前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、ソロ・アーティストの人気曲に着目してみた。

 SEKAI NO OWARI、ONE OK ROCK、back numberの更なるCD&配信ヒット(いずれも歌詞サイトでの人気が先行していた事もお忘れなく!)、三代目J Soul BrothersやE-girlsなどダンス&ボーカル・ユニットの連続ヒット、乃木坂46やスマイレージあらためアンジェルムなどCDヒットのみならず楽曲の高評価などなど、今年になってグループ・アーティストの明るい話題が持ちきりだ。そんな大きなニュースの陰に隠れたヒット曲はないものかと探すのがこのコーナーの役割(というか筆者の宿命?)とも感じているので、今回はソロ・アーティストに限定して分析することにした。
第68回:ソロ・アーティスト人気曲TOP15(2015年3月:2015年2月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位 4 100.0 Happiness シェネル 2014.11.19
2位 5 93.8 淡い雪のように チャン・グンソク 2015.2.25
3位 11 49.5 もんだいガール きゃりーぱみゅぱみゅ 2015.3.18
4位 16 35.1 あなたへ贈る歌 erica 2014.5.21
5位 18 32.6 好き 西野カナ 2014.10.15
6位 23 30.1 サンキュー。 大原櫻子 2014.11.26
7位 29 27.1 いつかきっと ナオト・インティライミ 2015.4.8
8位 31 26.8 and I... ももちひろこ 2010.12.8
9位 32 26.6 Story (English Version) AI 2014.10.22
10位 38 23 私は貴方がいいのです 阿部真央 2010.1.13
11位 40 22.2 miss you 家入レオ 2015.2.11
12位 46 20.5 ひまわりの約束 秦基博 2014.8.6
13位 86 14.8 私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together (Japanese Ver.) MACO 2014.7.23
14位 87 14.8 ヒカリヘ miwa 2012.8.15
15位 91 14.6 SAYONARAベイベー 加藤ミリヤ 2008.9.24
次点 95 14.2 あなたに恋をしてみました chay 2015.2.18
※男女ソロアーティストの最人気楽曲1曲限定でピックアップした。
 緑色は、これまでCDランキングで週間TOP10入りしたことのない女性歌手。

 テーマ1位は、フジテレビ系木曜10時ドラマ枠の前クール『ディア・シスター』主題歌の「Happiness」。3位は、同じ枠の今クール『問題のあるレストラン』主題歌の「もんだいガール」。このフジ木10枠は、それ以前も『昼顔』主題歌の「他人の関係 feat. SOIL&"PIMP"SESSIONS」、『続・最後から二番目の恋』主題歌の「Hello new me」など、ドラマの内容と主題歌が上手くリンクして話題を集めている。(余談ではあるが、自らの言われのないゴシップを逆手にとってネタにした「もんだいガール」はなかなかの快作。あらためて中田ヤスタカの才能に脱帽。)

 この女性2曲に挟まれているのが、チャン・グンソクの失恋バラードだ。歌詞をCD発売より先行で公開した結果、コアなファンの間で大きな話題となった結果、今回の好スタートとなった。これまで前衛的なロックが多く、歌詞について語られることが少なかった彼だが、古くからの韓流ファンも虜にしてしまいそうな切ない内容の本作で新境地となるか期待。他にも、7位のナオト・インティライミも、4月発売ながら片想いのピュアな気持ちを綴った歌詞が話題となっており、更なるブレイクとなるのか楽しみだ。

 1位から次点までの全16アーティストを見ると、男性ソロが3組であとはすべて女性となっている。TVなどビジュアル的にはグループ・アーティストの方が(とりわけ女性グループの方が)華やかで目立つが、歌詞を含め音楽面に限定すると、ソロ・アーティストの人気曲も多数あり、その中で女性が多くなるのは、恋人や友達を綴った楽曲が、より共感しやすいからではないだろうか。特に、女性の場合は、4位erica、8位ももちひろこ、そしてフジ月9主題歌でこの後のヒット確実の次点chay(歌詞表示から10日間の為、この順位だが1か月フルでは5位レベル)とネクスト・ブレイク組も多数出ているので、日頃から歌詞ランキングをチェックして、注目の女性ソロを見つけてみるのも面白いだろう。

 以上のように、ソロ・アーティストに着目すると、グループのような明解な話題性が少ない分、先行公開された歌詞の口コミや、AIや阿部真央のように長く支持されている佳曲、さらには4位や15位のように「LINE歌詞ドッキリ」で再注目された話題曲など、ファンが歌詞を楽しんでいる様子がより顕著になっているようだ。今後も音楽の魅力で勝負するアーティストを紹介していきたい。




Happiness
シェネル


淡い雪のように
チャン・グンソク


もんだいガール
きゃりーぱみゅぱみゅ

 88年、福岡県生まれの女性シンガーソングライターが、09年の発掘系オーディションで最優秀賞となり、そのメジャーデビュー前年に発表したのが本作。2011年前半に「明日、キミとてをつなぐよ」「桜ナミダ」と2枚のシングルを立て続けに発表するも、デビュー直後に東日本大震災が起きてしまい、プロモーションが立ち行かなくなりリリースが頓挫。しかし、以降も地道にインストアLIVEなどを重ねて14年にメジャー流通ながらインディーズ的立ち位置のオーマガトキ・レーベルから2枚のシングルをリリースしている。

 話題の「and I...」は、サビに出てくる様々な「ごめん」の言葉と心のこもったボーカルが泣けると話題で、1月中旬よりじわじわと検索数が増加。ファンが応援を強行している感じでも、「LINE歌詞ドッキリ」のようなブームでもなく、まさに知る人ぞ知る名曲として口コミでじわじわと広がっている状況だ。もし今、テレビ番組の『誰も知らない泣ける歌』があれば、その筆頭格で紹介されるべきバラード。3/11には横浜タカシマヤでのイベント出演、4/11に池袋サンシャインシティにてインストアLIVEもあるので、動画&歌詞サイトのみならず、是非、生の魅力を堪能されたし!


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は、3位の男性2人組クマムシに注目。と言っても、彼らの本業はお笑いで、登録されているのも「あったかいんだからぁ♪」(彼らの人気のうち87%をシェア)と同曲のダンサブルな別バージョン(同13%のシェア)のみ。それでいて、ルーキー級のハイスコアになるのだから、如何にクマムシ・ブームが凄いことになっているかが分かる。
 前年の9月に「アメトーーク」に出演し歌ネタとして「あったかいんだからぁ♪」が話題となり、10月に着ボイスをリリースしたら上位独占、それを楽曲化し12月に着うたで1位、そして1月にダウンロードシングルも1位、2月にCDシングルもTOP10入りとヒットを連発している。
勿論、歌ネタとして子供達もコピーしやすかったというのもヒットの要因だろうが、ゆずやback numberにも通じる青春ポップスが似合う気持ちよい歌声の存在も大きいだろう。ちなみに、DVD付きCDでは他の歌ネタも多数収録。CDを買うならこちらが断然お得。
 それにしても、この歌が各種ランキングでヒットした際、「特別なスープをあなたにあげる」が拡大解釈されて、サザンオールスターズ「エロティカ・セブン」内の「ロマンティックなあのジュース」風に曲解されるのではと?勝手にドキドキしていたが、今のところそんな気配が全く見られないのは、彼らの歌やキャラがあまりにも清々しいからだろうか。歌い手が変わると景色が変わるのがカバーの醍醐味なので、今後、セクシーフェロモン系のアーティストのカバーに期待したい(微笑)。


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析が評判となり、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経ビジネスオンライン、日経トレンディネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 凄惨な少年犯罪が起こるたび、憤りを覚えると共に、未来の子供たちが健やかに過ごす為に何が出来るかと考えさせられます。その度に、結局は色んな所に「愛情」が足りていれば、一つずつでもなくなるのでは?と思い、そう考えると、Mr.Childrenの「タガタメ」の「かろうじて出来ることは(中略)愛すこと以外にない」は、なんと的を射ているのかと感動すら覚えます。このように、恋愛に限定しない名曲がもっと増えれば良いですね♪