Q)歌詞を書く時に気を付けていることって何かありますか? 
            		とくにないですね。ただ、一番高い音符に当たるところに、「うの音」「う、く、す、つ、ぬ」の音は使わないですね。それらは喉が絞まる音なので、キツイ高い音にはぶつけないですね。後々歌うシンガーの方に対する、心遣いです。 
                        				 
                        				Q)谷村さんと言えば、言葉選びも独特です。たとえば、今回の「スキタイの歌」もそうですが、「サライ」「マカリイ」「ラパン」「コラソン」「バサラ」など、それまで聞いたことのない言葉もたくさん出てきますが、それらは意識して使われているのですか? 
                        				いや、その時々に浮かんできたものですね。とにかく好奇心が強くて、いろんなことを学びたい人なんで、その時々に出てきた言葉をそのまま使っています。 
                        						 
                        						Q)「昴」も「群青」も、最近では「さようならば」などもそうですが、歌詞を、時々、文語調で書かれていますが、それらは意識して文語調で書かれているのですか? 
                        						はい、意識して文語体で書いています。そのころの時代感を思いだして欲しい時には、あえて文語体で書いたりします。日本語って、実はものすごく表現のバリエーションがあるんですよね。英語だと「I」ですけど、日本語だと「ぼく」と言うか、「わたし」と言うか、「オレ」と言うか、「われ」と言うかで、詞の質感が全く変わってきますからね。それは、その曲をどうしたいかってことにつながっていて、その基準で選びますね。 
                        						 
                        						Q)アリス時代も含めてですが、谷村さんの書かれる詞には、ラブソングが比較的少なく、むしろ、明日への希望というか、勇気や元気を与えてくれるような内容の詞が多いように感じていますが…。 
                        						いや、それは、聴き手の人の捉え方だと思いますよ。僕は全部ラブソングだと思って書いているんです。 
                		Q)たしかに、そういう広義で言えば、全てラブソングだと思いますが、しかし、いわゆる「恋愛ソング」というような歌詞は、少ないように思います。 
              		ベタベタのラブソングってことですね(笑)。そうですね、それは、あんまり書かないですね。それは、みんなが書いているので、べつに、僕は書かなくてもいいかなって思ってます。そういう世界は溢れてますからね。 
                		Q)おそらく、邦楽の歌詞の8〜9割は、いわゆる「恋愛のラブソング」だと思うのですが、そんな中で、歌詞という点では、谷村さんはとても異質な感じがします。 
                  		そうですね。異質だと思います。だから、別に、そこを僕がやる必要はないんですよね。何か違った愛の表現があるということを、自分はしたいなと思っています。 
                  		 
                  		Q)それは、アリス時代からそうですか? 
                  		そうですね、昔からそうです。もちろん、最初、高校生のころ、作り始めた時には、ベタベタなラブソングしか書けなかったですけどね(笑)。 
                  		 
                  		Q)アリス時代の歌、たとえば、「さらば青春の時」や「さよなら昨日までの悲しい思い出」などの根底に流れるメッセージみたいなものは、ずっと今も変わらず続いているように感じます。 
                  		そうですね。その場しのぎの音楽には、あまり興味がないんじゃないかな。10年くらい経って、何か感じてくれればいいって、いつも思っているんです。だから、だいたい「早すぎる!」っていつも言われるんですよ。それは、曲に限ったことだけじゃなくて、アジアに動き出すにしても、1984年から動き始めて、やっぱり20年以上たって、今やっとみんなアジアって言い始めましたからね。 
                  		 
                  		Q)そうですよね。1981年に北京でコンサートをやっているということは、今考えると大変なことです! 
		そうですよね。まだ、みんな人民服を着ていましたからね。鄧小平さんだったですし…。まあ、そんな時代でした。 
		 
		Q)鄧小平さんにもお会いになられたのですね? 
		はい、目の前にいらっしゃいました(笑)。 
		 
		Q)これまで、40年以上歌詞を書かれているわけですが、その中で、変わらないこともあれば、変わってきたこともあるかと思いますが…? 
		いや、ないですね。歌詞って思っていないですから。やっぱり、「歌詞」じゃなくて「詩」にしたいですね。文字だけ読んでも、ちゃんと詩になっている…。つまり、メロディが付いていないと成立しない詞はイヤなんですよ。だから、歌詞だけを見ても、ちゃんと伝わるものがあるっていう風にしたいんです。 
		 
		Q)なるほど、たしかに、ちゃんとそうなっていますね。そう言われると、また見方が変わってきますね。 
		歌詞を書いている人は、メロディに合わせているんです。でも、僕の場合、どちらにも合わせているものでなくて、同時に出来ているものですから、どっちかと言うと「詩」だと思いますね。「音が一緒に鳴っている詩」ですかね。 
		 
		Q)「その音程で語られている詩」ということですね。 
いちおう、目で確認するために歌詞カードっていうのはありますけど、本当は、耳で音だけで感じてもらうもので、やっぱり、「目を閉じて聴けば、ちゃんと風景が見えるものを書きたい」って、いつも思っていますね。 
 
Q)これまで、他の方が書かれた歌詞で、「すごいな!」と思われたことはありますか? 
あえて、アーティストとして、今でも「コイツはスゴイな」と思っているのは、陽水(井上陽水)ですね。彼も、詞も曲も自分で書く人だし、やり方というか、作品の出来方が自分とすごく似ているのがわかるんですよね。似た匂いでわかるんです。 
 
Q)陽水さんも、そう思われているんでしょうかね? 
どうでしょうねぇ、そんなこと話した事もないですからね(笑)。 
 
Q)たしかに、陽水さんも、「なんだかよく理解できない…だけどいい」という歌が多いですね。 
やっぱり、陽水のワールドがありますからね。絵画のような世界ですよね。彼の場合、時々、抽象画になりますけどね(笑)。でも、それが陽水のワールドですよね。やっぱり、スゴイですよ。アーティストとして個人的にも好きな人です。 
		                                		                 
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