川村結花

ああ、ここ変えて正解。ヨカッタ。と確信したのでした。

 2020年は、シンガーソングライター“川村結花”のCDデビュー25周年のアニバーサリーイヤー!そこで、今日のうたコラムでは、その記念企画として1年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けいたします。更新は毎月第4木曜!
 
 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この1年の連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第2回をお届けいたします。

第2回歌詞エッセイ:エチュード~後編

こんにちは。ご機嫌いかがですか。わたしはといえば年が明けてほどなく自分の弾き語りLiveである「25年目の独奏」を大阪、京都、東京と終え、他にもろもろイベントに出演させていただいたりしながらこの冬を過ごしています。

前回、結局何もお話しできないまま終わってしまいました「エチュード」。「エチュード」はわたし川村結花の2002年リリース作品、『春盤』というミニアルバムの中の表題曲です。

もともとは冬の場面のつもりで作っていたこの曲でしたが、急遽春にリリースする『春盤』に収録されることとなり、そうなると季節感を冬から春へ変更する必要が出て来たのでした。

歌詞の内容をザックリ言えば「別れた恋人を思いながら一人町を歩いている。あなたじゃない誰かとの未来なんて今はまるで考えられない。けれどこの痛みもいつか癒えてしまうのであろう。このサヨナラも人生のエチュードということなのであろうか」というようなことでした。

これ自体普遍的な内容でもあることですし、特に問題はなかったのですが、いきなりアタマのフレーズが

“いつのまにか風は 乾いた落ち葉揺らし
12月のための歌が 町に溢れだして”


というー、春にリリースする春盤なのに。これはもう思いっきり冬やん。しかもクリスマス前やん。と、イメージできてしまうので、そこだけは書き直しました。そのバージョンはこちらです。

“いつのまにか風は 次の季節を連れて
新しい人波が 町に溢れだして”


季節はもう春。ぎこちないスーツ姿の新社会人や上京してきたばかりであろう新入生たちが希望を胸に抱き、エスカレーターに、電車のホームに、スクランブル交差点に、あらゆる場所に溢れ行き交う姿がきらきらまぶしい。これならだいたい3月から4月にかけてをイメージできるのではないか。

要は、「そんな季節の流れについて行けていない感」を出したかったアタマの2行。なので、最初のバージョンの「イルミネーションが灯るの冬の町、クリスマスを前に幸せそうな人たち」というような心温まる世間の雰囲気について行けない寂しさを表すより、「新年度。重たい冬服脱ぎ捨てよう。希望を抱こう。変わろう」などというキラキラ前向き砲撃のキツさを表したほうがより良いなあ、と思った瞬間、ああ、ここ変えて正解。ヨカッタ。と確信したのでした。かくして「エチュード」は出来上がったのでした。

そう、そして気づけばもうあと何週間かすれば、その季節がやって来るわけですね。おえーっ。春野菜、淡い色の洋服、桜、、、イメージとしての春は好きだけれど、変化が嫌いなわたしにとっては精神的にはどうも苦手です。今年もあのキラキラ前向き砲撃にやられないように心してかからねば。と気を引き締める昨今、なのでありました。

<川村結花>

◆紹介曲「エチュード
作詞:川村結花
作曲:川村結花

◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
【第1回】


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