前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、アーティスト別に見た人気曲ランキングで2番手にくる楽曲の中から上位10曲を分析してみた。一見無意味に見えるかもしれないが、実はとっても重要なのだ。情報が溢れ返り、次から次へと新人が登場する現代は、2曲以上ヒットさせることは、ますます困難となっている。しかも、1曲が認知されても次の曲を発表した途端、前の曲は急落してしまうアーティストも多く、新しい曲が前楽曲のプロモーションの役割を果たしていない。つまりはアーティストにファンが付いていないのだ。だからこそ、逆に2曲以上同時にヒットさせているアーティストを見ることは、そのアーティストの育成ぶりを見るのに適した指標と言える。
第27回:アーティスト別2番手ソングTOP10 (2011年10月:9月1日〜9月29日のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
2番手曲名 アーティスト CD発売日 一番人気の曲名 その発売日
1位 18 100 君に届け flumpool 2010/9/29 2011/9/7
2位 25 83 Why... feat. JUNO 浜崎あゆみ 2011/8/31 progress 2011/8/31
3位 27 82.5 完全感覚Dreamer ONE OK ROCK 2010/2/3 Re:make 2011/7/20
4位 34 74.1 Brave ナオト・インティライミ 2011/4/20 Hello 2011/8/10
5位 35 72.7 Everyday、カチューシャ AKB48 2011/5/25 フライングゲット 2011/8/24
6位 40 66 Rising Sun EXILE 2011/9/14 いつかきっと… 2011/9/14
7位 43 64 ジェットコースターラブ KARA 2011/4/6 GO GO サマー! 2011/6/29
8位 47 61.8 Distance 西野カナ 2011/2/9 Esperanza 2011/5/18
9位 58 57 いとしすぎてduet with Tiara KG 2010/2/24 君じゃなきゃ duet with 安田奈央 2011/8/31
10位 59 56.7 モトカレ Juliet 2011/6/29 モトカノ 2011/8/24
次点 63 55.2 Aitai 加藤ミリヤ 2009/7/8 Love Forever 2009/5/13

 まず全体のランキングを見てみると、総合TOP100に2曲以上ランクインさせているアーティストは全部で20組見られた。デビュー2年以内のルーキーでは、4位のナオト・インティライミ、7位のKARA、9位のKG、14位の少女時代、18位のback number、20位のSEKAI NO OWARIと5組で、現時点でオリコンTOP10入り未経験のback numberも今後ブレイクする可能性が高いと言える。それにしても、このアーティストの大半がユニバーサルミュージック所属というのも興味深い。同社のトップインタビューで、「シングルヒットの量産が重要」ということがしばしば語られていて、その志の強さが表れているようだ。

 そんな中での1位は、flumpoolで、この「君に届け」は1年以上にわたってのロングヒット。最新作「証」が今月4位など、これ以降の作品はいずれも上位入りするようになった。ここ3作のアルバムの売り上げは、微減傾向にあるが、アーティスト本人が好きという実質的なファンの数は、この1年でじわじわと増えているのかもしれない。

 2位の浜崎あゆみ「Why... feat. JUNO」は、一番人気の「progress」同様、5曲入りアルバム『FIVE』収録曲。同作からは、他にも「ANother song feat. URATA NAOYA」と「beloved」も人気で、これら4曲の多面的な人気がCDセールスを大きく支えたようだ。ただし、もし、収録曲が1曲少なくてオリコンでシングル扱いになっていたならば福山雅治に次いで2位となり、連続1位記録が途絶えていた。こんな所からも、今回はアルバムであることが重要だったようだ。

 6位のEXILE「Rising Sun」もカップリング曲と同時にランクインした作品で、元気なダンスポップスとATSUSHIソロの静かなバラードというコントラストも絶妙。なお、本作は通販ミュウモ限定でTシャツやバッジなどの豪華特典つきの9枚セットが発売されていることが、チャート上の売上枚数を大いに引き上げている点も興味深い。1人に複数枚同じ収録曲のCDを買わせるという施策はアイドル以外にも大きく広がっていることを象徴した出来事だ。つまり、アイドル以外でも、CDチャートだけでは楽曲人気が測れないということだ。

 ともあれ、複数の楽曲を同時にヒットさせられるのは、アーティストにファンがついている証拠。10位のJulietも、デビュー当時はネット上で「すぐ消える」と批判されがちだったが、デビューから3作連続アルバムTOP20入りを果たしており、やはり3人ならではのギャル・ブランドが定着しているのだろう。(そういえば、彼女たちもユニバーサルミュージック。おそるべし!)今後も、複数の楽曲が、長期的に支持されるアーティストが増えることを切に願っている。そうすることで、現在低迷しているアルバム市場の着実な復活に繋がるのではないだろうか。




君に届け
flumpool



Why... feat. JUNO
浜崎あゆみ


完全感覚Dreamer
ONE OK ROCK

 2005年に結成した現在4人組のロックバンドが昨年2月に発売したアッパーチューン。「歌ネット」での月間総合ランキングを見ると、10年度は、39位に登場後100位圏外で地味にロングヒットしていたのに対し、今年になって2月に再TOP100入り、8月に再TOP50入り、そして9月に27位(注:月末まで集計すると更に2ランクアップの25位) と、なんと発売から1年8か月めで最高位を更新!イベントによるドーピングさながらの押し売りでヒット感を強調するアーティストもいる中で、なんと美しいヒット現象かと感心する。日本語も英語も自由往来に、ハードロック、ヘヴィメタル、エモなど様々な要素が絡みつつも、ボーカルが凛としている、つまり歌モノとしても聞けるバンドは、世界中探してもかなり稀有な存在だと思う。ゆえに、地上波出演や大型タイアップが殆どないのに、口コミを中心に広がっているのではないだろうか。10月5日には5thアルバム『残響リファレンス』をリリース、現在もロングヒット中の前作『Nicheシンドローム』(初動2.6万枚、累計6.2万枚)を超えるのはほぼ確実。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は、4人組バンドSEKAI NO OWARIに注目。05年頃、ボーカルとギターをこなす男性2人を中心に活動が開始され、女性キーボードとピエロのお面をかぶった男性DJも加わり、08年ごろから現在の4人組で活動開始。10年2月に、タワーレコード限定シングルの「幻の命」で初の一般流通、続く4月に発売された1stアルバム『EARTH』は第3回CDショップ大賞準大賞、さらに11月に発売された両A面シングル「天使と悪魔/ファンタジー」は「天使と悪魔」がドラマ『霊能力者 小田霧響子の嘘』の主題歌に抜擢されたこともあり、いきなりTOP10入り。今年8月17日にはバンド名を「世界の終わり」からアルファベット表記とし、メジャーレーベルとして初のシングル『INORI』をリリース、2作連続1万枚突破と、着実に人気を高めている。
 『INORI』のリード曲である一番人気の「花鳥風月」は、BUMP OF CHICKEN藤原のハスキーな部分と、ハナレグミのアンニュイな部分が溶け合ったような声と、ほのぼのとした曲調であどけなさに浸れるが、その一方で3曲目の「Never Ending World」や前作の「天使と悪魔」では、過酷な現実を直視していて、どちらも少年期特有の純粋さを思い出させてくれる。メンバーの見た目もフックが大きいし、言葉にチカラもあるし、それでいてゆずやMr.Childrenのようにフォーク調でもロック調でもJ-POPらしいキラキラ感があるので、今後さらなるブレイクが期待される。



順位 占有率 楽曲 初収録作品 発売日
1 27.4% 花鳥風月 メジャー1stシングル『INORI』 2011.8.17
2 20.2% 不死鳥 メジャー1stシングル『INORI』 2011.8.17
3 11.5% 天使と悪魔 インディーズシングル 2010.11.3
4 9.7% 幻の命 インディーズ限定シングル 2010.2.10
5 6.5% Never Ending World メジャー1stシングル『INORI』 2011.8.17
         
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
この10月で独立して6年になります。経済的には会社員時代よりも幸せに暮らすことができ、これも周囲の方々のお蔭だと思います。ただ、音楽マーケッター、音楽アナリスト、ライター、パッケージクリエイター、コンサルタント・・・と様々な仕事をしているせいか、呼び名が異なる度に「数字で音楽は語れないんだよ」忠告、「食べていけない職業の人ね」と一瞥されたり、「趣味に人生を投じてしまった人」と呆れられたり、様々です(苦笑)。でも、これも、人を多面的に見なければ理解出来ないと学べたと思えば、ラッキーだったのかも。今後ともご鞭撻のほどヨロシクです♪