前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。
 今回は、4月クールのアニメとドラマのタイアップに着目してみた。今年のこのクールは、ドラマ『仁-JIN-』や『マルモのおきて』、アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』など、例年にも増して話題作が多かったような気がする。これまでの本連載でも、TVのタイアップは、歌詞検索数に如実に表れることが分かってきたが、これら話題の番組に隠れてしまったタイアップ・ソングにも目を向けてみようというのが今回の狙いだ。
第24回:4月クール限定アニメ&ドラマ・タイアップTOP10 (2011年6月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数
曲名
アーティスト
タイアップ
発売日
平均視聴率
1位
1
100
UVERworld
TBS系アニメ
『青の祓魔師』
2011/5/11
2位
7
34.8
平井堅
TBS系ドラマ
『仁-JIN-』
2011/5/4
20.6%
3位
9
34.1
JUJU
フジテレビ系ドラマ
『グッドライフ』
2011/6/1
8.7%
4位
11
33
ケツメイシ
テレビ朝日系列ドラマ
『ハガネの女 Season2』
2011/6/8
7.3%
5位
12
32.4
アンジェラ・アキ
フジテレビ系ドラマ
『名前をなくした女神』
2011/6/8
11.7%
6位
15
28.4
Galileo Galilei
フジテレビ系アニメ
『あの日見た花の名前を
僕達はまだ知らない。』
2011/6/15
7位
17
26.6
薫と友樹、たまにムック。
フジテレビ系ドラマ
『マルモのおきて』
2011/5/25
14.6%
8位
22
23.3
Superfly
フジテレビ系ドラマ
『BOSS 2ndシーズン』
2011/6/15
15.1%
9位
26
19.0
FUNKY MONKEY BABYS
テレビ朝日系列ドラマ
『アスコーマーチ』
2011/6/8
6.1%
10位
38
16.1
SPYAIR
テレビ東京系アニメ
『銀魂』
2011/6/8
※視聴率は7/1現在までの関東地方でのドラマのみの視聴率(ビデオリサーチ調べ)

 まず表全体を見ると、なんと総合TOP20の上位7作までが4月クールのアニメやドラマのタイアップ曲だったことが分かる。つまり、巷での話題番組は2、3に限られていたとしても、実際に関心の高かった楽曲はその倍以上あるということだ。

  その中でダントツは、UVERworldの真骨頂とも言えるダイナミックでワイルドな「CORE PRIDE」。彼らは、もともと歌詞検索数の多いバンドだったが、今回はアニメ・タイアップに加え、6thアルバム『LIFE 6 SENSE』が6/1に発売になったことで、6月度のアーティスト別歌詞検索数でも1位となった。アルバム中で、特に人気なのが「いつか必ず死ぬことを忘れるな」。他の根拠なきエールソングがバカらしく聞こえてしまうほど、言葉に説得力がある。
2位は、ドラマ視聴率が20%を超えるお化けヒット・ドラマから平井堅の「いとしき日々よ」。平井も、6/8にアルバム『JAPANESE SINGER』が発売となったが、こちらはエロからクールまで、歌手としての振り幅の大きさに唸らされる秀作。

 3位から5位には、この大ヒット・ドラマには視聴率は到底及ばないものの、楽曲の人気は同程度というドラマ・タイアップ曲がズラリと並んだ。これらは、同じく大ヒット・ドラマ『マルモのおきて』の主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」よりも上位なので、大健闘と言えるだろう。中でも、JUJUは、昨年末の「この夜を止めてよ」以降、CDや着うた以上に歌詞検索の上位が顕著に出ているので、7月13日発売のニュー・アルバムはオリジナル前作『JUJU』(累計14万枚)を大きく超える可能性が出てきた。

 アニメ・タイアップでは、1位のUVERworldのみならず、6位のGalileo Galilei、10位のSPYAIRといずれもソニー系列のタイアップ枠がランクイン。アニメ・タイアップのCDは、ステッカーやDVDなどの付属品の魅力から、CDでのヒットが出やすい状況にあるが、このように歌詞検索が伸びるのが多いということは、やはりそれだけタイアップ枠に安住することなく、関心度の高い楽曲をグループ内で厳選していることも大きいだろう。

 以上のように、アニメやドラマのタイアップは、番組が大ヒットしているものは勿論のこと、それ以外の楽曲でも大いに注目されるキッカケとなっていることが分かった。たとえ、そのシングルが話題とならなくとも、アルバム(とりわけベスト)発売時には、大きな訴求力となりうるので、レコード会社やCDショップには手を抜かず、タイアップ獲得時以外でもアーティストの支援を続けてもらいたいものだ。それが、音楽ファンを徐々に増やしていくのに、実は最も近道と言えるかもしれない。




CORE PRIDE
UVERworld



いとしき日々よ
平井堅



また明日...
JUJU

 1stフルアルバム『パレード』のヒットで、また歌ネットではそれ以前に2ndシングル「夏空」の歌詞検索数の急上昇以来、注目されてきた北海道・稚内で結成された4人組バンド。この4thシングル「青い栞」は、タイアップのアニメ作品のやるせなさや、永遠の友情などを彷彿とさせるミディアム・テンポのギター・ロックで、シングルでは初のTOP10入りとなった。2コーラス目から挿入される女性ボーカルChimaの可愛らしい声も、アニメとリンクするようで効果的。
  シングルのカップリング「SGP」は、ダンスポップを融合させた曲調と彼らならではの青臭さが混ざっていて、個人的には、こちらもとてもお気に入り。他にも、"ポスト・くるり"路線の「スワン」も大器を感じさせる。
シングルの初回仕様では、アニメの絵コンテや、特製の栞が封入されていること、何より彼らの音楽の振り幅が楽しめるので、単曲ではなくパッケージで堪能して欲しいバンドだ。



※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月はルーキー順位6位のback numberに注目。アーティスト別の6月度の総合順位は60位とまだまだ目立たないが、楽曲別の順位はなんと6位と既にTOP10を果たしているほど、歌詞が注目されているのだ。
 彼らは、群馬で結成され、2007年から現在の編成で活動している3ピース・バンド。当時から、叙情的な歌詞と切ないメロディーが人気だったが、今年4月のメジャー・デビュー以降、 "センチメンタル・ロック・バンド"というキャッチフレーズを大々的に打ち出し、1stは桜を主題とした「はなびら」、2ndは「花束」と、その路線を徹底したシングル曲で人気が急増中だ。特に、着うたや歌詞検索ではTOP10入りするほどの人気で、それは余りにストレートでラブリーな歌詞が、"泣け歌"大好きな女子を中心に強く支持されているのではないだろうか。いずれ、プロポーズ系の名曲になりそうな予感すらある。バンドが都心出身でないことや、ボーカル・清水依与吏のナチュラルなキャラクターが、戦略的な匂いよりも、自然発生的な広がりを見せている一因かもしれない。
 今夏は様々なロックフェスに出演が決まっている彼ら。一過性の"泣け歌"アーティストが多い中、彼らが残れるアーティストになるかどうかは、そのパフォーマンス力にかかっているだろう。

         
 
順位
占有率
楽曲
初収録作品
発売日
1
76.3%
2ndシングル
2011.6.22
2
5.6%
1stシングル
2011.4.6
3
3.2%
2ndシングル c/w
2011.6.22
4
2.6%
1stシングル c/w
2011.4.6
5
2.2%
インディーズミニAL『逃した魚』
2009.2.18
         
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。
セルフカバーの企画CDの男性編『PORTRAIT BLUE』と、女性編『PORTRAIT RED』が発売中。コンピレーションとしては、初めての切り口で新鮮ですが、すごくまったり落ち着いて聞ける大人へのプレゼント向きな仕上がりになっています。ところで、柴草玲の「さげまんのタンゴ」、もしかして今後来るかもしれません。よろしければチェックしてみて下さい♪。