川村結花

あの状態のことをわたしは「お迎えが来た」と呼んでいます。

 2020年は、シンガーソングライター“川村結花”のCDデビュー25周年のアニバーサリーイヤー!そこで、今日のうたコラムでは、その記念企画として1年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けいたします。更新は毎月第4木曜!
 
 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この1年の連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第5回をお届けいたします。

第5回歌詞エッセイ:「お迎えに来てね」

こんばんは。また今月も書かせていただきます歌詞エッセイ。ご縁あってこのページを読んでくださっているあなたは今、どこの町のどんな場所にいらっしゃるのでしょう。かくいう私はいまだ外出自粛要請の解除されていない東京にて、先月と同じく自宅自部屋の机に向かってこの原稿を書いています。特段代わり映えのしない先月と今月なのであります。が。

そんなこの1ヶ月の中で何かしら変わったことといえば、若干(ほんま若干ね)酒量が増えたということでしょうか。それでもやはりカロリーは気になるので糖質オフの黒糖焼酎を、選んではいますが量が増えたことには変わりなく。せやけどほんま酒でも飲まなやってられんわ、という気分でもあり。ええわこんな時やもんしゃあないがな、と己に言い訳する日々であります。黒糖焼酎に梅干し入れて水割りにして氷浮かべて。いやもうこの季節には最高です。

ちなみに黒糖焼酎といえば奄美大島。奄美大島といえばたくさんの素晴らしい歌手の方々がいらっしゃいますが、その中でもわたしが今日お話ししたいのは同じく奄美ご出身の城南海さん。彼女のデビュー曲の「アイツムギ」を書かせていただいたのは2009年でした。

昨年は10周年を迎えられ、オーチャードホールでの記念コンサートに、わたし川村結花もゲストとして出演させていただく幸せに預かりました。城南海ちゃんー、初めてお会いした時はまだ彼女はそれこそお酒も飲めない初々しい18歳だったというのに。時は流れ今や30歳。愛くるしい笑顔は変わらずとも、歌い手として何倍もたくましく美しくなった彼女は今も進化し続けていらっしゃいます。

そんな城南海ちゃんのデビュー曲「アイツムギ」を書かせていただいたことは、わたしにとって大きな光栄であり、なにより10年経った今でもずっと彼女がこの曲を大切に歌い続けてくださっているという事実ー、それほど作者冥利につきることがあるでしょうか。本当に感謝しかありません。

それにしてもこの曲ー、書いた時のことがほとんど思い出せないのです。要は、わたしで言うところの「お迎え状態」にあった、ということです。お迎え状態というのは、よくいろんなアーティストがインタビュー記事で「メロディや歌詞が降って来た」というような表現をしている、あれです。あの状態のことをわたしは「お迎えが来た」と呼んでいます。

わたしの場合、降って来るというよりは何かに強く引っ張られる感じ、「なんかようわからん思いのカタマリみたいなものが急にやって来て引っ張られるままにペンを走らせていたら気づいたらこんなん出来てた」というのがいつものお迎えパターンです。だからそういう曲が書けた時は、その時の記憶が全くありません。しかしもうそのことについては考えずただただ逆らわずいることにしました。お迎え状態の途中に自我が入って来て「あ、ここはこうしようかな」などとやってしまうと、もうその時点で「引っ張るチカラ」が途切れてしまう、正気に戻ってしまう、ということがたびたびあったからです。

そんな状態で書き上げた曲の中でも一層強烈なお迎えがやって来て一気に書き上げた曲、「アイツムギ」。特にⅡコーラス目の

“高い枝を見上げるあまり 足下の花を踏んでないか
誰かにとって大事なものを はかりにかけて汚してはないか
強さの意味を違えてないか 守ることで奪ってないか
勝ろうとしてひざまづかせて あなたに一体何が残ろうか”


というこの4行は、なぜこんな言葉が一気に出て来たのかいまだに謎であり、逆にわたしが教えられたような気がしているフレーズでもあります。

そんなわけで、わたしにとって「お迎え」とは曲作りにおいてなによりも尊く有り難く、それでいて得難いものであり、なので、日々出会えるのを切望してやまない奇跡のようなものなのであります。そしてそろそろでかいお迎えが来てくれる予感がしています。知らんけど。いや、どうか来て。お願い。というわけで今月も地味にがんばろー。

<川村結花>

◆紹介曲「アイツムギ
作詞:川村結花
作曲:川村結花

◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
【第1回】
【第2回】
【第3回】
【第4回】


このトピックをシェアする
  • LINEで送る
川村結花のうたコラム一覧