前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、人気再浮上の楽曲を分析してみた。

  約1年前の第51回、あまりに似たようなタイトル曲の多さに辟易し、ややムキになって始めたこのテーマだったが、AAAの「恋音と雨空」が1位だったり、クリープハイプがタイトルから人気を得ていたり、何かと発見が多く面白かったので、今年も実施することにした。なお、今回も、ユニークなタイトルかどうかは、私の感性にお任せいただきたい(微笑)。
第64回:“タイトル勝ち”人気曲2014版 TOP15 (2014年11月:2014年10月のデータより分析)
テーマ
順位
今月
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
発売日
 1位☆ 6 100.0 高嶺の花子さん back number 2013.6.26
 2位 14 61.4 #ヤッチャイタイ MINMI 2014.7.23
 3位 16 55.5 私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together (Japanese Ver.) MACO 2014.7.23
 4位 22 50.2 SAYONARAベイベー 加藤ミリヤ 2008.9.24
 5位☆ 26 48.0 恋音と雨空 AAA 2013.9.4
 6位 34 43.8 Zero-G 2014.10.22
 7位 44 37.4 炎と森のカーニバル SEKAI NO OWARI 2014.4.9
 8位 48 36.0 キラーボール ゲスの極み乙女。 2013.12.4
 9位 54 34.3 猟奇的なキスを私にして ゲスの極み乙女。 2014.8.6
 10位☆ 66 28.1 君と羊と青 RADWIMPS 2011.3.9
 11位 71 27.4 有心論 RADWIMPS 2006.7.26
 12位☆ 73 27.0 アンサイズニア ONE OK ROCK 2011.2.16
 13位 87 24.2 CloveR 関ジャニ∞ 2014.10.15
 14位 89 24.0 チルドレンレコード じん 2012.8.15
 15位 97 23.5 量産型彼氏 SHISHAMO 2014.10.1
 次点 99 23.3 不可逆リプレイス MY FIRST STORY 2014.9.24
※過去の邦楽にほぼなかったと思われるタイトルを、筆者の独断で上位からピックアップ。
 順位横の「☆」は2年連続のランクイン曲。

 1位はback numberの「高嶺の花子さん」で2年連続のランクイン、しかも前年発売なのに今また伸びていることも興味深い。これは、1年を通してback numberの歌詞人気が注目されていることに加え、9月の「ミュージックステーション」にて剛力彩芽が“ベスト・ライブ・パフォーマンス”として同作品を選んだことも起因しているだろう。彼らの楽曲は、「花束」や「日曜日」など普遍的なタイトル曲も多いが、この曲や「助演女優症」などちょっとひねりのある曲は大抵タイトルからも予見させるように演出している点も上手い。

 2位から4位は、女性アーティストが健闘。特に、2位の「#ヤッチャイタイ」は他のどの部門よりも歌詞検索ランキングにて、好調ぶりが顕著だったので、そのプロモーションの確かさや、我々の潜在的なスケベさ(笑)が露わになった。3位のMACOは、テイラー・スウィフトの日本語カバー。ちなみに、洋楽にあえて昭和時代のように(多少ダサくても)親しみやすい日本語タイトルをつけるようになったのは05年頃大ヒットした「恋のマイアヒ」以降のはず。それだけタイトルは重要なのだ。

 他にもSEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女。、RADWIMPS、ONE OK ROCK、MY FIRST STORYとバンドが圧倒的に強く、やはりタイトルが世界観のアピールに大きな意味を成していることが分かる。特に、今年はゲスの極み乙女。の躍進が顕著。また、男性バンドばかりではなく、女性3人組のSHISHAMOも今回はランクイン。他にも、「君と夏フェス」「第3ボタン」など興味あるタイトルが多いので、詳しくは楽曲一覧からチェックしていただきたい。

 さらに、今回は6位と13位にジャニーズ勢もランクイン。特に、関ジャニ∞が、ここのところ面白いタイトルが増えて彼らならではのユニークさを表しているが、この「CloveR」は、“R”を大文字にすることで、間に“love”があることにも気づかせ、そこから歌詞を深く読み込ませるという秀逸なタイトル。ガムシャラな歌が多いというイメージの彼らだが、アルバム曲ではかなり多様なので、こうした気の利いたラブソングも今後メジャー化していくのが楽しみだ。

 以上のように、今回も今旬のアーティストが名を連ねた。その一方で、今回も女性アイドル曲は皆無だった。とはいえ、でんぱ組.incのように歌詞の面白さが際立ったグループも確実にいるので、今後そういった部分にもメディアがフィーチャーすれば、エンタメ業界全体ももっと面白くなるのではないだろうか。握手イベントの多さでオリコン順位が決まるだけ(こちらの記事も参考いただきたい)では、いつまで経っても一般の人が覚えられないままだし、女性アイドル達の歌詞人気はやはり重要だと思う。




高嶺の花子さん / back number

#ヤッチャイタイ / E-girls

私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together (Japanese Ver.) / MACO

 8月に発売されたゲスの極み乙女。の1stシングル。いったん検索数が下がったものの、10月に『SMAP×SMAP』にてSMAPと一緒に歌ったり、10月29日のアルバム発売のプロモーションで、各メディアで取り上げられたりしたことが再浮上のキッカケとなった。タイトルもさることながら、バンドでは珍しくサビから始まるキャッチーなメロディー、言葉を詰め込んでいく斬新な曲想など、フックの多さでは今年屈指の作品だろう。また、バンド名やメンバー名“休日課長”“ほな・いこか”、休日課長のメタボな体型、LIVE時の挨拶“コポゥ!”など誰かに知らせたくなるような特徴の多いバンドで、まさにSNS発でヒットすべきバンド。最新アルバム『魅力がすごいよ』は、“ゲスの極み乙女。”と書かれたトートバック付の生産限定盤というのも面白いし、歌詞カードも様々なイラストや字体を盛り込んでいて、このコピー全盛の時代に持っておきたい魅力の詰まったものとなっている。

 今年3月末にTV番組『僕らの音楽』に出た時は「いったい何者??」と検索キーワードでも上位となるほどだったが、わずか半年でここまでブレイクするとは末恐ろしいほどの存在。ちなみに、所属レーベルはきゃりーぱみゅぱみゅと同じくワーナーミュージックのunBORDE。同レーベルの選択眼の確かさにも唸らされる。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は、10位のINKTに注目。彼らはこの10月に結成されたばかりの5人組ロックバンドで、KOKIこと元KAT-TUNの田中聖と、元HIGH and MIGHTY COLORのメンバー、mACKAzとSASSYの二人が参加していることが音楽雑誌やニュースサイトで話題となった。田中聖が元KAT-TUNということから、ジャニーズ勢に配慮してTVプロモーションに消極的になるだろうが、YouTubeで先行された動画「Trigger」(short ver.)を聴く限り、ONEOK ROCKやMY FIRST STORYのファンの中にも気に入る人がいそうな衝動的なロックサウンドで、彼ら同様にTV出演に依存しない方がむしろその良さが伝わるのかもしれない。また、そのハードなサウンドから、KOKIはKAT-TUNの音楽性を決定する要員だったのだなとあらためて気づいた。11月8日にはアルバム『INKT』も発売。
今後、ジャニーズファン以外も先入観なくどれだけ引き込めるかが大きなポイントとなりそうだ。

※INKTの楽曲別ランキングは、先行で公開されていた「Trigger」のみが圧倒的なので割愛した。


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 11月19日にCD『エンカのチカラ プレミアム』が赤盤と青盤の2作発売されます。これは、演歌歌手たちがJ-POPを斬新にカバーするというコンセプトのコンピレーションで、今回は、シリーズ初の新録音の収録!細川たかしの「ジュリアに傷心」、都はるみ「タッチ」、八代亜紀「残酷な天使のテーゼ」など斬新なカバーでいっぱいです。私も宣伝面で応援しておりますが、よかったらチェックして下さい♪