前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。
 今月は、ドラマ関連ソングに着目してみた。トレンディー・ドラマという言葉が定着した90年代は、どの季節でも話題のドラマがあり、その視聴率は30%前後、主題歌はミリオンヒットを多発し、学校や職場では翌日その話題で持ちきりだった。最近は、趣味の多様化でドラマ以外にも娯楽が拡散し、ドラマ自体の存在感は一見薄れたようにも受け取れる。そこで、その影響力をタイアップソングの検索状況から分析してみた。

第12回:ドラマタイアップソングTOP10 (2010年07月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
(今月)
総合
(前月)
アクセス
指数
タイトル/アーティスト
タイアップドラマ
発売日
1位
2
34
100
ルーズリーフ 
Hilcrhyme
TBS系『ヤンキー君とメガネちゃん』 2010.6.2
2位
4
3
78.6
Monster 
日本テレビ系『怪物くん』 2010.5.19
3位
9
7
47.8
キセキ 
GReeeeN
TBS系『ROOKIES』 2008.5.28
4位
10
80
45.5
まなざし 
Honey L Days
TBS系『タンブリング』 2010.5.26
5位
11
11
45.2
素直になれなくて 
菅原紗由理
フジテレビ系『素直になれなくて』 2010.5.19
6位
15
31
33.6
もっと… 
西野カナ
日本テレビ系『探偵M』 2009.10.21
7位
18
98
31.1
LOVE RAIN 〜恋の雨〜 
久保田利伸
フジテレビ系『月の恋人』 2010.6.16
8位
21
9
29.6
ありがとう 
いきものがかり
NHK『ゲゲゲの女房』 2010.5.5
9位
28
24.9
泣き顔スマイル 
hinaco
日本テレビ系『Mother』 2010.6.2
10位
29
39
24.5
Hard to say I love you
〜言い出せなくて〜
 WEAVER
フジテレビ系『素直になれなくて』 2010.6.2
次点
36
19
22.4
Troublemaker 
TBS系『特上カバチ!!』 2010.3.3
次次点
41
33
18
Trust In You 
JUJU
朝日放送・テレビ朝日系
『警視庁失踪人捜査課』
2010.5.26
※山吹色は、このタイアップ作品で歌詞検索数が急増したアーティスト。

 まず、TOP10を見ると、ドラマタイアップソングの上位10曲までが、総合でTOP30に入っている。これは、他のタイアップと比べても圧倒的に強く、やはり現在でもその影響力の高さが分かる。しかも、上位4曲中3曲までがTBS系列の学園モノが占めている。2位の嵐「MOSTER」は、タイアップにさほど関係なく"嵐"という社会現象ヒットなので、実質的には上位すべてがTBSの学園モノということになる。90年代では、フジテレビ(特に月9)系列の大学生や若手社会人の恋愛ドラマが人気の中心だったが、少なくとも現在の歌詞人気ではより若年層にシフトしているようだ。なお、6位の西野カナ「もっと・・・」は、2009年の深夜ドラマの主題歌だったので、これはタイアップというよりも、楽曲自体のロングヒットが現れているのだろう。特に、6月23日に発売された2ndアルバムのCMスポットやその後の大ヒット感が大きく影響していると思われる。

 次に、TOP10中4位、5位、9位、10位の4組が、ドラマタイアップで大きく飛躍したというのもポイントだ。つまり、依然として新人ブレイクへの影響力が強いのだ。特に、デビュー3年目のHoney L Daysは、デビュー2年以内に芽が出ないとレコード会社との契約を切られるアーティストも多い世知辛い現状と照らし合わせると、ブレイクして本当に良かったと思う。同時に、7位の久保田利伸など、若手だけではなく実力派のベテランを再ブレイクさせる重要なタイアップでもある。

 そして、この6月集計で前月よりも急上昇した楽曲が多いということも興味深い。余程の人気作でない限り、大半のドラマは、メディア等で取り上げられるピークは4月にあり、またタイアップ曲の着うたランキングのピークは、その配信が開始されたばかりの4月末〜5月にある。しかし、歌詞検索のピークは6月にあるものが多いのだ。これは、最終回近辺になると、タイアップ楽曲が重要なシーンで流れることが多く(場合によってはフルコーラス流れることも)、その感情面での高まりもあって、歌詞チェックをする人が特に多いのではないだろうか。勿論、CDや着うたも同じタイミングで多少再浮上はするが、この歌詞検索数ほど顕著ではない。つまり、それだけ歌詞というのは、非常に幅広いドラマ視聴者に気にされているのだ。

 以上のように、ドラマタイアップは、依然として大きな影響力を持ち、しかもそれは、いわばライトユーザーに向けてより顕著であることが分かった。考えてみれば、大容量ハードディスクや(違法を含めた)動画サイトなど、視聴率には関係しない所での視聴は充実するばかりだし、またその番組についての話題も従来のように通学時の電車や給湯室で語る必要などなく、ネットで見知らぬ人と交わす人も多いのだ。そう考えれば、伝達ツールがどうであれ、最も大事なのはしっかりとしたコンテンツ作りだとあらためて分かる。これは音楽についても同様だろう。




「Monster!」

 今年6月にデビュー25年目を迎えた久保田利伸の通算35作目となるシングル。96年に大ヒットしたドラマ『ロングバケーション』の主題歌「LA・LA・LA LOVE SONG」以来となる、木村拓哉主演および"フジ・月9"主題歌を担当した。その関連付けもあったためか、本作は夜を想起させるムーディーな曲調ながら、"静かなサビ→Aメロ→Bメロ→大サビ"という構成は「LA・LA・LA LOVE SONG」とまったく同じで、ここにも彼の遊び心が感じられてニクらしい。オリコンでは14年ぶりのシングルTOP3入り、着うたでは初の週間1位(レコチョク調べ)となるヒットとなった。
 遊び心と言えば、本作のフラミンゴでハートを模したジャケットもイカしているが、最新アルバム『Timeless Fly』でも、美女でハートを模したジャケットが面白い。こちらの作品は、R&Bあり、ファンクあり、ヒップホップあり、それでいてどこか歌謡曲の流れを感じさせる美メロもあり、まるでJ-POPのお手本のようなアルバム。考えてみれば、80年代から久保田利伸はずっとそういった音楽の先頭を切っていた訳で、あらためて彼の偉大さが分かる。中古店では当時のオリジナルアルバムが安価で手に入るが、絶対に損はしないほどの完成度で、古さも感じさせないので、よければどうぞ。そして、新作は新品で買いましょう(微笑)。



ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は2位に急上昇したHoney L Daysに注目。ボーカルのMITSUAKIとギター&ボーカルを担当するKYOHEIが、2003年春に結成したツイン・ユニット。2008年9月に「GO⇒WAY/Center of the World」でデビュー、2009年まで3枚のシングルを発表するがTOP50に入ることはなかった。
  しかし、2010年5月に今月のテーマでもあるドラマタイアップ曲『まなざし』を発表し、オリコンではシングル16位まで、着うたでは5位までそれぞれ上昇した。本作は、♪追いかけて、追いかけて〜というサビの力強いユニゾンが印象的で、90年代J-POPファンなら同じくツイン・ボーカルのCHAGE&ASKAの「太陽と埃の中で」を想起するような疾走感溢れるナンバーだが、それ以外の楽曲では、二人の綺麗なハーモニーが際立っているものも多く、この辺りも80年代〜90年代のポップス風で、ヤング層以外もアレルギーを起こさないはず。それでいて、二人のイケメンぶりもそれぞれにカラーが異なるので、幅広い女性からも支持されそうだ。6月23日には1stフルアルバム『伝えたいことがあるから』を発表(この辺のタイトルセンスも90年代っぽい)。彼らの人気曲TOP5もすべて収録されていて、「まなざし」以外にも親しみやすい楽曲が多いことがよく分かる。


Honey L Days
順位
占有率
楽曲
初収録作品
発売日
1
86.3%
まなざし 4thシングル 2010.5.26
2
4.1%
It's sweet, so sweet 4thシングル c/w 2010.5.26
3
1.9%
ありがとう 3rdシングル 2009.5.20
4
1.0%
君のフレーズ 2ndシングル 2009.1.14
5
0.8%
Go⇒Way 1stシングル 2008.9.3



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と熱に満ちた連載を継続中。オトナの男性によるラブソングを集めた企画CD『また君に恋してる〜セカンド・プロポーズ〜』が7月21日に発売されます。ミリオンヒットとなった『R35』が出荷停止となった今、倦怠期のカップル(笑)にはこちらをオススメします。