必要とされているとき、いつも<君>は雨や雪に降られ、悲しい顔、苦しい顔、何かに耐える顔をしていたはず。<私>が見るのは<君>のツラい顔ばかり。<私>がいる限り、<君>は笑顔になれない。そのことを<あの雪の日>、<泣いているように見えた笑顔>を見て、改めて気づかされたのだと思います。
この雨がこのままずっと降れば
願ってはいけない そんな事は分かっていたはず
君に降る雨が いつの日か上がって青空を望んだら
その時私はきっと
雨が静かに上がり傘立てに置かれた傘
忘れた事さえ忘れられてしまったような
「umbrella」/SEKAI NO OWARI
いつか、自分の存在が<忘れた事さえ忘れられてしまったような>ものになった日。それは<君>が“ツラかったことさえ忘れられるようになった日”です。そんな日を想像しながら、今日も<私>は<君>を守るのです。切なく悲しく空しくも、自分なりの“愛”を貫こうと闘う傘。もしもあなたなら、最後の最後まで大切な誰かにとっての<傘>として生きることができますか? 是非<私>の気持ちで、SEKAI NO OWARI「umbrella」を聴いてみてください…!
◆紹介曲「umbrella」
作詞:Fukase
作曲:Fukase・Saori
◆ニューシングル「umbrella / Dropout」
2020年6月24日発売
初回限定盤A TYCT-39131 ¥1,800(税別)
初回限定盤B TYCT-39132 ¥1,800(税別)
通常盤 TYCT-30110 ¥1,200(税別)